投稿

バーチャル婚が当たり前になる時代(社会動向)

初版 2022.10.14 (旧タイトル;少子高齢化と財政破綻) 1.歯止めの利かない人口減少 1980年代までは、日本だけでなく世界中で人口爆発を危惧していた。多くの人がこれ以上に人口が増えすぎては困ると思っていた。ところがバブル崩壊を境に、日本人は次第に結婚をしなくなり、そして子供を産まなくなった。これは、バブル崩壊後の不景気という一時的な現象ではなく、年を追うにつれ深刻なものとなり状況は悪化の一途を辿っている。こういったことに、政府も手をこまねいているわけではなく少子化対策を打っているが、今となっては焼け石に水である。それは政府が悪いのではない。お隣の韓国や中国、そしてシンガポール、香港、台湾などは日本以上に深刻な少子化に陥っている。さらに、タイなども同じような少子化に陥ってきた。これは、この100年に起きた社会構造の変化の歪によるものといえ、ちょっとやそっとの政策を打ち出してもどうにもならないところまで行きついているからである。 2.女性が子供を産むメリットが見いだせない 少子化の原因は女性の社会進出に対しての旧来以前の社会構造のギャップにある。 ・女性の高学歴化が顕著になったことで、彼女らの自己実現が出産適齢期と重なってしまう。このため、出産時期を逸してしまう。 ・一方、共働きで子供を育てることは、その女性に対し、20年近くにわたって子供に人生を捧げるだけでなく、5才くらいまでは保育園で絶えず移される風邪などの病気との闘い。病気でも預けられる特別施設をさがし、又はその日だけベビーシッターを雇ったりするなど、365日24時間、子育てと戦う毎日を強いられる。多くの場合、このほとんどを妻が背負うことになる。さらに費用面では、託児所や学童保育などでほぼ一人分の収入が出ていき、中学から大学までは膨大な教育費負担など巨額な出費が待ち構えている。さらに子供のいる家庭ほど、子供の友達との釣り合いも考慮し、一軒家やマンションの購入をせざるを得ない。これらを賄うためには、夫の給料だけでは不十分であり、一定以上の収入を得るために長く会社に居続ける事になり、子供を育てながら周りの男性と同じような成果を上げなくてはいけない。それに解放される頃には50代、遅ければ60代を迎えるが、今度は老後資金の確保が重要な課題となってしまう。 こんな戦場のような毎日を20年以上も続ければ、家には二...

トランプ政権誕生による世界経済への影響(7月時点)

イメージ
 大統領選のテレビ討論会によって、バイデン政権が劣勢に立たされ、7月15日襲撃未遂事件でトランプ再選への勢いが増してしまった。そうなるとトランプ政権の現実味が帯びてきた。  不思議なことに、今回の選挙では米国マスコミがトランプを酷評していない。そして、米国経済界の著名人がトランプ支持を明言し始めた。こういった事はトランプの第一次政権の時には見られなかった。これは、バイデン政権でダウが最高値を更新しているものの、米国民の殆どはその恩恵を被っていないことが示唆される。その現状に対し、バイデンを厳しくたたくことをしないが、多くのマスメディアや企業経営者も同様の意見と推測される。賛否両論かもしれないが、前回トランプ大統領就任時の経済政策に対して、米国民からは一定の評価があるものと推測される。 しかし、この襲撃事件後、トランプは様々な政策を発表したが、その内容に疑念を抱くマスコミは、結局のところ、次の民主党候補者であるハリスを全面的に押し始めた。 米国の知識層とトランプは水と油の関係で、両者が融合する事はほぼ不可能なようだ。 〇米国経済への影響 トランプ大統領は、米国第一主義を掲げる。そのため、基本的には米国民に対し利益の生まないことは行わない。そして、彼は政治家ではなくビジネスマンである。米国経済や株式市場が下降気味になることはない。ただ、その中身はバイデン政権とは異なり、米国の保守層に恩恵を与える政策に終始するので、米国の内需銘柄が恩恵を被る可能性が高い。その一方、GAFAM内でも前回の選挙時にトランプに厳しい対応をしてしまったメタ(フェイスブック)などには顔色の悪い施策を打ち出してくる可能性がある。それがTIKTOKの存続であり、まさしくフェイスブックに利を与えない姿勢をとっている。  金利政策については、トランプはトランプなりの手法で金利を操作するであろう。金利を引き下げてもインフレ率を高めないように政策を打ってくるのは間違いない。その一つとして、世界各国への援助を減らして国内経済に投入する。それだけでも相当な額になる。 日本政府に 対しても、駐在米軍の軍事費に多額の負担を求めてくるであろう。それ以外にも、ビジネスマンとしてのトランプ独自の奇策を売ってくる可能性は十分に高い。 〇日本経済への影響  日本においては、円安の終焉。これは間違いなく起きる。しかし、ど...

「五公五民」時代における賢い人生の歩み方

イメージ
( 「五公五民」の重税時代突入 ) 30年以上に渡って、サラリーマンは 収入が増えても、その分だけ税金も増えるため手取りが思うように増えなくなった。それでも、バブル崩壊による デフレ経済下で、大半の商品を安く購入できたので、重税の苦しみを軽減することができた。 しかし、2021年頃から事業者側が消費者に躊躇なく値上げすることを覚えてしまい、我々庶民は重税とインフレのダブルパンチを食わされている。そんな庶民の苦しみを知らずか、政府は執拗にステルス増税を仕掛けてくる。まさに江戸時代の農民への 「五公五民」 と変わらぬ、サラリーマン大重税時代が到来してしまった。 (国民負担率の世界的な位置づけ) 日本国民の税負担は今や五公五民となってしまったが、世界を見渡すと西欧諸国においては五公五民どころではない負担率がザラであり、日本が突出して高い国とは言い切れない。これら西欧諸国は成熟化した先進国であり、社会性民主主義の福祉国家である一面が強い。一方、米国などビジネスを優遇する国は消費を喚起する目的から国民負担率はそれ程高くない。 つまるところ、ビジネス環境の柔軟な国は総じて低く、成熟して国全体が一種の共同体みたない国は総じて税負担が高い。日本の今後の立ち位置を考えるとき、西欧諸国型、自由競争の米国型のどちらにも属しておらず、まさに「二兎を得るもの一兎を得ず」のようなグラグラ感がそこにある。 (重税からの束縛に逃れられない) 日本は深刻な少子高齢化の真っ最中であり、世界一の債権国といえども膨大な国債発行や政府債務を放置できず、政府はこれ以降も執拗なステルス増税を続けていくのが目に見えている。 日本は、いまや五公五民、いや六公四民を強いられる時代に突入し、江戸時代の小作農民と何も変わらなくなった。東大卒でエリートサラリーマンでさえ、お金に関してはその束縛から逃げ切ることはできないまで政府の債務は極限まで追い込まれている。 (五公五民時代を意識した資産運用) 我々はそういった現状に嘆くのではなく、できるだけ早い時期に一定以上の資産を貯めることに注力すべきである。資産運用という表現は非常にあいまいであるが、できるだけ相場と向き合って試行錯誤をするべきである。 そういった試行錯誤を続けていれば、資産運用のテクニックがついてきて、次第に資産は増えていくものだ。それでも、政府はそういう人たちを...

