投稿

金融市場活況は投資家を暇にさせる (後編)

 金融動向に疎くなった理由は、私のように若くない人間にとっては、投資は元本保証を保つことが鉄則であり、少しづつでもよいから確実な利益を獲得していくことにある。 例をあげれば、金融資産5000万の人が、ネットで必ず上がると話題になっている銘柄を購入して、資産額4000万とか3000万まで下がった場合、そのリカバリーは年齢が高くになるにつれて難しくなるということだ。20代なら必死に働くことでなんとかなるが、年を取れば取るほど労働収入でのリカバリが難しいという現実に行き当たる。この最たる例が、定年退職金2000万を投資して、その後の資産額が3000万になればよいが、逆に1000万になったら老後人生に大きなダメージを食らうことになる。 一般に資産配分は、「株式の割合=100-年齢」「債券の割合=年齢」と言われる。年齢に応じて変動リスクのある投資を控えていくというものだ。株主投資についても、ある一定の年齢を過ぎたらテンバガーを狙うのではなく、経済状況に関わらず増配を繰り返し、ゆっくりであったとしても10年から20年の長期手的な視点で見れば、右肩上がりを期待できる銘柄だけに投資するのが適切と考える。  そういった視点では、日本株については中期視点では期待を持てるが長期視点ではどうなるかわからない、ダウは長期的には右肩上がりを続けるとも思っているが円安を解消してからでないと動きにくい。  当分は米国株の増配発表が株主にとっての大きな楽しみに成り果ててしまっている。

金融市場活況は投資家を暇にさせる(前編)

   日経平均が4万円を超えて、ダウも4万円ドル伺い始めている。そして為替レートは 150 円近辺を彷徨っている。  これでは、日本株も米国株も投資できる環境ではなくなった。ちょっとやそっとの暴落でも買値水準に達することができないからである。 ちなみに、私が保有している米国株は、は昨年購入したベライゾンを除き、その為替レートは 100 ~ 110 円のレンジに集中している。  このため、株価動向に関わらず利益を享受している格好である。    最近の金融関係で特筆すべき動きは、日銀が 3 月 20 日に発表したマイナス金利の解除で、これによって、好利回りの商品だと、 0.3% 程度の金利を受益できるようになった。  私にとっても、退避している現金の預け先が増えてきたのはうれしい。    一方、金融市場については、株価が上昇しすぎて投資先の選定すらままならなくなった。ましてや、経済関連ニュースすら読みたいと思う記事が少なくなった。  ふと、この暇はどれだけ続くのかと思ってしまうこの頃です。暇ではあるものの、この先は、 GAFAM の決算動向とトランプが今後発言してくる経済政策についてはウオッチしていきたいと思っている。  

アップル社の今後を考察する。

イメージ
  (膨大なる株主への恩恵) アップルは言わずとしたGAFAMの一員であるビックテック企業であり、かつ世界を代表する優良企業の一つである。株式の時価総額に至っては3兆ドルを超える途方もない規模に膨れ上がった結果、2015年頃に投資家がこの株を保有していたらテンバガー程度の利益を享受したことになる。それだけではない、リーマンショック前に保有していたなら、この株だけで日本円で億に近づくくらいの富を得ることができた計算になり、アップルが投資家に莫大な恩恵をもたらしたことがわかる。   (ティム・クックという稀代の経営者) アップルの社長ティム・クックは非常に優秀な経営者である。アップルは2013年頃にはアイフォンの成熟化懸念から一度沈みかけて普通の企業に戻ると思われたが、ティム・クックの采配で3兆ドル近くの時価総額を築くまでに復活させることに成功した。 スマホの普及率から考えるとアップルの成長余地は限られ続けている。このため、アップルの今後を占うには単純に言えば、ファンダメンタルで判断しても意味がいない。ティム・クックがいつまで現役CEOでいて、経営のマジックをやり続けられるかだ。アップルに問題が起こるとしたら、ティム・クックの次のCEOがどれだけ優秀であるかだ。 (バークシャー・ハザウェイの動向) さらに、この銘柄を考えるにあたってもう一つのポイントはバークシャー・ハザウェイの存在である。ウオーレン・バッフェットは、現在の株価がその銘柄の根源的価値より安い銘柄の投資することをモットーにしており、その投資姿勢は世界中の投資家の見本になっている。  しかし、バークシャー・ハザウェイは、この根源的価値をバークシャー・ハザウェイ側の経営者への圧力によって実現している面も否定できず、その代表例がアップルでもある。バークシャー・ハザウェイはアップルに事業を対する現状打破に向けた圧力、そして10兆円を超える自社株買いをさせるなどをアップルは余儀なくされている。  このため、バークシャー・ハザウェイ、特にウオーレン・バッフェットが現役でいる限りには、アップルはウオーレン・バッフェットの期待に応えるべく、様々な施策を打ち出してくるだろう。しかし、ウオーレン・バッフェットが現役を引退したとき、ティム・クックはウオーレン・バッフェットからの経営圧力から解放された後に懸念が生じる。 (...

不動産投資の損益勘定 

イメージ
不動産投資の損益勘定 (投資手法の研究)  不動産は資産運用の3本柱の一つである。かつては、保有しているだけで資産価値が上昇しひと財産を築けた人も多かったが、昨今の少子高齢化、かつビジネス取引の仮想空間への移行により不動産需要は減少の一途を辿っている。投資家は、不動産市況の表向きな動向如何に惑わされず、この事実に忠実に向き合うべきであろう。 1.アパート経営の有効性  アパートを購入して大家になって、月30万~50万の家賃収入を得る。地主感漂う非常に魅惑的な言葉である。しかし、優良な投資であるかは話が別。少子高齢化の日本ではアパート供給も過剰気味である。借り手は当然だが新築で手頃な家賃の物件に向かう。築年数に応じてアパートの家賃も安くしなければ入居者は集まらず、築30年なら激安にしないと誰も借りてくれない。そんなアパートは郊外にいけばそこら中に転がっている。  そういった状況下でアパート経営する場合、購入時の事業ローンを10年程度に抑え、約10年間の賃貸収入後にアパートを更地にして売却してもトントンになるような投資が理想的である。それが出来れば11年以降は家賃収入=利益となる。当然だが、そんな条件を満たす物件など存在しない。これを達成するには、激安で中古物件を購入し、自力リフォームで商品価値を上げるなどのスキルが必要となる。このようにセミプロ級の事業スキルがなければアパート経営などおぼつかない。 2.住宅用不動産の資産性  高度成長期は数百万で購入した不動産が地価の上昇で売り払う頃には数千万円に化けていたなんて話はいたる所で転がっていた。しかし、21世紀いや80年代バブル以降は、マンションを購入しても売却時の価格は半値程度ということも珍しくはない。これを人生の損得勘定でみると、4000万円の物件を35年ローンで購入した場合、ローン完済までの金利分を含め5000万~6000万円近い支払いをすることになる。維持管理を加えたら1000万円分が加算される。一方、ローンを払い終える頃の物件価値は、手入れが行き届いても1500~2000万円がやっと。約4000~5000万円が消えてしまうことになる。この差額は、生涯に渡って住み続けるための仮想的な家賃でしかなく、都心の一部の物件を除けば持ち家の資産性なんてそんな程度でしかない。 一般に 平均年収の人なら3000万円、エリート会社...

