投稿

トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること

イメージ
 ドナルド・トランプが1月20日にアメリカ第47代大統領に就任した。これから様々な破天荒な政策が打ち出されることが予想されるが、超貴重ともいえる1988年のインタビューから、その源流を読み取っていきたい。 トランプとの会見 Interview with Donald Trump by Shu Ueyama 1988 (要旨) ・ 1988年頃のトランプは新鋭の企業家であった。そして、有能な若手経営者としてマスコミに取り上げられていた。この時代は今ほどグローバル化が進んでいない状況を踏まえると、日本の経済番組で取り上げられている自体、世界的に見て相当有名なビジネスマンである事が伺える。 ・まさにハリウッドのスーパースターのように派手な生活や行動が好きな事が伺える。 ・成功の要因は「相当な努力とやる気、そして才能、さらに運も大切な要素だ。才能は万人に与えられていない。成功も同じだ。だから私と同じことをしても成功するとは限らない。」 ・政治に対しもビジネスマンの視点で論じている。特にこの頃の日本はバブル景気で「ジャパンアズNo1」と言われていた時代であり、なぜ米国が軍事的に多額の費用を使って、日本の多大な貿易黒字を支えなければいけないのかと述べている。その一方で、日本が米国に多額の投資をしていることに対し歓迎している。 ・取引においては、双方で利益を得るべきであるが、現状は米国だけが損を被っている状況、それが許せない。 ・今はその気はないが。米国の政治家が、国益を損なうような事を続けていくなら、選挙に出て大統領を目指すかもしれない。 (インタビューの個人的感想)  トランプのビジネスには、ハリウッドのセレブリティ世界の具現化が見られる。その源流はトランプが青年期を過ごした1950-1960年代の華やかな米国であり、それは「MAGA」思想に現れているようだ。これは日本で言えば、高度成長期の日本を追い求めているのと似ているのかもしれない。  トランプは一匹オオカミ的な経営者との表現もあり、自分の才能と努力と運を味方にして、のし上がってきた自負があり、その結果すべてをDeal視点で考えるようになっているようだ。 (インタビューから垣間見る今後の米国の政策の行方)  ①トランプは、一方的な取引を望んでいるのでない。米国に不利にならないような取引を望んでいる。つまるところ、「米...

韓国の報道に対する一方的な論調について

 私は中国の報道の矛盾について書いたが、韓国についても同様に偏向とも言える記事が目立つ。 まず、日本と韓国の立ち位置を冷静に見つめていくと、一人当たりのGDPで日本は韓国に追い抜かれている紛れもない事実がある。内情はどうであれ。日本と韓国はほぼ同一の生活水準に到達してしまった。  考えてみれば、中国もそうであるが、ここ20年から30年で日本は中国や韓国に圧倒的な経済的大差をつけていたにも関わらず同等又はそれ以上いたるまで猛追されてしまった。これは当時20歳の頃の感触と50歳の頃の感触では、コペルニクスの地動説のような大きな転換が起こったことに等しい。こういった事を冷静に分析している識者がほとんど皆無で、どちらかというとその人の立場や感情論で物事を論じているように思えてならない。  マスコミなどの情報を追いかけすぎると何が真実であるかが不明瞭にあり、投資家にとって、情報収集をしようとしても、そのほとんどが投資材料になっていないのが現状である。 そんな代表例を下記事から述べてみたい。 忍び寄る低成長、韓国を労若男女の「生きづらさ」 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/010800457/010800003/ ①「サムスン電子の苦境」はなんなのか サムスンの問題を指摘しているという点では優れた記事かもしれない。しかし、他と比べてどうなのかということである。正直って、サムスンの問題より日本の企業の問題の方が深刻で手に負えない。例えば、日本のパナソニック、東芝、日産などの日本株式会社の製造業の凋落のほうがもっと酷い。この記事はサムスンが自国の企業なら更なる発展を期待し、辛めの記事もよいのだが、韓国でもっともすぐれた企業の記事なら単なる反韓記事の何者でもない。 ②「先進国で最悪水準に苦しむ高齢者」  これについても、記事自体は間違いではないが、そういった記事を上目目線で書くほど日本の高齢者福祉は素晴らしいものなのかということである。年金においても、日本の年金給付水準はかつて世界でもトップクラスであったが、今となっては給付額がここ数十年横ばいにもかかわらず、社会保障費や税金を課せられることで驚くほど手取りが目減りしている。それに加えて、ここ最近のインフレにより、日本人の平均年金受給者は年金だけでの生活が困難になりつつある。どこの国も底辺...

テルモ 経営のプロが担うグローバルニッチ経営

イメージ
テルモは、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で多様な医療現場、製薬企業などに製品やサービスを提供する医療機器メーカーである。当社の飛躍は、1990年代ごろから技術力の高いカテーテルが大きく伸長したのと海外企業のM&Aを繰り返すことで事業を拡大してきたことである。  テルモは、株価については浮き沈みを繰り返しているが、医療機器分野のグローバルニッチ市場で優位性を保つことで、着実な売上成長、かつ高財務を維持し、長期的に上値を切り上げてきた優良企業である。 (参入障壁の高いビジネスモデル) テルモの医療機器メーカー世界ランキングは15位(約0.69%)、最大手のメドトロニック(2兆円弱)。ボストンサイエンティフィック(1兆円強)と比べると規模面での小粒感は否めないが、カテーテル治療に使うガイドワイヤーのグローバル市場シェアは60%、血管に入り口をつくるシースイントロデューサーは45%などで世界シェアトップを獲得している。  一般に、医療機器は承認取得が難しく、新規参入からその業界内に大きく食い込んでいくハードルは高い。さらにニッチ分野という大手企業が参入をためらう領域で優位性を発揮しているため、テルモの事業には堅牢性がある。今後は高齢化社会の進展による手術数の増加も見込まれ、テルモにとってのビジネス環境は良好なものとなっている。 (巧みな事業拡大戦略) テルモは、1999年以降、以下に代表される買収で、急速にグローバルニッチ化を進めてきた。 1999年 米国3M社から人工心肺事業を譲受 2002年 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社 2006年 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社 2011年 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社 2016年 シークエントメディカル(脳動脈瘤用塞栓デバイスの開発・製造・販売) 2017年セント・ジュード・メディカル(大腿動脈穿刺部止血デバイスの開発・製造・販売) これらを通じて、テルモの連結子会社は9割以上が海外法人となり、売上海外比率は70%に及び、その内訳としてアメリカがトップで、欧州の比率が高いなど事業エリアの分散化が程よく図られている。  (プロ経営者による統治)  佐藤慎次郎元社長そして鮫島光社長は、ともに東亜燃料工業出身で、米国流の経営が...