国民健康保険料に垣間見る日本経済の歪

イメージ
  日本は、世界に誇る「国民皆保険」制度の国であり、外国とは違って、少ない保険料負担で安心した医療を受けられる素晴らしい国である。しかし、国民健康保険という点では状況はちょっと異なる。  通常会社員なら、会社が属する健康保険組合に加入しても、その保険料は会社との折半のため、大体給料の5%程度が差し引かれることになる。国民健康保険料の場合、なんと会社との折半がないので年収の10%程度を国民健康保険料として支払わくてはいけない。  これは、年収100万円なら10万円 300万円なら30万円ということになる。 実際には、減額制度のあるようなので規定通りに支払うとは限らないが。どう見ても加入者にとって大きな負担であることには変わりない。  一般的に、国民健康保険は、高齢者や無職やアルバイト、そして個人事業主がその対象となる。これら与信の低い層を対象にしているとなると納付延滞率が気になってしまう。  とはいえ、国は納付者の与信など気にかけていない。被保険者が納付を怠ると市役所からの督促がかかり、それを無視し続けると財産差し押えにまで発展する。すごい、消費者金融と変わらないではないか。消費者金融は用途のあるお金の借金。国民健康保険は。医者にかからなくても必ず払わなくてはいけない。  それでも、加入者からの納付だけでは国民健康保険の運営を維持することができず、結局のところ、国からの多額の補助金でどうにか体裁を保っているのが現状だ。 今後は、少子高齢化が進むことで退職した高齢者(74才まで)を中心に国民健康保険に加入者は増加することが予想される。また、その多くは持病を持ちであり、常時通院をしている人も少なくないので、放置すれば国民健康保険の財政を圧迫する。国は高齢者に雇用を推進して企業側の健康保険に入ってもらいたいというのは本音であろう。    こういった事情を考慮すれば、多額の金融資産を保有して、数百万の配当金収入を得ているセミリタイア層が増税のターゲットになるのは必然である。これらセミリタイア層は。多額の金融資産があるにも関わらず、国民健康保険料ては、最低ランクの4~5万円程度しか支払っていない。仮に200万円程度の配当収入がある場合、勤労所得者との間で、国民保険料だけでも15~6万円分だけ支払額が軽くなってしまう計算だ。さらに、これに国民年金、所得税、住民税等を考慮し...

NIKEも成長の限界か

イメージ
  NIKEは、世界最大のアスレチックシューズ、アパレルのサプライヤーであり、スポーツ用品の大手メーカーである。そしてDOW30の構成銘柄である。DOW30銘柄は、その業界の巨人ではあるが、安定感のある成熟した企業も多く。株価が大きく跳ね上がることはない。現時点においてダウ指数を押し上げているのは、マイクロソフト、アップル、アマゾンなどのいわゆるGAFA関連銘柄群である  一方、NIKEは企業年数という点ではGAFAMに近いが、ここ数年は成熟株と同じような動きをしている。NIKEのビジネスは、スポーツ市場におけるブランド力という強みである。今後、世界的な健康志向への高まり考慮するとNIKEのビジネスも大きな成長を見込めそうだが、現実にはそうなっていない。    実は、私は数年前からNIKEを投資対象銘柄としてウオッチしていたが、実際に購入するまでに至らなかった経緯がある。特に21年の暴騰局面の時は投資しなかったことに後悔をしたほどだ。とはいえ、2年後には株価は半値近くにまで落ち込んでいる。  株価は熱狂しているときに購入するとリターンが少ないと言われる。しかし、こういった壁を幾度もぶち破ってきたのがGAFAMを筆頭する大手IT銘柄である。  今時点ではNIKEに投資しなかったことが正しかったといえるが、こういった所に株式投資の難しさが内在している。  投資の難しさについては、話は余談になるが、コロナ禍の時、熟練した投資家は、世界大恐慌やITバブル崩壊、リーマンショックなどの経験則から二番底を意識していた。しかし、相場は右肩上がりの上昇を続けて二番底は来なかった。逆に、投資経験の浅い投資家ほど、相場の流れを素直に受け入れてビックテック株やインデックス株に投資して、大きなリターンを得た。コロナ禍の相場では今までの経験則が通用しなかったのだ。   私は、テクニカルな産業動向分析はしない。NIKEの経営陣がどのようにしてこれから長期にわたって自社の売上を成長させていくかを見極めたい。それは、技術的な分析ではなく、会社の長年にわたる決算報告の癖から判断する。そういった点では5年~10年の株価チャートをみる限り、NIKE側の企業成長戦略や組織体に対する限界が示唆されているようだ。  またここ数年でPERレンジの訂正もされている。その結果NIKEのPERは20倍近辺にまで...

バッフェットでも「 弘法も筆の誤り」をする?(雑感)

イメージ
  先日のニュースで 「バフェット氏はパラマウント・グローバル株をすべて売却し大損をしたことを告白。「2022年にパラマウントに投資したのは100%、私の決定だった」と述べ、投資の失敗を認めた。」 というのがあった。 このニュースで、私は投資の神様であるバフェット氏投資のミスを犯すことを痛感させられた。 そもそも、バフェット氏は、投資対象のビジネスモデルを重視しており、企業経営者は何代か続いているうちに能力の劣った者が就任してしまうものだ。だからこそ、馬鹿が経営しても安定的な収益が見込めるビジネスモデルを持った企業に投資しろと述べている。  バフェット氏は素晴らしいビジネスモデルで持っている企業が経営者の能力不足で実力以下の経営成績や株主還元をしている企業を探す。私はよくわからないが、「パラマウント・グローバル」は同業他社が到底追いつくことない強みがあったのだと思う。   そしてバッフェトは、そういったターゲットに対し、大量の株式を購入して大株主になり、その企業に対し経営圧力をかけていく。一般の投資家は単に投資するだけで事業者への経営改善はできない。事業者のなすがままである。それに対し、バッフェトが大株主なら事業者は是が非でも結果を出さなければならない。その成功例がアップルであり、日本の総合商社である。しかし、ビジネスモデルが想定より強固でないことが判明し失敗するケースもある。その代表がクラフトハインツである。今回のパラマウントも同様の誤算であろう。 誰もがバフェットの投資する銘柄にはハズレはないと信じ切っている。それは大いなる幻想であることにもなる。  バッフェトは投資の神でもなんでもない。彼らは経営者であり、彼らの経営能力の賜物で投資神話を築いているにすぎない。結局は、バフェットが投資している銘柄に対し、投資家はその利点を享受出来るだけである。      