相次ぐ強気報道が相場に示唆するもの

 (バブル高値越えに伴う報道姿勢の変化~日経記事タイトルから~) 〇日米株式市場、相次ぐ強気見通し 景気・企業業績を楽観 日米株式市場で相場が一段高になるとの観測が広がる。主要な株価指数は先週、過去最高値を更新した。米経済が底堅さを維持し、企業業績が上向くとの見方がある。国内も、賃上げの実現が内需を支えるとの期待が出ている。 〇株最高値、今回はバブルにあらず 89年と違う企業と個人 日経平均株価が22日、1989年に付けた過去最高値の3万8915円を上回った。過熱感を心配する声もあるが、89年当時と今を比べると、あらゆる状況が違っており、今の株高は実績に裏付けられた、堅実な上昇だ。日経平均の過去最高値到達は、まだまだ通過点とみていい。 〇株価の「砂漠」業績で突破 来期は増益企業8割に拡大 年初から高騰に沸く日本株。22日の日経平均株価の終値は前日比で2%高い3万9098円と、1989年につけた史上最高値(3万8915円)を上回った。 日本株買いの手掛かりの1つが、経済再開や値上げの浸透、円安を追い風にした好調な企業業績だ。トヨタ自動車や任天堂などは2024年3月期通期の業績予想を上方修正し、今年に入って上場来高値を更新した。 〇上場企業の純利益、34年で7倍 ROEは米欧に見劣り 日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新した。日本の主要企業の純利益はバブル経済時の1989年から約7倍に拡大。海外で稼ぐグローバル企業の成長が原動力となった。自己資本利益率(ROE)をみてみると、借入金に偏った資金調達も見直され、製品やサービスの付加価値を高め収益を伸ばす経営が根付いてきたことが分かった。 (記事の論調変化) 記事の論調については、上記の通り、バブル高値を超えてから日本経済に対してポジティブな報道が多くなった。ここ数か月でまるで手のひらを返したようだ。日本経済や企業動向に大きな変化があったわけではない。単に日経平均がバブル期の目安である38915円を超えただけに過ぎない。とはいえ、報道姿勢の変化で世の中の雰囲気が変ってくるのだから面白いものである。 実際、バブル後30年間でこれだけ強気な報道をしたのはほとんどなかった。そういった意味では2024年は日本経済又は日経相場が新領域に突入したとも言えなくもない。 とはいえ、歴史を振り返れば強気相場の常套文句は、「今回の...

総合商社の銘柄分析 

イメージ
    総合商社は、戦前・戦後と続く日本を代表する企業である。他名門企業の多くがバブル以降に脱落し斜陽になりかけているのを尻目に、今もって王者の地位を守り続けている数少ない名門企業群である。そして総合商社は、かつての仲介業から新規ビジネス領域に果敢に挑戦するベンチャースピリットを兼ね備えた投資会社に変貌した。企業の経営リソースを最大限に発揮させるためにも、総合商社は世界を股にかけたビジネスイメージと日本最高峰の給与水準を流布することで、日本屈指の優秀な人材の確保に余念がない。 〇日本経済を背負ったコングロマリット  そういったイメージと裏腹に、旧態依然のような偏向的な大学閥の社員採用。そして日本株式会社の激務、熾烈な社内政治。どう見ても、旧態依然とした日本特有のエリート体質の染みついた社風でもある。総合商社は、10近くのカンパニーを抱える超コングロマリットである。これらカンパニーのほとんどは戦前の財閥の流れを汲んだまさに日本国の番頭のような事業であり、各々のカンパニーがそれなりの利益をはじき出せているが、逆の視点で見れば殆どの事業は成熟している。このため、株式市場は、総合商社に対して、成熟した日本経済の番頭かつ成長余地のない巨大なビジネス領域を理由に低PERの評価を与え続けている。 〇資源ビジネスにしか頼れない三菱商事、三井物産 一般に、一つのビジネスを会社の基幹事業までに成長させることは至難の業である。餅屋は餅屋を脱却できない。 ここ20年程度は、資源高に支えられて総合商社は未曽有の利益をはじき出した。これを一本足打法のように危険視する見方もあるが事業の規模を考慮すれば致し方ない、逆に、投資対象として妙味が十分にあることを物語っている。鉄・銅・石炭・石油・天然ガスなどはその需要が上がることはあっても下がることはない。需要の波があるかもしれないが、資源市況如何で大儲けできるビジネスを持っていることは相当な強みと言える。 総合商社の場合は、事業規模が大きいので、コンビニやファッションブランドなどの成功においても、それら事業だけでなく、やはりそれらの原材料や物流を牛耳ることに旨味が生じる。これら時代とともに人の趣向が変化してビジネスモデルが衰退化するが、総合商社はそうなれば次のトレンドに移行し、物資を提供し続ける、実際のところ、大なり小なり総合商社の強みは商品の...

投資家から見た日経平均のバブル越えについて

イメージ
     私自身、日経平均がバブル最高値近くに上昇するなど予想だにしなかった。この反省点として、自分自身が物知り顔してエコノミストを真似るように日々の経済情報を分析して、見当違いの仮説を立てていたことに他ならない。とはいうものの「最も危険なことは、時代のトレンドに陶酔する」「高度成長期の投資事情から現在に通じる投資法を学ぶ」などで大局的な視点で投資を考えることはしてきたつもりだ。 やはり、相場は、長期時間軸で見ると「浮き沈みを繰り返しながらゆっくりと長期トレンドに沿って、一定方向に進んでいく」というのは、紛れもない法則に違いない。この領域になると、経済分析ではなく、我々生命のもつ特定の周期論と重なってくるのであろう。今回は、日次、月次、年次の経済情報の相場分析と株式市場のベクトルは長期軸では必ずしも一致していないことを深く痛感させられることになった。 (長期トレンドから見た投資法) 今回の上昇相場の始点を遡ると、やはりアベノミクスが相場の転換点であったのは間違いない。その間には、2016年、2020年と何度かトレンドの転換を思わせる状況下もあったが、それでも長期軸でトレースをすると日経は上値を切り上げてきた。しかし、この流れは、違った視点でみれば、あの奇跡的な上昇をみせた高度成長期と変わるものではない。例として1974年~1975年の新聞を斜め読みしてみれば、経済欄の記事は暗いニュースや経済危機的な論調のオンパレードであり、その数年後に福田内閣は大量に赤字国債を発行して景気を刺激させることでこの流れを食い止めることになる。そんな混沌とした状況の中で10年後にバブル経済が起きるなど誰も想像することすら出来なかった。つまり、1975年の世相や経済記事に流されて、悲観的な投資をしていたら大儲けをすることが出来ず、逆に、悲観的なニュースに惑わされず馬鹿になるくらいに日本の将来を信じて10年程度ほったらかすくらいの投資をした人が大儲け出来た。  とはいえ、この長期トレンドの転換期である1989年から1990年以降になると、楽観的な人が大損を喰らうことになる。そして、アベノミクス以降は、楽観的に日本株を持ち続けていた人が勝ち組に代わる。投資をする場合、長期トレンドとの擦り合わせが非常に大切なことが分かる。 (有名な格言を参考にする)  日経がどこまで上がるかは...

