人生100年時代のFIRE(セミリタイア)論
この100年での人々の寿命は大きく伸びて、人生100年時代が現実味を帯びてきた。このため、FIRE(セミリタイア)をするにしても、人生100年時代を念頭におく必要があるようだ。
1.実感年齢の著しいシフト
人の寿命は、日を追うごとに伸びている。たとえば、50歳という年齢は、わずか百数十年前の明治時代ならば人生の終盤に差し掛かった老人であり、生ける時間も残り少なかった。しかし、100年以上を経過した現代で、50歳でも見た目は30代という人はざらにいる。60代は年金給付年齢のスライドにより何らかの仕事に就く人が大半となり、最近は70代でも元気に働いている人たちが増えた。ローリングストーンズなどは80歳近くになってもライブツアーで不良極まりない激しいロックを歌い続けている。一般人でも80代になると体力は落ちるが、旅行などのレジャーなどを楽しんでいる人達も増えてきた。人生100年時代と言われる中、自由に体を動かせる年齢、いわば健康年齢の閾値が上がっている。
2.給与年齢と生活年齢の乖離
健康年齢がこれだけシフトすると60歳でも20年から30年近くは様々な事を楽しめる。そうなると、人生を楽しむためにはお金とどのように向き合っていくのかは非常に重要なテーマになる。当然であるが、年をとるにつれ条件の良い仕事は名誉職など以外は殆どない。60歳以降になれば、現役時と比べたら惨めなくらいに半分又はそれ以下の収入しか稼げなくなる。このような状況にも関わらず十分な貯蓄を出来ないまま60才を迎えている人は多い。そうなると、遊びたくてもお金がなく、いくつになっても不足分を補うために条件の良悪に関わらず仕事をしなくてはいけない。それではあまりにも悲しい。給与年齢と生活年齢の乖離を冷静に見すえた人生設計は非常に大切である。
3.FIREやセミリタイアの適齢期
現役時にFIREやセミリタイアなど考えることは明らかに人生における重大な機会損失である。もし、仕事が合わなく尋常ではないストレスに苛まれるなら、給与などの条件をいく分下げても自分の居心地の良い会社を見つけるまで転職を繰り返し、60歳まで持ちこたえ資産を貯めて、次のフェーズに備えるのも立派な人生設計の一案である。
4. 50代までの蓄財
適切な人生設計という点では、現役時は給与の5割以上は貯蓄に回すことを死守する。この目標は修行僧に近い節制を強いられることになり、この目標自体が簡単な事ではない。しかし、このような目標を立てることでお金を使わない生活と苦闘を繰り返すことで、次第にそういった状況下での幸福な生活スタイルのノウハウが身につく。食費なども健康面を考慮しながらも出来るだけ安く済ませるようにする。さらに、これらの手助けとして公共施設や株主優待のような少額の特典なども上手に利用できるようになる。住宅面については、条件のよさそうな中古の不動産を購入し、自分で出来る箇所は「新築そっくりさん」を目標に土日はひたすらリフォームをしまくる。そうすることで、終の棲家を確保し、比較的低いコストで日々の生活を楽しめることになる。その間に結婚の選択もあるが、そういった考えに同意できる人なら結婚する。無理して相手を選ぶ必要はなく、第二の人生ステージで結婚することも選択肢の一つである。お金の面で方向性が合わなかったり、高度成長期のような夫婦像を求められたら、蓄財などが思うように出来なくなるからだ。
参考:共働きの半数「家計苦しい」、理想の年収と320万円の差 民間調査
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1532L0V10C25A5000000/
そうして貯めたお金は、初めは株式投資して長期投資で安定的な優良企業又はインデックスでほったらかす。50歳過ぎてからは株式の変動も考慮し、債権比率を高めていく。
4. 人生100年時代のFIRE(セミリタイア)論の実践
人生100年時代のFIRE(セミリタイア)は、人生の第二ステージの突入を如何に有意義に過ごせるかである。なぜなら、60歳を超えれば仕事における現役ステージはほぼ終了したのと同じである。つまり、セミリタイアとほぼ変わらない状況に入るのだ。それならば、自分の好きな事に日々の生活を集中させた方がよいし、仕事をする場合でも収入などを意識せずに、自分が楽しいと思える分野に留める。余った時間を自分の趣味や好きなことにだけに集中させる。とにかく、自分ファーストで生き抜く。例えば、タイに3か月、翌年はベトナムに3か月、その翌年はマレーシアに3か月滞在したり、その翌年は世界一周の航空券を購入し、3か月ほどは飛行機と世界の街を堪能する。などである。これって、お金の不安がなければ、りっぱなFIREであり、セミリタイアである。
いま先進国で起きていることは人々の寿命が伸び続けて、先人のライフステージが通用しなくなることを繰り返している。人々は60歳を過ぎても働くことが一般的になり、住宅ローンでさえ、35年を遥かに超えた50年ローンさえ出現した。そんな時代だからこそ、だらだらした日々をおくるのではなく、自分の生き方について戦略的に取り組んでいくことが大切なのである。
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