中国とインドの隆盛が引き起こす東西覇権の交代(世界の潮流)

イメージ
  (テスラ報道にみる中国政府の底力)  米電気自動車(EV)大手テスラが5月25日、中国版ツイッター 「微博(Weibo、ウェイボー)」の公式アカウントで、以下のようなメッセージを発信した。 「データの現地保管を実現するため、我々は中国にデータセンターを設置しており、今後、中国国内のデータセンターを増やしていく計画だ。テスラが中国本土で販売した車両のデータは、全て中国国内で保管される」 これを単純の受け取ればテスラの中国戦略の成功であり、短期的にみれば、テスラ社の売上げ増につながる。この報道を受けてテスラ株は上昇した。テスラ投資家にとっては好ましい話であるように思える。しかし。それを見計らって、中国政府はテスラのデータに基づいた テスラの自動運転の改良などの ノウハウを国内企業に横流して、中国製メーカーの実力の底上げを図っていくだろう。イーロンマスクが、どこまで危惧しているかはわからないが、その場しのぎでの対応なら、テスラは数年後に中国メーカによって大きなダメージを受けるのは間違いない。 (時価総額の膨張が招く歪み)  テスラの行動は米国の株式相場の致命的な欠陥の派生にすぎない。時価総額が恐竜化したことに対する歪みともいえよう。これは視点を変えればGAFAM、そしてはNVIDIAなどにも当てはまる。時価総額が巨大になりすぎて、それを維持するために中国市場を無視出来なくなり、それを熟知している中国政府の意のままに操られて、程度差はあるが中国への技術移転を容認せざる得ない状況に追い込まていく。その結果、中国企業の技術力は向上し、米中の対立にまで発展していく。 (米中対立の限界)  米中対立に対して私たちは米国目線でしか情報を得る事ができない。それは視点を変えれば欧米側のプロパガンダである。しかし、西側が課する中国制裁のほとんどが中国から見れば穴だらけの制裁である。実際、中国メーカーが先進国の技術をもったとしても先進国に中国製品が席巻することは難しいが、発展途上国に目を向けると、安くて程々の品質を有した中国製品が重宝されている。発展途上国の地位は年々上昇傾向であり、中国製品のシェアは数量ベースではトップをひた走れる。  西欧社会は中国というパンドラの箱を開けてしまった。この点については、西欧の指導者はあきらかに中国をほかの発展途上国と同一の視点でしか見てこなかっ...

投資対象としてのREIT (投資手法の研究)

  (REITと不動産投資の相違)  人口減少社会における不動産投資の考え方として、不動産投資というのは株式市場のような玉石混合の混じった市場でもあるにも関わらず、物件情報に透明性がないので、プロ的な要素を持った投資家が優位になりやすい。  同じ不動産投資でもREITは、比較的株式のように情報に対する透明性が高いだけでなく、投資信託としての社会的責任を負わされているので、投資家を欺いて多額な損を与えるような商品設計を行えば、そのこと自体が社会問題となり、金融庁は認可基準が厳しくするなどの法的整備を余儀なくさせられてしまう。  実際、REITが倒産して多額な損を被るような暴落はリーマンショックなコロナショックなどの特殊経済環境を除いて起きていない。 (メリットとデメリット)  そういった視点でREIT分析を試みると。 メリット1:大都市圏の優良物件が多い その理由として、 ①大都市圏の不動産は概して需要が高いため空室率が低い。②そして、需要の高さから流動性も高い。さらに③人口減社会といえども大都市圏内には世界各国の資金が流入することで地価上昇が見込めやすい。強いては、それが不動産価格上昇や賃料価格上昇を呼び込みやすい。 メリット2:投資商品としての代替 REIT物件のほとんどは、ビルの立地や建物の属性から選定しており、その観点から特に東京都心5区に集中しやすく、実際賃貸オフィスビルのうち約10%の床を所有していると言われている。また、新耐震基準・中小規模ビルの所有割合が相対的に高く。物件そのものが投資資産として活用できる。  このため、物件の価値が上昇した場合、①一部の物件売却により利益を確定することができる。また、②市場環境変化によるポートフォリオの再構築などの投資戦略の見直し、③有利子負債の圧縮なども比較的容易に行える環境を整えている。 デメリット:金利上昇に弱い   REITは、投資家から集めた資金だけでなく、レバレッジをかけるために銀行からの借入れなどを行っている。したがって、金利が上昇すると、その借入金の利息負担が増加するだけでなく、借入金の早期返却を求められたりすることも想定されるなどのREIT収益を減らす要因がある。 また、金利が上昇することで、REITと他の金融商品との間の利回りの差(スプレッド)が縮小し、投資家がより安定的な国債など...

米国株投資銘柄の選定基準 

イメージ
1.米国市場の弱肉強食の非情さ ここ40年間、ダウは右肩上がりを続けている。このため、米国株に投資をすれば無条件に儲かりそうなイメージを持たれやすいが、米国株は日本以上に企業業績と連動しており、米国市場が上昇相場であっても、企業の経営状態の思わしくなければ、非情なまでにその銘柄の株価を奈落その底に突き落としてしまう。甘えの許さない米国市場では、長期間に渡って インデックスと連携して上昇する銘柄など殆どない。 2.銘柄分析 ①ファンダメンタル分析の無意味さ 株価が上昇しやすい銘柄は未来に輝くような期待値のある企業であり、投資家は無意識に企業における現在および数年後の企業業績を逆算している。こういった期待値は、①企業が販売する商品の将来性 ②増収増益を繰り返すことでの投資家からの安心感 などにより投資家からの高い評価を蓄積していくことで芽生えてくる。そういった期待を獲得した銘柄には投資家から多くの資金が流れ込んでくる。たとえ、決算が一時的に振るわなくても将来期待値が高い銘柄の株価は下がらない。一方、現状の業績が良くても未来の業績が尻すぼみになると判断される場合には低PERで放置される。このように株価は投資家の期待値という非定量的な信用具合の評価基準で上下に変動し、そのブレ幅は、PERは10倍以下から30倍後半まで約4倍近くに及ぶ。これだけの開きがあれば収益や財務分析などのファンダメンタル分析で株価を予想しても期待通りの株価など得られない。 ②IT業界の超高収益モデルが時価総額を天空にした 2010年中頃から、GAFAM等がIT分野で独占的なシェアを獲得したことで、製造業が到底太刀打ちできない高収益率ビジネスを展開できるようになり、時価総額を天空の領域に導いた。さらに、コカ・コーラやマクドナルドなどもフランチャイズのような形式を取り入れて、低収益の事業分野を最大限に切り離して利益率の底上げをしながら株価の底上げを図っている。昨今の時価総額上位銘柄はこういった高収益ビジネスでかつ独占的な地位を築いた企業に集中している。 ③「成長性」が株価上昇の根源  株価は常に現況におけるすべての材料を織り込んでいる。現状のPERや高収益ビジネスだけで上昇軌道を描けるものではない。市場が嫌うのは飽和であり成熟であり、いつでも市場は、企業側にさらなる好材料か更なる成長期待を求めてくる。 こう...