為替レートと政策金利から債券投資を考える

イメージ
  資産運用においてリスク分散は大切で、株式相場が低迷しているとき、元本保証でかつ利息が確約されている債券投資は魅力的に映ってしまう。さらに、外国債券については、金利動向だけでなく為替レートを組み合わせることで,利回りにレバレッジをかけることが出来る。これらを上手に利用すれば、債券でもそれなりの運用ができてしまう。 1.外債投資 1.1 日本国のファンダメンタル等から見た為替レート 為替レートの動向を当てるのはそう単純ではない。一見、円安局面一色にみえても、数年後には円高になっていることも少なくない。逆もしかりである。日本円は、ファンダメンタルの物差しを変えれば、円安にも円高にも振れてしまう要素を持ち合わせている。 ①世界一の債権国と未曾有の金融緩和 日本は世界一の債権国であることを忘れてはいけない。そしてIT分野を除けば世界有数の技術大国でもある。通常なら円高圧力がかかるはずだが、現状においては無視され続けている。 これは、デフレ退治という大義名分でアベノミクスによる未曾有の金融緩和を行った結果であり、ドル円は日本の国力に比べ安すぎる水準で放置されてしまった。さすがに10年近くも放置したことにより、発展途上国並みの物価水準になるなどの副作用がでている。しかし、日銀にとっては、この金融緩和政策終了宣言ことこそ最大の関門で、日銀の国債保有額は、植田日銀総裁になってからも、2023年3月末の576兆円から11月594兆円に増加している。 ②基軸通貨国である米国の強み  日本は世界一の債権国。一方、米国はダントツ世界一の債務国。さらに、米国国債の債務膨張も加速的に進んでいくことが予想されている。これだけなら為替レートは限りなくドル安水準に進んでいくものである。しかし、為替レートの動向はファンダメンタル的な要素だけでなく米国政府の意向も無視できない。米ドルは世界の基軸通貨であり、今のところ世界有数の信用力の高い通貨でもある。そういった強みを生かして、米国当局が、米国経済をより適切な方向に誘導するために為替レートを調整している。為替動向は個々のファンダメンタル以上に米国政府の政治意向が見え隠れしている。 2.インフレ基調の復活 ①米国の政策金利引き上げ 中国が世界のサプライチェーンの重要な役割を担い始めたころから、世界中人々が品質の良い製品を比較的安い値段で手に入れら...

投資家視点での経済・金融政策の向き合い方 

イメージ
1.経済・金融政策の著しい進化 〇この100年の間に株式市場には様々な経済変動(大ショック)があった。古くは1929年の世界大恐慌から、日本のバブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、そしてコロナ禍危機。米国相場は大恐慌を除けばほぼ右肩上がりに推移してきた。これは米国の政府関係者及び経済学者が、これら発生要因をとことん研究し、大恐慌と同じことが起きないように対策を立てたことに他ならない。 〇一国の経済は国家としての発展期を除けば、「企業の供給>消費者の需要」に収束してデフレ圧力にさらされてしまう。これは株式市場から見ると相場の低迷を意味する。これに対して、中央政府は金融政策や財政政策をすることで消費者の購買意欲や企業の需要意欲を喚起しながら適度なインフレを誘導している。 〇現在では、経済学上で論じられる拡張期―停滞期、もしくは需要と供給間の景気サイクルは、どんな景気停滞に陥りそうになっても、米国の優良企業は毎期のように増収増益を繰り返していることで市場関係者の不安を吹きとばし、自社の株価、さらにはダウ、S&P500指数の底上げし、景気循環サイクルを平坦化させるループを続けている。 〇今の金融技術なら1929年の世界恐慌は、間違いなくちょっとした暴落で済んだであろう。80年代の日本の不動産バブルも今の金融技術を駆使すれば、長期に渡る経済低迷を避けることができて失われた経済にならなかった。リーマン・ショックは、米国政府の世論に押されたゆえの失策であるが、その後のFRB議長の前例のない金融政策によって貨幣の流動性を死守し、さらには需要喚起の点から世界中が協力して大規模財政政策を実施することで大恐慌を回避させた。コロナ禍という未曾有の疫病による世界経済のクラッシュ危惧に対しても、リーマン・ショックを克服したノウハウを応用したことで、欧米諸国の当局はそれを跳ねのけてしまうノウハウすら身につけてしまった。   こうなると、次なる惨事は、必然的に過去の事例に当てはまらないケースに限られてしまう。実際、「第三次世界大戦を思わせるような戦争」、「巨大隕石による地球への壊滅的な打撃」等くらいしか大恐慌を引き起こすトリガーが見当たらなくなっている。 2.経済報道と株式市場の著しい乖離 株式市場は、実際には経済活動で生じる余裕資金(余剰マネー)で成り立っている。これは現場感覚に落とせ...

