ロボット業界の今後

 (安価な製造拠点の枯渇)

 安価で程よい品質の製品というのは、安い賃金で長時間労働いわば植民地主義的な構造に行き着く。先進国は、高い労働賃金だけでなくワークライフバランスが浸透し長時間労働を前提とした就労も望めない。どうしてもコスト面で割高になるので、安い賃金の国での製造に依存しなくてはいけない。しかし、今の時代は植民地時代と異なり製造を請負った国が繫栄し富を蓄える。実際、中国は製造工場になることで世界第二位の経済大国になった。製造拠点はより安価なベトナムやミャンマー、インド、バングラデッシュなどに移転し始めている。しかし、そういった安価な製造拠点も近い将来には底をつく。


(人手不足社会がロボット産業を誘発)

 世界中で少子高齢化が進行している。人の寿命は年を追って長くなり、人口動態における体力のある若年層の比率が低下している。そうなると製造業の担い手不足に陥ってしまう。先進国ではサービス業などは年齢不問でなんとか雇用を確保し、3K職場は人口動態とは関係なく敬遠される。今のところ、これら仕事は移民に代替してもらっているが、移民に頼りすぎると深刻な民族問題に陥ってしまう。さらに、気候変動により真夏に外で仕事をすることも身体的に厳しい時代が到来しそうだ。このため、その代替としてロボット導入が期待される。


(ロボットの登場スタイル)

ロボットは人間の代替であるが必ずしも人間の形状をしなくてもよい。要は機械が人間の作業を代替する延長でよいのである、それは工場作業においては顕著であり、工場の無人化構想はこれから一つの革新的なテーマになるのは間違いない。そして、次に人とのかかわりのロボットであり、いわゆるヒューマノイドロボットである。これの行き着く先はドラえもんであろう。しかし、ドラえもんのような完成された人型ロボットの登場までには相当期間の技術的革新が必要とされる。このため①工場の作業員を代替するロボットから始まり、 ②危険な作業を代替するロボット、③コンビニ スーパーなどの従業員ロボット ④家庭用ロボットというふうに、それぞれの段階でのノウハウを高めていく事になると推測される。まさにロボット自体が用途別の提供となり、それぞれの分野でそれぞれの強みを発揮するという形態に集約するのであろう。

ロボットは当然高価なものになり、短期的に見れば人件費の方が安くも見えるが、人件費はと年齢に応じて上昇し、福利厚生費など副次的費用もかかる。一定年数勤務したら役職や部下を付ける必要があるなど動機付けなどのインセンティブも必要になる。ロボットは永遠の作業者でいてくれる。そうなると先進国の場合、ロボットの技術革新がすすめばロボット導入でコストメリットが上がる時代も先進国社会ではそう遠くない。


(ロボット産業における日本企業のデジャブ)

総括的に見れば、ヒューマノイド系ロボットにおける高価格製品が米国、産業用がドイツ、日本、標準や廉価版が中国となり、中国は主に発展途上国での導入に強みを持つ。さらに日本やドイツは、ニッチな特殊用途ロボットで独特の存在感を高めていく。

 そういった点では、ファナックなど特殊技術に強い産業用自動制御機器は、現在のロボット開発競争において、別経路の流れを作り上げていく事になり、工場におけるヒューマノイドロボットとの連携という立ち位置で事業を展開していくことが想定される。

参考

安川電機、中国でライバル攻勢にタジタジ 活路は米ロボット(2025年5月30日)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC238ZJ0T20C25A5000000/

「安川電機は、主力市場の中国で現地の競合メーカーの攻勢を受けて業績が頭打ちになっている。中国では今までのように売っていく事は難しく、米国市場を開拓しなくてはいけない。」

 こういった記事をみると、これは太陽光発電で、京セラやシャープなどの日本勢が先行したものの、市場が大きくなるにつれ、中国企業が台頭し、日本企業が駆逐されたデジャブを見ているようだ。汎用的技術の範囲なら、産業用自動制御機器を扱う多くの日本企業はその座を中国に奪われていくことになるであろう。


(銘柄選定)

 ヒューマノイドロボットはテスラやアマゾンが先頭を走っている。これら企業は、資金力が格段に多いこと。これは推測もはいるが研究技術者も世界最高レベルの人材を囲っている可能性があること。さらに自社の製造工場を実験場としてロボット精度を向上させられる強みがあること。AWSのロボット版というもので、完成度が高くなったら外販する。アマゾンは2足歩行の「アジリティロボティックス」を自社物流で展開している。テスラもオプティミスを発表し、ロボ産業の盟主になることを画策している。

 もう一つの流れは、NVIDIA等の連合チームである。実際、1X TechnologiesとNVIDIA、OpenAIがNEO(主に家事補助)の共同研究、 Figure社とMS OpenAI NVIDIA intel、べゾス等の連合チーム、BMW等による製造業ロボットなどがあるが、総合的な観点でみればテスラ、アマゾンが一歩先を走る可能性が高い。

(ロボット周辺銘柄こそ日本企業の最大の武器)

 ロボットが必要とする技術は多岐にわたる。

AI、HPC(ハイパーコンピューティング、3D、LiDAR、レーダー、音声センサー、バッテリー、モーター)

 これら技術で高度な技術を有するハードウエア制御装置は日本の製造業の得意分野となりうる。こういった技術で高性能を求めるほど、中国企業は日本企業を頼る局面が多くなるであろう。基礎技術に強みのある部品メーカーは長期投資において高リターンを得られる可能性が高い。

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