日本株投資銘柄の選定基準

1. 長期的な視点での日本 株投資  東証は、戦後の再開からバブル景気となる 1989 年までの 40 年間に 300 倍近い上昇を遂げ、それ以降の 25 年間は日本経済の成熟化とともに下降トレンドとなった。 2013 年のアベノミクスにより上昇トレンドに転換し、現在に至っている。歴史という点では、 1989 年のバブル高値は戦後の高度成長期の終焉を示唆するものである。今の日本は産業構造という点では、高度成長期の構造をなだらかに引きずっているので、そういった意味では下降トレンドは未だに継続しているとはいえるが、アベノミクスでは未曾有の金融緩和というマジックにより、日経はバブル高値を超えて指数という点では、上昇トレンドに転換した。しかしながら、産業構造という点では、高度成長期に築いた技術的資産があまりにも大きいため、旧来の構造を維持しながら緩やかな改革にとどめている。 2.技術的ポテンシャルが株価に紐つかない日本企業 日本の製造業には世界有数の技術力やシェアを獲得している企業が無数にあるが、そういった優良といえる 企業でさえ、利益水準が低く株価が停滞していることが少なくない 。 日本企業の経営者は日本国としての社会的責任を強いられるため、株主より従業員の雇用や地域経済の安定性を求められてしまう。大抵の経営者は経営のプロに徹することなく労働者代表の立場を貫いているため、経営層と労働者層の境目がはっきりしない。米国流のトップダウン式資本主義と一線を画している。そのため、会社として成長戦略を打ち出しても、それぞれの部署が自分たちの自己権益を守る部分最適に走ってしまう。人事においても後先を考えない猿山のボス猿争いのような配置を当たり前のように繰り返してしまう。 ここでジャック・ウェルチ を添えておく 「自分の地位を守るために嘘をついたり、昇格した同僚をうらやんだり、人になにかをさせるために無駄なルールをつくったりと、そういう「さもしい体裁を涼しく整える魂胆」が会社に政治を持ち込み、スローダウンさせ、やがて企業が死んでいく」    このことは日本株投資において、経営のプロに徹することができるオーナー系企業などの一部優良企業に投資対象は限られてしまう事を示唆している。   3.日本株投資の選定基準 日本の人口推移を踏まえれば、...

投資環境でも世界が一つに集約

  日本経済における報道で例えば 「一部の自動車メーカーが工場を停止した影響で個人消費が振るわず、成長率は物価の変動を除いた実質でマイナスになると予想される」などおなじみのように経済状況が振るわない報道がされている。財務省が提供する国際収支報告においても経常収支は黒字を維持しているが、貿易は状態的に赤字が続いている。貿易立国の日本という立ち位置は消え去っていて,日本の国力低下を危惧する一方で、企業決 算においてはこのところ過去最高益の更新を繰り返している。  このことは、国内の景況感で企業業績を論じることが出来なくなっていることの表れである。  世間のニュースと企業業績は全く異なるベクトルで動いている。そうでなければ、トヨタの決算で売上45兆円、営業利益5兆円などというような結果を出すことは到底できない。このようにグローバル企業は、まさに国内景気ではなく、西欧、米国、中国、東南アジアなど世界市場と向き合って、それぞれにバランシングをかけながら売上調整を行っているに過ぎない。実際、トヨタの売上の 75% は海外売上である。  投資を考える上では人口減少が深刻な日本で活躍している企業に焦点を向けるのではなく、世界で優位なビジネスを展開し、海外売上の比率が高い企業に目を向けた方が長期的には確実な成果をもたらす可能性が高い。その最たる企業がコカ・コーラやP&G、そしてマクドナルド、そして GAFAM などの米国最強軍団企業群であろう。  リーマンショックやコロナ禍などの超金融緩和の副作用で、世界中でインフレが深刻化している。  こういった状況を恩恵として逆手にとっているのが、まさに優良で経営力の高いグローバル企業に他ならない。  今や投資家にとっては、一国の経済ニュースに頼るのではなく、世界は一つという視点で分析していくことが必要なのかもしれない。

人口減少という引き潮が及ぼす経済への影響

イメージ
日本経済の不振を語るうえで必ず出てくるのが「失われた20年」であり、今もってバブル崩壊の後遺症ばかりクローズアップされている。 しかし、実際は2010年頃からバブル後遺症ではなく、少子高齢化という経済への下押し圧力が日本経済を不安定にさせている。 2013年からスタートした超金融緩和はデフレ解消を目的とした劇薬のはずだったが、年を追って強まる経済の下押し圧力に相殺されてしまっている。  超金融緩和政策で日経平均がバブル超えをした時でさえ、少子高齢化による下押し圧力に日本経済が勝ってはいない。金融緩和の効果は、余剰マネーの享受に対する「強いものはより強く弱いものはより弱く」の状態をつくっただけに過ぎない。 大都市圏の一部の不動産価格が市場最高値を記録する一方、リゾート地の廃墟化、弱小地方都市のゴースト化、さらには都心の片隅の空きテナント化の進行。まるで潮が引くように年を追ってそのエリアが拡大している。  株価も一部の銘柄だけは天空を這うように上昇している一方、これら恩恵を享受していない大多数の銘柄が横たわっている。 国立社会保障・人口問題研究所が推計した人口統計(2040年)によると、ざっくり言えば首都圏(次点で3大都市圏)以外は深刻な人口減少を起こすらしい。北海道は札幌以外が全滅、東北は仙台以外が全滅、南九州、北陸、四国はほぼ全滅となる見込み。 さらに地域間での学力の差も深刻になる。都心は東大を筆頭に日本を代表する大学を目指した受験戦争がこれ以降も続く。地方においては偏差値を維持できるような学生数を保持できず、受験競争する土壌さえ備わっていない。それに乗じて大学側では海外に真似るべく人材の多様性という名目による推薦入試の乱発で定員をごまかそうとしている。まさに未来に向けた国力の低下政策としか言いようがない。こうなったら地方再興など全くと言って不可能である。そもそもパワーと能力にある人材が不足しているのである。  まさに二極化社会、格差社会への突入となるが、日本政府はそんな状況を容認することはなく、地方への配分を促すために年収や資産のレベルに応じて理不尽なくらいの増税政策を打ち出してくるのは間違いない。 これらを解決する手段として必ず出てくるのが移民政策の推進である。移民問題は経済成長の観点から今後の日本においては避けて通れない課題になるのは間違いない。とはいえ、西欧...