投資家にとって「最も危険なことは、時代のトレンドに陶酔する」事

イメージ
  1.必衰の理  投資家に限ったことではないが、私達はその時代の持つ雰囲気に飲み込まれ、それが永遠に続くような錯覚に陥ってしまう。しかし、そのほとんどは10年後には全くのまやかしであったことに気が付く。それだけでなく、その時代に最高のトレンドを謳歌した人たちは、その後に目を覆うばかりの衰退や禍根を経験する。  物事は常にある方向に向かって変化し、それがピークに達するまでに続く。しかし、流行はピーク時ではなく、ピークを過ぎて少し下降気味になった頃に盛り上がることが多い。そのため、極端な例だと流行した翌年には見事に流行が廃れてしまうケースも少なくない。そこには「盛者必衰の理」の如く、世の中の儚さが渦巻いている。 2.土から生まれ土に帰る  投資に関する流行を追い求める愚かさの実証として、バブル時代に焦点を当てながら、以下の3例を挙げてみる。 ①株式投資(日本の重厚長大系)  バブル期には、日本を代表する会社群である新日鉄、三菱重工、日本製紙(本州製紙)、三菱化学、みずほ銀行(日本興業銀行、第一勧銀、富士銀行)、シャープ、三洋電機、東洋紡、沖電気などの株価は全て4ケタ台を記録した。その当時は、ジャパンアズナンバーワンとしてこれら企業群がその後に斜陽になることなど誰もが想定することはなく、日本の未来はバブル期以上に輝いているものであると信じていた。しかしながら、これら銘柄の株価は30年を経過した現在においてもバブル最高値に遠く及ばないだけでなく、数分の一程度の株価で一進一退すらなっている。増配株の優等生であるNTTですら最盛期の数分の一の株価に留まっている。 この当時、製造大国、又は電子立国日本という風潮に浮かれて日本株式会社を購入した投資家のほとんどは大損する羽目になってしまった。 ② リゾートマンション投資  「リゾートマンション投資」は、どちらかというと大企業幹部などの社会的ステータスの高い中流層が中心になって、都心に住宅を持ちながらも別荘用としてリゾートマンションを購入することがステータスとなり流行となった。当然であるが10年後にはこれら不動産は2倍近くに値上がりすることを期待していて、まるで小貴族を体現するかのような行動をとっていた。まさに陶酔の極みである。それが30年後には無価値に近い暴落をしたことで、甚大な損害を被ることになる。  例えば、リゾー...

2023年の投資を振り返って (運用状況)

イメージ
  今年取引したのは、ベライゾンを 32 ドルで購入しただけである。購入理由は、配当貴族の獲得。購入ベースの利回りは、 8.3% でかつ、これ以降の増配も見込める。 購入時は、為替レート変動による利益の目減りを防ぐため、外貨 MMF からスイッチング。  当然だが、ベライゾンに対して 100 ドルなどの大幅な上昇など期待していない。でもある程度であるが株価値上がりは期待できる。  私自身としては、非常に安定した投資だと思っている。   昨年は、同様の例として、インテル、3Mなどが売られ過ぎたが、インテルは配当貴族でないのでパス。3Mは競争が激しい化学メーカーであること。売上や収益がここ5年で伸び悩み配当性向が切迫していることからパスした。 その点、 AT&T とベライゾンは川下のソフトウエア企業買収で規模拡大を狙ったが失敗し、 AT&T に至っては、株主に多大な損害を与えてしまった。とはいえ、 AT&T 、ベライゾンの通信事業はほぼ独占状態。株価の大幅な上昇は見込めないが、安定配当は期待できる。    高配当株なら相場から離れても四半期ごとに自動で配当金が振り込まれる。しかし、株価上昇の期待はできない。のだから買い時が必要になる。私はアルトリアを55ドルで購入した。これは明らかに購入タイミングの失敗であった。程よく待って40ドル近辺で購入するくらい相場環境を待つ必要があった。  そう考えれば、間違いなく「待つことも相場、いや投資である。」    キャピタルゲインを狙うなら成長株であり、調べれば調べるほど、 GAFAM の強さを痛感させられる。しかし、実のところこれら企業の収益は広告とクラウド。意外と大したことはない。このため、これら収益が天井圏にくるまえに CHATGDP などで花火をあけて、未来の収益の柱として次なる覇権を狙っているのが感じ取れる。しかし、配当が少ないので投資に躊躇してしまう。    24年に対し相場の予想など一切考えるつもりはない。あるのは、明らかに売られすぎの局面を迎えた時に機動的に購入できる準備だけはしておきたい。   当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサイトに掲載された情報によりな...

富裕層(億以上の資産)になってかつ意識系を低くできればこの世界は桃源郷に代わる。

  〇生活水準とストレスの逆相関  私たちの生活は年を追うごとに便利になって、結果として10年前、20年前より生活の水準が上昇している。しかし、その一方で日常生活の満足度は年を追って低下する逆比例を起こしている。これは、物事が 便利になるにつれ、競争社会が国民全体に行き渡り、国民全体が常に相対的な地位や他人との優劣を強いられ、国民全体でストレスためるようになったからである。。 〇理想的な社会の実現 もっとも理想的なのは、ガソリンスタンドやコンビニのアルバイト程度でもしっかりと子育てが出来るなどローワーな中流が実現できる社会だ。それは米国の50年代グラフティの情景に通じるものがある。そういった社会なら、人々は安心して暮らせるだけでなく、子供への過剰な教育も必要なくなる。意識系の高さへの傾斜も一部の人たちに限られる。これを実現するのは難しいが、こういった生活の根底にある生きる事への意識を低さ、気楽に生きられる社会の実現こそが今の時代に必要なことである。だからこそ、多くの日本人が多くの人が意識系を低くして生活している東南アジアに疲れた心の浄化を求めるのであろう。 〇億の資産を保有しながら意識系を低くすれば桃源郷の現れる  逆説的になるが、日本ほど平等な国はない。世界は、日本人が驚くほどの格差社会である。日本より貧しい国ほど、貧富の差は大きく、富める者は日本人が到底届くことが出来ないほどの贅沢な暮らしをしている。西欧人でさえも、高い税収で大した手取りがあるわけではない。日本と比べ物にならないほどの質素な暮らしをしている。その反面、余暇を大切にして、強い外貨を武器に長期のバカンスを楽しんでいる。イタリア、フランス、ドイツなどのブルーワーカーのように仕事を割り切って人生を楽しむ姿勢。それでも社会で生活する一定の権利だけは確保しようとデモなどで政府に抗議し、生きるための分厚い社会保障を確保している。 そういった観点から日本を見つめなおすと、それなりに良い暮らしをしていて、社会保障だって充実している。しかし、日本人には目に見えない同調圧力という監視社会のような生き苦しさに縛られている。その心の縛りを切り破るくらいの蓄財が必要になる。普通の人では努力次第で達成できるような額ではない。しかし、それだけの蓄財し、プライドを捨てえ意識系を低くすれば、本当の桃源郷に入り込めるのかもし...

EV車業界のモータもいずれニデックがシェアを握ることになる

イメージ
   私の銘柄調査の一つとして経営者のインタビュー記事の探索がある。経営者の言葉の中には、経営に対する手腕とポリシーが散りばめられており、これと決算推移を重ね合わせたら会社の実像がはっきりと映し出されてくる。そして、今後の業績推移さえ推測できるようになる。 ニデック永守会長は 1973 年に日本電産を創業し売上高1兆円を超える大企業に育てた優れた創業経営者の一人である。ここでは日経BPのインタビュー記事から、永守会長が考える EV 自動車産業の企業戦略を抜き出し、ニデック株式会社の今後について考えてみることにした。 〇 EV 時代の到来 自動車産業は 100 年に 1 度の技術革新に直面している。もう EV 車の時代が来るということは、はっきりしている。今、米テスラが先を走っているが、従来の完成車メーカーと何が違うかと言うと、化石燃料の車を造ったことがない。完成車メーカーはまだエンジン車で稼いで EV 車で利益があるところはない。全部赤字。要するにテスラはエンジンというレガシーがないので身が軽い。さらに小型車は儲からないから高級車ばかりに力を入れて利益を稼いでいる。しかし、テスラのような高級車路線ではいずれ限界にぶち当たるだろう。 EV 車が隆盛を極める頃には、安い車を造るメーカーが台頭してくると踏んでいる。 〇 EV 車産業の今後 今までいろいろな事業分野で部品を販売してきたが、サプライヤーも競争相手も、お客さんも全部大赤字なんていう業界はなかった。 EV 車業界はそれでも値段を下げ続けて、中国では 300 社ぐらいが参入し 200 社ぐらいが潰れている。製造コストと販売コストが全く釣り合っておらず健全な競争にはなっていない。とはいえ、基本的には値段を安くすることが今後の EV 車普及のカギとなる。実際、電池の値段は年々下がっている。初期の携帯電話は肩からかけて電池が大きかったが、現在では技術革新によってこれほど小さくなった。すぐにとはいかないが、全固体電池とか新しい技術が出ているので電池は進化していく。またモーター効率もどんどん向上することで電池の使用量を少なくさせる。製造コストが大幅に下がったら、モーターなどの部品を買ってきて誰でもすぐに EV 車を造れる時代がやってくる。 〇ガソリン車の今後 プラグインハイブリッド( PHV ...

日本に漂う閉塞感の正体

イメージ
  これは私自身の勝手な思い込みなのかもしれないが、日本中に言いようのない閉塞感が漂っているような気がしてならない。それは年を追うごとに強くなっているようでもある。  人は無意識に以心伝心で相手の心と通信しているものだ。そのため、言葉を交わさなくても周りの人たちの不安な気持ちは空気感として伝わってくるものだ。 1. 経済は先進国 労働環境は後進国以下 コロナ禍によって、世界中でテレワークが拡がり在宅ワークが一般的になり始めたが、最近の通勤ラッシュ状況を見ている限り日本人の勤勉さは筋金入りであることを改めて感じさせら、この国がかつては世界一の経済大国になりかけた先進国民の姿なのかと疑いたくなる。帰りの電車でも、神奈川、埼玉、千葉の郊外に向かう電車に乗るサラリーマンの哀愁漂う姿。特に、夜8時から10時に乗る列車内は、夜も遅いのに電車は込み合っている。そこには、仕事疲れというよりは35年ローンや子供教育費の重圧に耐えながら、ストレスを抱えながら仕事にしがみ付こうとするサラリーマンの切ない哀愁が充満している。 とかく日本では、「周辺の空気を読む」こと、「同調圧力に従う」ことを美徳とする人が少なくない。その弊害からか有給休暇ですら人事評価に悪影響を与えるのではと心配し消化をためらっている。これでは、日本におけるワークライフバランスは、絵に描いた餅だ。

21世紀中盤のテンバガー産業を占う

イメージ
  21世紀中盤に成長が見込める産業は、脱炭素、AI・ロボット、電子マネー、そして医療の4分野が想定される。脱炭素を除くそれぞれの産業について今後の動向について考えてみた。 1.AI・ロボット ①AI関連  AI関連は幅広い産業分野への波及が期待され、GAFAMが引率しながらバブルを起こすことが予想される。というより、今時点でもバブルがスタートしているといっても良い。そして次のステップとして、ビジネス分野でどのように展開されるかであり、具体的には、AIによって第三の社員が誕生する事でのホワイトカラーの仕事の代替。例として、各種資料作成や様々なデータ分析、企画書の作成。AIによる管理職(社員査定や業務指示)、AIが担う総務・会計などのバックオフィス部門、AIが担うお客様相談室(コールセンター)、AIが担う経営戦略室など、様々な職種でAIが活躍するようになる。これら基礎技術はGAFAMを中心にスタートしていくが、IT情報ソリューション事業会社のSEが事業会社ごとに開発するアプリケーションに組み込むようになればIBM、NTTデータ通信などがその恩恵に預かることになる。 ②ロボット関連  中国の一人当たりのGDPが1万ドルを超えた現在、中国に代わる製造拠点は、インド、インドネシアなど残り少なくなった。さらに、長期的な視点で見れば出生率の低下が世界中で顕著になり、安いコストで品質の良い製品を作る人材が不足する傾向にある。ロボットは、これを代替する役割を担っており、そういった意味では、産業用ロボットは間違いないなくこれからの製造業に欠かせないものになる。さらにこれら技術と連携するようにネットワーク業界において6G、76Gなとの通信技術の普及が促進されてくるであろう。  次のステップとして日常生活で活躍するロボットも視野に入ってくる。これらは、それぞれのロボット(ハードウエア)にロボット用独自AIを搭載することになるが、それをどれだけ安価な価格で市場に提供できるかがカギになる。このAI技術の覇権を握りそうなのは、現時点ではGAFAM、テスラである。当局の規制はなければ、これら企業が有力なロボット技術を保有する企業を買収し。独占的なシェアを確保する可能性が高い。しかし、当局が規制をすれば、GAFAMはその事業部を切り離してロボット産業を独自に発展させるであろう。また、その間...

ファイザー 株価低迷からの脱却は期待できるのか?