株主優待にみる投資家行動のパラドックス

  株主優待投資という投資カテゴリがある。株主優待に積極的な企業に投資して日常生活の出費の足しにする。投資家には人気の分野で、書店には数多くの本が並び、ネットでは無数のブログが投稿されている。しかし、私は株主優待投資という投資手法に少し疑問を感じてしまう。  そもそも投資視点で見れば、株主優待をする銘柄のほとんどは内需系であり、サービス企業が多い。これから日本が深刻な人口減少社会に向かっていくことを考慮すれば株価上昇は期待できるものではない。割高な時に購入すると 10 年分の配当と株主優待分が吹っ飛びかねない。    さらに優待品といっても提供される商品がせいぜい 2000 円~ 3000 円に満たない。クオカードなどの金券の場合、 500 円~ 1000 円程度である。これを利回り換算すると 0.5% ~ 2.0% に過ぎないのが殆どである。  商品系の優待に至っては、自社製品 2000 円~ 3000 円分を詰め合わせでプレゼントするのが典型的なパターンであるが、定価ベースなので商品数は少なく、同じものを近くのスーパーで購入したら、その7掛け程度で購入できてしまうためお得感に乏しい。もし優待品が、定価ベースで 5000 円~ 10000 円分の提供ならお得感がいっぱいになるのだが。  それだけしかない株主優待に対し、本やブログでは面白おかしく記事を載せている。ただ、松屋、吉野家、マクドナルドなどの飲食系優待は年に 10 ~ 20 食分の食事優待券を提供してくれるので、数社分購入すれば食べきれない位のボリュームの優待券が手元に届くことになる。それでも冷静に利回り換算すると1 % ~ 2% 程度に過ぎない。    株主優待投資というのは、結局のところキャピタルゲイン狙いではなく、株主優待のプレゼントを目的に盲目的に購入している過ぎない。    とはいっても、私自身も株主優待ではないが、株式総会後の懇親会を楽しみにセガサミー株を保有していたことがある。株主総会に出席すると、電動歯ブラシなど 1000 円程度のお土産がもらえ、その後役員との懇親会名目でホテル立食パーティー(約 3000 円~ 5000 円程度)が開かれていた。金額にすると大したことはないのだが、無料でホテルのおいしい料理をバイキング形式で食べ...

インテルに凋落の兆し

インテルについては、過去に分析記事をアップしました。今季はその記事を再掲します。この記事の趣旨は、インテルの低迷は構造的な問題に起因しており、小手先の対応ではかつてのような栄光を取り戻すのは困難であるということです。  私は、GEの分析でもラリーカルプが発表する前にGEが復活するには分割が必須であると述べました。インテルも同様で、本当の意味での復活するには分割するしかないというのが私の持論です。  実際、GE株を10ドル程度の時に購入した人は、その後2~3倍の儲けを得ることができている。GE自体はあくを出し切っているのでこれ以降の飛躍もある程度は期待できる状況下にある。インテルも購入タイミングを間違えなければ同じような儲けることは可能と私は踏んでいる、当然であるが、未来は誰にもわからなく保証できるものはないが。 1.半導体産業の王座転落  インテルは半導体産業の盟主です。半導体シェアの推移は、1982年8位、1993年1位、 1999年1位、そして2021年1位とそうそうたる実績です。それにも関わらずインテルは斜陽と言われて久しいのです。それは、スマホ台頭における市場シェア獲得の失敗、GPU市場におけるエヌピディアなどの台頭。データセンターに代表される大手IT企業のCPU内製化の動きなど成長分野で強みを発揮できていないことが理由として挙げられます。さらに、追い打ちをかけるように半導体産業は設計と製造の分離が進んでおり、総合半導体メーカーであるインテルは設計及び製造技術において専門メーカーの後塵を拝しています。市場は、そんなインテルを冷ややかな目でみているようです。 2.製造における技術低下  インテルの決算を見るとサムスンと絶望的ともいえる開きが生じており、令和4年の第2四半期の決算報告を例にとるとサムスンの増収の幅がインテルと比べ圧倒的に大きいだけでなく、インテルは大幅な減益でサムスンは大幅な増益です。両社の発表は、インテルは需要が一巡したための低迷、サムスンはハイテク大手のクラウド需要が好調と真逆となっています。これは、インテルの製品が市場から受け入れられていないことを示唆し、半導体製品という点では、インテルはサムソンとTSMCに追い付くことが出来ない程の技術的な差が生じてしまった事を表しています。それだけではありません。後ろには中国企業が猛追しています。インテ...

AI半導体の盟主(エヌペディア)の今後を占う

イメージ
 私自身の率直な感想として、NVIDIAがここまで爆上げするとは思っていなかった。この会社、言ってしまえばGPUの世界一の企業であるが半導体の設計会社に過ぎない。この会社の得意とする半導体がAIブームに乗っただけに過ぎない。 とはいえ、ビジネス競争が最も激しい半導体分野では、たとえNVIDIAが無双状態であったとしても、遅くとも3~5年もすればNVIDIAより低スペックであるが代替する製品がアジアなどの他国から現れてくるのは間違いなく、AI産業のすそ野としての半導体は二流製品の廉価品が市場に多く出回るようになる。そうなるとNVIDIAは、ひたすら高スペックGPUを提供し続けることで競合他社を大きく引き離すことを続けなければいけない。しかし、これは時間の経過によりスペック差の効果は小さくなっていく。  そういった視点から、NVIDIAの株価は、いや時価総額は間違いなく実力以上の値を付けている。   とはいえバブルという相場の性質を勘案すると、NVIDIAの株価はシスコシステムズのように天空を築くかのように上昇しまくる。シスコシステムズはITバブルの時の中心銘柄であったため、一時期世界一の時価総額を記録した。ITバブル以降は、主役がソフトウエアに移ったことでネットワーク機器メーカ扱いとなり、株価はIT製造メーカの範囲で推移するようになり、2024年現在にいたっても往年の株価に戻っていない。NVIDIAもAIブームをけん引する筆頭銘柄であることを考慮すれば、GAFAMを凌駕する時価総額を近づくという見方も否定できなくもない。  つまり、AIブームは、これから長期にわたって市場を賑わすテーマになるので、いつ・どこまでの期間まで上昇するのかは、誰にもわからないが、NVIDIAはその初期段階でのスター銘柄であることには違いない。つまり、ITバブル時のシスコシステム的な位置づけとすり替えることもできる。そういう点では、第一期AIブームの頂点を極める銘柄として天空を舞うような株価を記録するのも想定の範囲内である。  ただ、その後はシスコシステムズと同様、第二期AIブームの主役は革新的なソフトウエアやロボットのような関連機器に変遷していき、株価は数分の一まで転げ落ちることもあり得る。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサ...