イメージ
 1.ファイザーの低迷  ファイザーは、コロナ禍で最も活躍した企業である。コロナワクチンのおかげで売上高は2倍以上に膨れ上がるなど空前の享受を被ることになった。普通なら株価はこの流れに沿って爆騰するものだが、コロナ禍前の30ドル台半ばから60ドル弱まで上昇したに過ぎず、さらに配当も1セント増配に抑えるなど株主にとっては満足いく結果ではなかった。これの示すところは、投資家はファイザーのコロナ禍以降の業績に対しそれほど期待をしていない。実際、コロナ禍が沈静化した23年秋には、株価が30ドル近辺までに低迷する始末である。 2.ファイザーCEO:アルバート・ブーラによる事業構造改革  コロナ禍前のファイザーは、主要な医薬品の多くが特許切れを迎えていた。このため有力なパイプライン発掘が責務となっていたが、思うようにことは進んでいなかった。それに呼応するかのように企業の売上高は横ばいを推移し、特許切れに伴う利益率の低下から配当性向が100%近くにまで上昇し、投資家からは減配すら懸念されていた。そういった状況下で就任したアルバート・ブーラは、利益の見込めない大衆薬をグラクソ・クライン。そして特許切れの医薬事業部をマイランと統合させた。こういった事業分離により、ファイザーは革新的な新薬開発・販売に会社の資源(リソース)を集中させていった。しかし、この政策は、主力製品がおぼつかない中でいたずらに売上高を減らしてしまうだけだと判断され、株主からは賛同を得られなかった。さらにダウ30リストからも外されてしまい、製薬メーカーとしては後塵を拝するかに見えたが、そこに神風が吹くことになる。それがコロナ禍だ。 3.決算及び財務内容の推移  ファイザーは、convid-19の予防ワクチンをいち早く提供することによって、2021年~2022年にわたり莫大な売上と利益を計上する。それによって得られた莫大な資金を株主還元に振り向けずに、アルバート・ブーラの目標とする革新的な新薬販売の源である新パイプラインの拡充に充てた。実際、米グローバル・ブラッド社を54億ドル、英バイオヘイブン社を116億ドル、米アリーナ社を67億ドルと矢継ぎ早に買収し、極めつけは、がん治療薬のシージェンを430億ドルで買収する方向で動いている。さらに自前開発パイプラインのいくつかが芽を出し始めた。これにより、ファイザーはコロ...

アメリカは世界経済におけるブラックホール

イメージ
 〇世界経済のからくり  世界経済は、米国、広義でいえば欧米に都合の良いように誘導されている。欧米諸国は、自国の経済に貢献できるように時代のトレンドを誘導している。新興諸国の著しい発展も、実は欧米諸国の手のひらで展開されているに過ぎず、欧米諸国が低迷している時の調整弁にすぎない。何故なら新興国で製造される主力製品の消費者は欧米諸国であり、欧米人がより自分たちの生活を快適にするために提供されているに過ぎないからだ。そして、これら新興国が欧米に対抗するまでに発展していけないように産業構造を設計しているというオチさえついている。 さらに、西欧諸国は通貨レベルを高く設定することで国富は維持され、新興諸国がどんなに発展しても容易に近づけないようにしている。このため、西欧諸国が深刻な不況で国民の生活が困窮しても、これら西欧諸国の低所得層は新興諸国の中流層以上の富を保有していることになる。それが発展途上国から見た西欧人が自分たちよりワンランク以上も上の国家であるというプロパガンダイメージを描いてしまう礎になっている。 〇アップル製品などに見る欧米経済の実態 まさにこの構図の代表的な例がアップルだ。彼らの製品は中国などで安く製造した後にアップルのブランドをスタンプして世界中で高く売りさばいている。欧米諸国はこのようにブランドを牛耳って破格の利益を吸い取っている。しかし、発展途上国がその反対の構図を作るのは構造上難しいと言わざるを得ない。例として、インドにアップルのようなハイブランドの会社が誕生することができるのか。それは不可能だ。人々が洗練されたセンスのある製品やブランドを構築するためには、欧米諸国で長期間にわたって技術力の習得や商品センスを磨く修行をする必要があるからだ。そういったスキルを自国に持ち込んで欧米を凌駕する製品を販売しても、欧米諸国はルール変更というべき、次のトレンドに移行させることで。既存のブランドを陳腐化させる。そして、新しいトレンド技術を他国ライバル企業に対しシャットアウトすることで、次のトレンドの優先的な立場を独占することになる。 〇アメリカンドリームという魔法  そういった欧米主体の経済構造を後押しするのがアメリカンドリームである。米国政府は、才能が有りながらも自国で活躍できない人に一角千金と名声というアメリカンドリームを提供し、彼らに活躍の場を与え...

株式市場の時価総額から見える今後の米国相場の動向

初版  2022.03.05  改版   2022.12.21 (旧名:時価総額飽和状態に陥っている世界中の株式市場) 〇時価総額とGDPの国別ランキング ここで世界銀行が発表した国別の時価総額 (2021 年)を参照すると 1.米国   40 兆ドル 2.中国  12 兆ドル 3.日本   6.7 兆ドル 4.香港     6.1 兆ドル  5.カナダ    2.6 兆ドル 6.インド    2.5 兆ドル 一方、 GDP の世界ランキング (2022 年)は、 1.米国   25 兆ドル 2.中国  19 兆ドル 3.日本  4.9 兆ドル 4.ドイツ   4.3 兆ドル  5.インド   3.5 兆ドル 6.イギリス   3.4 兆ドル となっている。 ・米国株式市場の時価総額の GDP 比は、 2012 年 100% 、 2019 年 150% 。そして 2021 年 200% 近辺で推移している。ここ 30 年程度は、巨大多国籍 IT 企業(マイクロソフト、インテル、 GAFA 等)が引率して 100% 超えを常態化させているが、今後 10 年間に米国の株式市場の時価総額が2倍になれば単純計算で 80 兆ドル。 1.5 倍でも 60 兆ドルに膨れ上がる。しかし、 GDP が株の時価総額上昇に追いつくために年率 5% 成長を維持するとは到底考えられない。これ以上の時価総額膨張は GDP との乖離を大きくするだけである。そもそも株式市場の時価総額は GDP 比で 100% を超えると危険水域と見なされてきた。それでも、様々な要素から 200% の水準を肯定できたとしても 300% 近くまで乖離するのは現実的な値ではない。逆に、今後は膨れすぎた時価総額という風船に対して実経済への乖離を縮小する方向に向かうと考えるほうがが妥当であろう。 ・成長著しい中国も時価総額という点では、上海や香港(ハンセン)指数を合算すれば 100% 近辺に到達しており、中国経済の発展を株式市場は相当において織り込んでいる。実経済においても、 21 世紀前半に世界経済を支えてきた中国経済に偏重が出てきた。中国経済の国富は世界の工場で築かれたものではなく、驚くほどに上昇した...