歪を抱えながら経済力を膨張させるドイツ

イメージ
 ドイツの国力は今や日本を猛追し、ついにはGDPを追い抜いて、今度は、世界一の債権国の立場すらはく奪されるという矛盾が横たわっている。暗いニュースとは裏腹に世界の中での経済大国としての地位は盤石なものにしている。 ドイツ経済について辛辣に述べているエコノミストや識者が多い。しかし、私から言わせてもらえば、他の国を心配するより日本の事を心配しろと言いたい。 一方、デフレを解消する政策として超金融緩和を長年にわたって続けてきた日本は、国内経済の均衡をなんとか保っているが、円安政策も相まって国際的な地位の低下が著しい。今となっては東南アジアですら日本とほぼ同じ物価水準である。90年代の日本がいにしえにすら感じてしまう。 このように日本とドイツは全くと言っていいほどの真逆の動きをしている。 ユーロは、欧州連合(EU)加盟27カ国のうち、19カ国の通貨同盟である。ユーロ通貨はドイツの経済力に比べてはるかに言っていいほど割安。ドイツはユーロ圏の盟主であり、一番の経済大国であり、世界トップ級の貿易黒字国である。とはいえ、ある国が膨大な貿易黒字を計上しても必ずしも好景気に沸くとはいえない。逆に不況であったりもする。それは、貿易の輸出と企業利益に相関関係はないからである。90年代の日本がまさにそのような状態であった。  この事から言える事。国内で景気如何に関わらず海外では大国を維持し続けているドイツとそのようなプライドをかなぐり捨てた日本。 どちらが良いのか一概に言えないが、その違いをもう少し冷静に分析する識者がいても良いのではないかと私自身、ふと思ってしまう。

金融市場活況は投資家を暇にさせる (後編)

 金融動向に疎くなった理由は、私のように若くない人間にとっては、投資は元本保証を保つことが鉄則であり、少しづつでもよいから確実な利益を獲得していくことにある。 例をあげれば、金融資産5000万の人が、ネットで必ず上がると話題になっている銘柄を購入して、資産額4000万とか3000万まで下がった場合、そのリカバリーは年齢が高くになるにつれて難しくなるということだ。20代なら必死に働くことでなんとかなるが、年を取れば取るほど労働収入でのリカバリが難しいという現実に行き当たる。この最たる例が、定年退職金2000万を投資して、その後の資産額が3000万になればよいが、逆に1000万になったら老後人生に大きなダメージを食らうことになる。 一般に資産配分は、「株式の割合=100-年齢」「債券の割合=年齢」と言われる。年齢に応じて変動リスクのある投資を控えていくというものだ。株主投資についても、ある一定の年齢を過ぎたらテンバガーを狙うのではなく、経済状況に関わらず増配を繰り返し、ゆっくりであったとしても10年から20年の長期手的な視点で見れば、右肩上がりを期待できる銘柄だけに投資するのが適切と考える。  そういった視点では、日本株については中期視点では期待を持てるが長期視点ではどうなるかわからない、ダウは長期的には右肩上がりを続けるとも思っているが円安を解消してからでないと動きにくい。  当分は米国株の増配発表が株主にとっての大きな楽しみに成り果ててしまっている。

金融市場活況は投資家を暇にさせる(前編)

   日経平均が4万円を超えて、ダウも4万円ドル伺い始めている。そして為替レートは 150 円近辺を彷徨っている。  これでは、日本株も米国株も投資できる環境ではなくなった。ちょっとやそっとの暴落でも買値水準に達することができないからである。 ちなみに、私が保有している米国株は、は昨年購入したベライゾンを除き、その為替レートは 100 ~ 110 円のレンジに集中している。  このため、株価動向に関わらず利益を享受している格好である。    最近の金融関係で特筆すべき動きは、日銀が 3 月 20 日に発表したマイナス金利の解除で、これによって、好利回りの商品だと、 0.3% 程度の金利を受益できるようになった。  私にとっても、退避している現金の預け先が増えてきたのはうれしい。    一方、金融市場については、株価が上昇しすぎて投資先の選定すらままならなくなった。ましてや、経済関連ニュースすら読みたいと思う記事が少なくなった。  ふと、この暇はどれだけ続くのかと思ってしまうこの頃です。暇ではあるものの、この先は、 GAFAM の決算動向とトランプが今後発言してくる経済政策についてはウオッチしていきたいと思っている。  

アップル社の今後を考察する。

イメージ
  (膨大なる株主への恩恵) アップルは言わずとしたGAFAMの一員であるビックテック企業であり、かつ世界を代表する優良企業の一つである。株式の時価総額に至っては3兆ドルを超える途方もない規模に膨れ上がった結果、2015年頃に投資家がこの株を保有していたらテンバガー程度の利益を享受したことになる。それだけではない、リーマンショック前に保有していたなら、この株だけで日本円で億に近づくくらいの富を得ることができた計算になり、アップルが投資家に莫大な恩恵をもたらしたことがわかる。   (ティム・クックという稀代の経営者) アップルの社長ティム・クックは非常に優秀な経営者である。アップルは2013年頃にはアイフォンの成熟化懸念から一度沈みかけて普通の企業に戻ると思われたが、ティム・クックの采配で3兆ドル近くの時価総額を築くまでに復活させることに成功した。 スマホの普及率から考えるとアップルの成長余地は限られ続けている。このため、アップルの今後を占うには単純に言えば、ファンダメンタルで判断しても意味がいない。ティム・クックがいつまで現役CEOでいて、経営のマジックをやり続けられるかだ。アップルに問題が起こるとしたら、ティム・クックの次のCEOがどれだけ優秀であるかだ。 (バークシャー・ハザウェイの動向) さらに、この銘柄を考えるにあたってもう一つのポイントはバークシャー・ハザウェイの存在である。ウオーレン・バッフェットは、現在の株価がその銘柄の根源的価値より安い銘柄の投資することをモットーにしており、その投資姿勢は世界中の投資家の見本になっている。  しかし、バークシャー・ハザウェイは、この根源的価値をバークシャー・ハザウェイ側の経営者への圧力によって実現している面も否定できず、その代表例がアップルでもある。バークシャー・ハザウェイはアップルに事業を対する現状打破に向けた圧力、そして10兆円を超える自社株買いをさせるなどをアップルは余儀なくされている。  このため、バークシャー・ハザウェイ、特にウオーレン・バッフェットが現役でいる限りには、アップルはウオーレン・バッフェットの期待に応えるべく、様々な施策を打ち出してくるだろう。しかし、ウオーレン・バッフェットが現役を引退したとき、ティム・クックはウオーレン・バッフェットからの経営圧力から解放された後に懸念が生じる。 (...