隣の芝生に振り回されずに好きなことを極めよう 

イメージ
  初版 2023.3.11 (旧名:隣の芝生に振り回されない生き方こそ最良の生き方) 1.隣の芝生に惑わされない 人はなぜか、隣の芝生が青く見えるようである。どうもこれは人間の本能のようです、人は常にどこかで桃源郷があると信じて疑わない。だから他人に対して勝手というべき様々な妄想を抱いて喜怒哀楽を繰り返している。ドラマや週刊誌、映画,そしてインフルエンサーに出てくるような装飾され、誇張されたカッコ良い生活をしている人が常にどこかにいると信じて疑わず、そういった人たちへの憧れや羨望を抱こうとするように出来ている。        2.隣の芝生の幻想例  ①政治家  政治家は社会的な上位の階級に属する代表的な職業だ。こんなことをいうと語弊があるかもしれないが、今の政治家ははっきりいえば苦労の割には見返りが少ない。一昔前なら、貴族の位を得られ、豪邸に住み様々な利権から得る膨大な収入得ることができたが、今では億ションにすら住めない、逆に豪華な生活をしていると賄賂を疑われお縄!となってしまう。仕事面では、4方から様々な意見を集約し意見調整を図りながら一つの指針を作り上げるという相当な労力と精神的な負荷を伴っている。正直、政治家という職業が好きでないとやってられない。 ②旧来型のエリート 大企業社員、医者、官僚などエリート職業も年々旨みがなくなっている。一昔前まではエリートとして大企業に入れば、それなりに出世し、それなりの報酬も得て、さらには子会社で役員級の役職に就いて定年退社する。今はそんなことはない。世間的にはそれなりに高収入を維持しているが、高給の分だけ税金は多く引かれ、手取りだとちょっと散財すればすぐに消えてしまう程度で、子供関係の教育費、旅行、社内交際費(飲み代等)、費用効果のない住居用不動産購入etc。で給料を使い果たしていまう。都心のタワーマンションな到底おぼつかないほど、学歴エリートは資産を残せていない。 ③セレブと言われる成功者  セレブと言われる超高所得者(芸能人やスポーツ選手、ベンチャー企業の創業者、外資系金融や大手弁護士事務所の幹部等)が該当し、私たちは、雑誌やテレビで芸能人やスポーツ選手などのセレブな生活や豪邸報道に対し、私達は羨望のまなざしとなる。しかし、そこには成功者ならではの魑魅魍魎とした見栄の世界...

高度成長期の投資事情から現在に通じる投資法を学ぶ

  〇日本の青春時代。  高度成長期は日本が一番輝いていた時代である。戦後の焼け野原から世界一の技術大国になるまでの奇跡的な成長を成し遂げた時代であり、年を追うにつれて人々の生活水準は向上していった。株価も驚くほどの上昇をし、ほぼ一貫して上昇基調を貫いた。日本がここまで飛躍できた背景には、東西冷戦期に日本が西側の重要な同盟国としての太平洋側の拠点となったこと。米国の軍事的な庇護下で国力を経済成長に注ぎ込めたこと。さらに、主要な産業及び企業は政府の護送船団方式によって外資の参入を拒みながら開発力を付けていったことなどが要因になる。  このようにして、日本は世界有数の技術大国にまで伸し上がって、やがては米国を凌ぐまでに成長した。さすがに米国も危機感を感じて、日本を経済面でのライバルと見做し、日本政府が敷いた自国の企業に優位な法規制を次々と撤廃させ産業の自由化させていった。それがバブル以降の不景気と時期が重なりあって、自由化に対応できなかった主要企業の低迷や衰退につながっていくことになる。 〇誰がこの大暴騰の利益を享受したのか 高度成長期時代、日本株は149円から38915円まで上昇した。しかし、これだけの大暴騰にも関わらず、この恩恵を授かって大金持ちになったという話はあまり聞かない。もし、多くの人が莫大な利益を享受していたら、書店にはそれに関する多くの本が並んでいるでしょう。 逆に、その当時の本を見ていると、株式投資はうさん臭く、仕手筋などの安易な投資情報を鵜呑みにして損したという話が多い。実際、戦後の超名門企業である製鉄、旧財閥系企業、重工業になどに長期投資しても大した投資リターンを得られたわけでもない。ましてや繊維、商船などに投資したら日経の上昇と反比例するような惨憺たる結果になった。さらに、誰でも儲けられるだろうインデックス系ETFなどの商品はこの時代にはなかった。つまり、大暴騰の利益は一部の有能な投資家だけが享受していたことになる。 〇高度成長期に日経指数に大きく貢献した銘柄 その当時の新興成長銘柄はパナソニック、トヨタ自動車、ソニーなどであった。これら企業はその当時においては、近未来に向けた最先端のハイテク企業であった。 このように見ていくと、10年後に活躍が期待でき、長期的には収益、財務内容の良い成長銘柄だけが株式指数で重要な位置を占める構図は、今の...

10年後、世界における日本の国際競争力を検証(相場(国別)の予測分析)

  〇IT産業における発展途上国の追い上げ IT産業の発展により米国は米国一極集中の体制を構築することに成功した。そもそもIT産業は、従来型の既得権益を有した重厚長大産業から派生して発展したのではなく、ベンチャースピリット溢れるNASDAQ市場によって、その存在を大きくしたのである。 IT産業分野は、重厚長大と違い多額の資本を必要としないことから、こういった1国内だけの既得権益にはとどまらず、先進国と発展途上国間の産業発展構造までぶち壊したとも言えなくもない。つまり、IT産業においては、旧来型の先進国と発展途上国の区割りはなんの役にも立たず、同一の線上でビジネスを行われなければならなくなった。 このため、東アジア、及び東南アジアを中心にIT分野の発展が著ししシンガポール、韓国、台湾、中国国などは、IT分野においては、日本以上の先進国になってしまった。 〇日本の存在感低下の原因 2010年から世界における日本の存在感の顕著なほどの低下は、IT競争力の相対的な地位の低下と言っても過言ではない。さらに悪いことは、今後は全ての産業がITと金融を軸に展開していく。全ての機材がAIを駆使して人工知能を持つような社会が待っていて、結局のところ米国の一人勝ちに構図は目に見えている。とはいっても、IT分野に強みを見せられない日本が全面的に落ちていくという構図にもならない。それはロボットなどの最先端機器の精度を高めるためには、これからも日本の技術力が必要とされると予想されるからだ。  つまり、最高の性能を有するロボットを米国が作り、汎用品市場を中国が握るという構図の中で、こういった製品の重要な部品に対し、日本企業の高シェアを維持するという構図である。それが日本を世界の間たる先進国であるがゆえの富の源泉になるのであろう。 〇部品市場の優位性は揺るがない  ハード面における日本企業の強みは日本人特有の性質からきている。海外は一部の天才が社会や企業を引っ張っていく、しかし、日本は一部の天才ではなく、裾野で働いている従業員の仕事に対する意識が高く、その人たちの努力によって高性能な部品生み出され続けているのである。このような風土は、階級意識の強い外国の企業では考えにくい。  しかし、米国政府はそういった欠点を補うべく、NASDAQのようなベンチャースピ...