不動産投資の損益勘定 

イメージ
不動産投資の損益勘定 (投資手法の研究)  不動産は資産運用の3本柱の一つである。かつては、保有しているだけで資産価値が上昇しひと財産を築けた人も多かったが、昨今の少子高齢化、かつビジネス取引の仮想空間への移行により不動産需要は減少の一途を辿っている。投資家は、不動産市況の表向きな動向如何に惑わされず、この事実に忠実に向き合うべきであろう。 1.アパート経営の有効性  アパートを購入して大家になって、月30万~50万の家賃収入を得る。地主感漂う非常に魅惑的な言葉である。しかし、優良な投資であるかは話が別。少子高齢化の日本ではアパート供給も過剰気味である。借り手は当然だが新築で手頃な家賃の物件に向かう。築年数に応じてアパートの家賃も安くしなければ入居者は集まらず、築30年なら激安にしないと誰も借りてくれない。そんなアパートは郊外にいけばそこら中に転がっている。  そういった状況下でアパート経営する場合、購入時の事業ローンを10年程度に抑え、約10年間の賃貸収入後にアパートを更地にして売却してもトントンになるような投資が理想的である。それが出来れば11年以降は家賃収入=利益となる。当然だが、そんな条件を満たす物件など存在しない。これを達成するには、激安で中古物件を購入し、自力リフォームで商品価値を上げるなどのスキルが必要となる。このようにセミプロ級の事業スキルがなければアパート経営などおぼつかない。 2.住宅用不動産の資産性  高度成長期は数百万で購入した不動産が地価の上昇で売り払う頃には数千万円に化けていたなんて話はいたる所で転がっていた。しかし、21世紀いや80年代バブル以降は、マンションを購入しても売却時の価格は半値程度ということも珍しくはない。これを人生の損得勘定でみると、4000万円の物件を35年ローンで購入した場合、ローン完済までの金利分を含め5000万~6000万円近い支払いをすることになる。維持管理を加えたら1000万円分が加算される。一方、ローンを払い終える頃の物件価値は、手入れが行き届いても1500~2000万円がやっと。約4000~5000万円が消えてしまうことになる。この差額は、生涯に渡って住み続けるための仮想的な家賃でしかなく、都心の一部の物件を除けば持ち家の資産性なんてそんな程度でしかない。 一般に 平均年収の人なら3000万円、エリート会社...

相次ぐ強気報道が相場に示唆するもの

 (バブル高値越えに伴う報道姿勢の変化~日経記事タイトルから~) 〇日米株式市場、相次ぐ強気見通し 景気・企業業績を楽観 日米株式市場で相場が一段高になるとの観測が広がる。主要な株価指数は先週、過去最高値を更新した。米経済が底堅さを維持し、企業業績が上向くとの見方がある。国内も、賃上げの実現が内需を支えるとの期待が出ている。 〇株最高値、今回はバブルにあらず 89年と違う企業と個人 日経平均株価が22日、1989年に付けた過去最高値の3万8915円を上回った。過熱感を心配する声もあるが、89年当時と今を比べると、あらゆる状況が違っており、今の株高は実績に裏付けられた、堅実な上昇だ。日経平均の過去最高値到達は、まだまだ通過点とみていい。 〇株価の「砂漠」業績で突破 来期は増益企業8割に拡大 年初から高騰に沸く日本株。22日の日経平均株価の終値は前日比で2%高い3万9098円と、1989年につけた史上最高値(3万8915円)を上回った。 日本株買いの手掛かりの1つが、経済再開や値上げの浸透、円安を追い風にした好調な企業業績だ。トヨタ自動車や任天堂などは2024年3月期通期の業績予想を上方修正し、今年に入って上場来高値を更新した。 〇上場企業の純利益、34年で7倍 ROEは米欧に見劣り 日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新した。日本の主要企業の純利益はバブル経済時の1989年から約7倍に拡大。海外で稼ぐグローバル企業の成長が原動力となった。自己資本利益率(ROE)をみてみると、借入金に偏った資金調達も見直され、製品やサービスの付加価値を高め収益を伸ばす経営が根付いてきたことが分かった。 (記事の論調変化) 記事の論調については、上記の通り、バブル高値を超えてから日本経済に対してポジティブな報道が多くなった。ここ数か月でまるで手のひらを返したようだ。日本経済や企業動向に大きな変化があったわけではない。単に日経平均がバブル期の目安である38915円を超えただけに過ぎない。とはいえ、報道姿勢の変化で世の中の雰囲気が変ってくるのだから面白いものである。 実際、バブル後30年間でこれだけ強気な報道をしたのはほとんどなかった。そういった意味では2024年は日本経済又は日経相場が新領域に突入したとも言えなくもない。 とはいえ、歴史を振り返れば強気相場の常套文句は、「今回の...

総合商社の銘柄分析 

イメージ
    総合商社は、戦前・戦後と続く日本を代表する企業である。他名門企業の多くがバブル以降に脱落し斜陽になりかけているのを尻目に、今もって王者の地位を守り続けている数少ない名門企業群である。そして総合商社は、かつての仲介業から新規ビジネス領域に果敢に挑戦するベンチャースピリットを兼ね備えた投資会社に変貌した。企業の経営リソースを最大限に発揮させるためにも、総合商社は世界を股にかけたビジネスイメージと日本最高峰の給与水準を流布することで、日本屈指の優秀な人材の確保に余念がない。 〇日本経済を背負ったコングロマリット  そういったイメージと裏腹に、旧態依然のような偏向的な大学閥の社員採用。そして日本株式会社の激務、熾烈な社内政治。どう見ても、旧態依然とした日本特有のエリート体質の染みついた社風でもある。総合商社は、10近くのカンパニーを抱える超コングロマリットである。これらカンパニーのほとんどは戦前の財閥の流れを汲んだまさに日本国の番頭のような事業であり、各々のカンパニーがそれなりの利益をはじき出せているが、逆の視点で見れば殆どの事業は成熟している。このため、株式市場は、総合商社に対して、成熟した日本経済の番頭かつ成長余地のない巨大なビジネス領域を理由に低PERの評価を与え続けている。 〇資源ビジネスにしか頼れない三菱商事、三井物産 一般に、一つのビジネスを会社の基幹事業までに成長させることは至難の業である。餅屋は餅屋を脱却できない。 ここ20年程度は、資源高に支えられて総合商社は未曽有の利益をはじき出した。これを一本足打法のように危険視する見方もあるが事業の規模を考慮すれば致し方ない、逆に、投資対象として妙味が十分にあることを物語っている。鉄・銅・石炭・石油・天然ガスなどはその需要が上がることはあっても下がることはない。需要の波があるかもしれないが、資源市況如何で大儲けできるビジネスを持っていることは相当な強みと言える。 総合商社の場合は、事業規模が大きいので、コンビニやファッションブランドなどの成功においても、それら事業だけでなく、やはりそれらの原材料や物流を牛耳ることに旨味が生じる。これら時代とともに人の趣向が変化してビジネスモデルが衰退化するが、総合商社はそうなれば次のトレンドに移行し、物資を提供し続ける、実際のところ、大なり小なり総合商社の強みは商品の...