2023年初めての株式売買(ベライゾンを32ドルで購入)(運用状況)

イメージ
。 久しぶりの米国株式の購入。今年の私のスタンスは休むも相場であるが、ベライゾンがほぼ破格の値段まで落ち込んでいたので購入することにした。   私は、「AT&T とベライゾンの分析」でこれら銘柄に大きな飛躍はないと述べた。その考えは変わっていない。しかし、ベライゾンの事業内容やビジネス状況から見てあまりにも安い値段で放置されている。長期的にみれば一定程度のリバウンドを期待できると踏んでいる。さらに毎年僅かであるが増配も期待できる。そういったリバウンドが確かなものになるまでは、8%近い利回りを堪能しようと思っている。 ベライゾンは日本企業に例えれば、NTTやKDDIであって、どう見ても強固なビジネス環境に守られている。業績内容も決して悪いとは言えない。さらに着実に増配を繰り返している。日本なら間違いなく優良企業として評価されているはずだ。そんな企業でさえ米国投資家は高い評価を与えてはいない。GAFAMなどの企業に比べたら、日本の老舗大企業的な雰囲気が漂っているのは確かであるが、GAFAMなどがどれだけ先進的で優秀な経営をしているのかというかを物語っている。成長性という点では購入対象になる銘柄ではない。 良いニュースは私たちに不運をもたらし、多くのお金を失せる一方、悪い知らせが私たちに幸運や良い利益をもたすことがある。このルールに従って、私はXOM を 2020 年に購入して成功した。しかし、2022年のコロナバブル崩壊に対するGAFAM低迷をキャッチできなかった。そもそもGAFAMの超優秀な経営陣の能力を理解できなかったからである。 実際、悪いニュースは実際の状況よりも悪いわけではなく、一方で、良いニュースは実際の状況よりも優れているわけでもない。  ということで、今年初めての売買は、ケーブルの鉛汚染問題で低迷しているベライゾンを逆張りの気持ちになって32ドルで購入した。どういう経緯があろうと、いったん購入したら、当面は株価動向に一喜一憂せず。のんびりと配当を享受していきたいと思っているところである。

逆イールドカーブと今後の景気動向

イメージ
  初版 20220402(旧タイトル 逆イールドカーブが示唆する高インフレとの向き合い方) 改版 2023/01/13、2023/04/29 2023/07/01 1.はじめに  米国債市場では、短期債と長期債の利回りが逆転する逆イールドカ―ブ現象が続いている。  今回はこの現象について考えてみる。   2.逆イールドカ―ブ現象の意味すること 逆イールドカ―ブ現象の意味すること。それは、貨幣の過剰供給の最中、コロナ禍以降のロジスティック断絶下のなかでのロシア制裁によるエネルギー価格高騰が発端で、短期的なインフレが発生したというのが大方の見方である。しかし、製造技術が高度化した昨今では「供給>需要」が起こりやすく、余程の事がない限り、高インフレになりくい環境下にある。これが長期金利の上昇を抑える要因となり、結果としてFRBがFFレートを引き上げても長期金利が追い付くことができない逆イールドカーブを導いている。 3.逆イールドカーブとリセッション  FRBは、インフレを悪性にさせないために景気を冷やす事を覚悟しながら金融引き締めに挑んでいる。とはいっても、高インフレ下の不景気(スタグフレーション)を起こさないように気を配りながらだが。  FRB幹部は、当初インフレを甘く見ていて市場がインフレを危惧し長期金利が上昇し始めた。(2021年)➾今度は、FRBはこのインフレを放置すると70年代の再来になると判断し急激な政策金利の引上げを実施したが、市場がインフレはそれほど深刻でないと判断し逆イールドカーブを形成するようになった。(2022年)。市場は70年代の再来はないと強気に見込んでいるが、インフレは市場が想定するほど下がっておらずインフレ率2%はまだまだ遠い。その一方、インフレ率は徐々に下がっており、FRBが危惧するほどの悪性インフレではないという雰囲気も散見される。FRBは、政策金利が5%を超えてからその効果を見極める姿勢をとっている。経済はしかし、複合的な要因でなりたっているので、インフレがこの先どのような展開を迎えるかは誰にもわからない。ただし、インフレ率に2%の定着は相当先になるのだけは間違いない。 4.2024年の大統領選挙  相場への影響を推測する場合、イールドカーブ動向以前に、やはりz業業績の動向がカギになる。その中でも...

浜田宏一を参考に大物経済学者の発言を投資家視点で分析(経済情報との向き合い方)

  初版 4月8日 旧:アベノミクスの草案者(浜田宏一)のインタビューから見え隠れする経済政策の実験的な側面 アベノミクスの経済政策の筆頭ブレインであった浜田宏一イエール名誉大学教授の最新のインタビューが東京新聞に載っていた。今回は投資家目線でこのインタビューを考えてみる。 〇超金融緩和が国民全体に富を行き渡らせられなかったことに対する浜田名誉教授の回答 「予想外だった。僕は漠然と賃金が上がっていくと思っていた。安倍首相もそう思っていたと思う。ツケが川下(の中小企業や労働者)に回った。賃金が殆ど増えないで雇用だけが増えるようなことに対して、もう少し早く疑問を持つべきだった。普通の経済学の教科書には、需要が高まっていけば実質賃金も上がっていくことになっている。ツケが川下(中小企業、労働者)に回すようなシステムで調整されるなんてことは書いていない。意外で望ましくない方向に行っている。」  正直、日本を代表する大物経済学者でさえ、実経済の運営は困難を極めることが露呈された感がある。浜田宏一名誉教授の言葉を拾い上げると、大学の研究室で高尚な理論を追い回しているようなもので、街角に出て、そこに漂っている民衆の現状や空気感とは別の次元で研究をしているようだ。 〇アベノミクスのメリット  とはいえ、投資家から見れば、アベノミクスは決して悪いものではなかった。それなりに投資利益を得られたからだ。しかし、株価の上昇がほんの一握りの値嵩銘柄に偏ったために、多くの投資家の懐を暖めるまでにはいかなかった。実は米国相場もGAFAMなどの一握りの銘柄指数を押し上げただけで日本と大きな相違があったわけではない。 〇トリクルダウンの正体 実際、金融緩和で広がったのはトリクルダウンではなく二極化である。金融緩和は金融市場を暴騰させただけで庶民にお金が廻らず、街角景気と金融市場が完全といってもよい程に乖離してしまった。どうもトリクルダウンというのは、高度成長期のように養分を吸収が可能な経済構造に有効な施策であり、各々産業で制度疲労を起こしている成熟化した社会では起こりにくいようだ。だからこそ、現在の金融政策を補填するかのように、間接ではなく直接的にお金を配る施策が目立ち始めている。 しかし、二極化は世界中で起きている現象であり日本特有の議論ではない。だからこそ、ピケティは「21世紀の資本」著書...