投資家から見た日経平均のバブル越えについて

イメージ
     私自身、日経平均がバブル最高値近くに上昇するなど予想だにしなかった。この反省点として、自分自身が物知り顔してエコノミストを真似るように日々の経済情報を分析して、見当違いの仮説を立てていたことに他ならない。とはいうものの「最も危険なことは、時代のトレンドに陶酔する」「高度成長期の投資事情から現在に通じる投資法を学ぶ」などで大局的な視点で投資を考えることはしてきたつもりだ。 やはり、相場は、長期時間軸で見ると「浮き沈みを繰り返しながらゆっくりと長期トレンドに沿って、一定方向に進んでいく」というのは、紛れもない法則に違いない。この領域になると、経済分析ではなく、我々生命のもつ特定の周期論と重なってくるのであろう。今回は、日次、月次、年次の経済情報の相場分析と株式市場のベクトルは長期軸では必ずしも一致していないことを深く痛感させられることになった。 (長期トレンドから見た投資法) 今回の上昇相場の始点を遡ると、やはりアベノミクスが相場の転換点であったのは間違いない。その間には、2016年、2020年と何度かトレンドの転換を思わせる状況下もあったが、それでも長期軸でトレースをすると日経は上値を切り上げてきた。しかし、この流れは、違った視点でみれば、あの奇跡的な上昇をみせた高度成長期と変わるものではない。例として1974年~1975年の新聞を斜め読みしてみれば、経済欄の記事は暗いニュースや経済危機的な論調のオンパレードであり、その数年後に福田内閣は大量に赤字国債を発行して景気を刺激させることでこの流れを食い止めることになる。そんな混沌とした状況の中で10年後にバブル経済が起きるなど誰も想像することすら出来なかった。つまり、1975年の世相や経済記事に流されて、悲観的な投資をしていたら大儲けをすることが出来ず、逆に、悲観的なニュースに惑わされず馬鹿になるくらいに日本の将来を信じて10年程度ほったらかすくらいの投資をした人が大儲け出来た。  とはいえ、この長期トレンドの転換期である1989年から1990年以降になると、楽観的な人が大損を喰らうことになる。そして、アベノミクス以降は、楽観的に日本株を持ち続けていた人が勝ち組に代わる。投資をする場合、長期トレンドとの擦り合わせが非常に大切なことが分かる。 (有名な格言を参考にする)  日経がどこまで上がるかは...

為替レートと政策金利から債券投資を考える

イメージ
  資産運用においてリスク分散は大切で、株式相場が低迷しているとき、元本保証でかつ利息が確約されている債券投資は魅力的に映ってしまう。さらに、外国債券については、金利動向だけでなく為替レートを組み合わせることで,利回りにレバレッジをかけることが出来る。これらを上手に利用すれば、債券でもそれなりの運用ができてしまう。 1.外債投資 1.1 日本国のファンダメンタル等から見た為替レート 為替レートの動向を当てるのはそう単純ではない。一見、円安局面一色にみえても、数年後には円高になっていることも少なくない。逆もしかりである。日本円は、ファンダメンタルの物差しを変えれば、円安にも円高にも振れてしまう要素を持ち合わせている。 ①世界一の債権国と未曾有の金融緩和 日本は世界一の債権国であることを忘れてはいけない。そしてIT分野を除けば世界有数の技術大国でもある。通常なら円高圧力がかかるはずだが、現状においては無視され続けている。 これは、デフレ退治という大義名分でアベノミクスによる未曾有の金融緩和を行った結果であり、ドル円は日本の国力に比べ安すぎる水準で放置されてしまった。さすがに10年近くも放置したことにより、発展途上国並みの物価水準になるなどの副作用がでている。しかし、日銀にとっては、この金融緩和政策終了宣言ことこそ最大の関門で、日銀の国債保有額は、植田日銀総裁になってからも、2023年3月末の576兆円から11月594兆円に増加している。 ②基軸通貨国である米国の強み  日本は世界一の債権国。一方、米国はダントツ世界一の債務国。さらに、米国国債の債務膨張も加速的に進んでいくことが予想されている。これだけなら為替レートは限りなくドル安水準に進んでいくものである。しかし、為替レートの動向はファンダメンタル的な要素だけでなく米国政府の意向も無視できない。米ドルは世界の基軸通貨であり、今のところ世界有数の信用力の高い通貨でもある。そういった強みを生かして、米国当局が、米国経済をより適切な方向に誘導するために為替レートを調整している。為替動向は個々のファンダメンタル以上に米国政府の政治意向が見え隠れしている。 2.インフレ基調の復活 ①米国の政策金利引き上げ 中国が世界のサプライチェーンの重要な役割を担い始めたころから、世界中人々が品質の良い製品を比較的安い値段で手に入れら...

投資家視点での経済・金融政策の向き合い方 

イメージ
1.経済・金融政策の著しい進化 〇この100年の間に株式市場には様々な経済変動(大ショック)があった。古くは1929年の世界大恐慌から、日本のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、そしてコロナ禍危機。米国相場は大恐慌を除けばほぼ右肩上がりに推移してきた。これは米国の政府関係者及び経済学者が、これら発生要因をとことん研究し、大恐慌と同じことが起きないように対策を立てたことに他ならない。 〇一国の経済は国家としての発展期を除けば、「企業の供給>消費者の需要」に収束してデフレ圧力にさらされてしまう。これは株式市場から見ると相場の低迷を意味する。これに対して、中央政府は金融政策や財政政策をすることで消費者の購買意欲や企業の需要意欲を喚起しながら適度なインフレを誘導している。 〇現在では、経済学上で論じられる拡張期―停滞期、もしくは需要と供給間の景気サイクルは、どんな景気停滞に陥りそうになっても、米国の優良企業は毎期のように増収増益を繰り返していることで市場関係者の不安を吹きとばし、自社の株価、さらにはダウ、S&P500指数の底上げし、景気循環サイクルを平坦化させるループを続けている。 〇今の金融技術なら1929年の世界恐慌は、間違いなくちょっとした暴落で済んだであろう。80年代の日本の不動産バブルも今の金融技術を駆使すれば、長期に渡る経済低迷を避けることができて失われた経済にならなかった。リーマン・ショックは、米国政府の世論に押されたゆえの失策であるが、その後のFRB議長の前例のない金融政策によって貨幣の流動性を死守し、さらには需要喚起の点から世界中が協力して大規模財政政策を実施することで大恐慌を回避させた。コロナ禍という未曾有の疫病による世界経済のクラッシュ危惧に対しても、リーマン・ショックを克服したノウハウを応用したことで、欧米諸国の当局はそれを跳ねのけてしまうノウハウすら身につけてしまった。   こうなると、次なる惨事は、必然的に過去の事例に当てはまらないケースに限られてしまう。実際、「第三次世界大戦を思わせるような戦争」、「巨大隕石による地球への壊滅的な打撃」等くらいしか大恐慌を引き起こすトリガーが見当たらなくなっている。 2.経済報道と株式市場の著しい乖離 株式市場は、実際には経済活動で生じる余裕資金(余剰マネー)で成り立っている。これは現場感覚に落とせ...