ダイフク 総合マテハンの今後

イメージ
 ダイフクは、マテハンの大手である。当企業は、工場内の運搬の自動化では世界トップレベルの技術を有している。新型コロナウイルス禍で電子商取引(EC)向けが伸長したことから、市場の成長期待が膨らみ一時期はPER50倍以上で推移した。これら事業はこれから更なる発展が見込まれることから、ダイフクへの恩恵も期待される。 (直近の状況待) コロナ禍も静まり、人々は街でショッピングをするようになり同社の株価もPERは20~25倍前後で推移している。  主力の搬送機器は小売り向けなどの需要が旺盛で、空港施設向けは低採算であるが、航空需要が回復する中で人手不足解消による需要が見込まれている。自動車施設向けは、ハイブリッド車(HV)の混流生産など更新需要が見込め、半導体施設関連は、AI関連の後工程向け搬送システムの需要拡大が見込まれる。技術開発で先行するダイフクにとっては当面の安定成長が期待できる見込みだ。 出典 「マテハン(マテリアルハンドリング)業界の世界市場シェアの分析」 https://deallab.info/material-handling/ (規模拡大の課題)  売上高全体に占める海外の比率が7割近くあるが、海外の認知度は高くない。シェアは5%前後だ。収益率は、国内は10%強に対し、海外はその半分に甘んじている。 これ以降の発展は、現地企業との連携や買収による受注高の拡大をテコにダイフクの強みとなる技術力を発揮することが理想的だ、その際、現地企業の従業員をダイフクの従業員レベルまで教育し、スキルを引き上げていく必要がある。現地法人社員に惜しみなく特殊ノウハウを移管することは、ダイフクが得意とするマテハンの特殊技術を一般に公開するのと同じであり、特にチャイナ系の優秀な人材は、その後自ら起業し、ダイフク以上の巧妙な利益管理をすることで、ダイフクより安く技術力も高い企業が現れてくるのは自明だ。  このため、はじめは業績好調をけん引する要因になるが、10年もすれば類似の企業が特に中国系に関して現れ、ほかの産業と同じようにその企業が世界を席巻しています。中国は14億人の国家であり、日本と比べ物にならなく多くの優秀な人材がいることを忘れてはなたない。 日本の製造業において、中国や韓国に猛追されたのは総合製品であり、部品や材料分野は両国とも追いついていない。マテハンについても...

ユニ・チャーム 欧米ブランドとの勝算

イメージ
 ユニ・チャームは、生理用品、紙おむつ(乳児用、大人用)などの衛生用品の国内トップメーカーである。この分野は赤ちゃんから高齢者まで様々な年齢層だけでなく、果てはペットまで広範な領域にまたがっており、日用品に近いがゆえにブランド力の構築が経営上の重要なファクターになる。ユニ・チャームは、アジアやアフリカなどの発展途上国を中心に、これら国の黎明期にブランド力を確立させ、発展期に移行する過程での需要拡大を享受する戦略を打ち立てている。 (ユニ・チャームの市場動向)  おむつ市場における大まかなシェアは   1位 P&G 16.6% 2位 キンバリークラーク14.1% 3位 エシティ 11.0% 4位 ユニ・チャーム 7.5% 5位 オンテックス 3.1%  である。ユニ・チャームのシェアはアジアでの強みを発揮することで世界シェアの上位に食い込んでいる。同社の海外売上比率は、総売上の7割弱で、さらにその7割をアジア諸国で占めているが、巨大市場である中国に大きく依存することなく、様々なアジア諸国でのビジネス展開に成功している。  この企業の重要な戦略として、アジア地域などの発展途上国に対して、衛生教育を施すことでユニ・チャーム製品への愛着を促す戦略をとっている。こういった草の根ベースでの取組は商品の信頼性を強固にするものであり、そういった点では、ヤクルト同様に欧米型のマーケティングに引けを取らない独自戦略を打ち出している。 (ユニ・チャームの決算状況)  ユニ・チャームの決算は常に増収増益を成し遂げている。この企業は、海外事業に対して順調に売り上げを伸ばしていることから、日本における最優良企業の一つとして扱っても差し支えない。この会社は創業家である高原氏の優れた経営力に支えられており、今後も増収増益の決算を続けておける可能性は非常に高いことから、長期的には綺麗な右上がりが予想される。 (ユニ・チャームの今後)  ユニ・チャームの事業分野にブランド力の強化は必要不可欠であるが、欧米メーカーと同じ立ち位置でのマーケティング戦略をしたら、やがては敗北を強いられ欧米メーカーに飲み込まれてしまう。ブランド戦略においては欧米以外の企業が優位性を保てた例はほとんどない。ユニ・チャームは、当面の間、新興国でブランドを高めながらそれら国の所得上昇に連動するように業績を上向けてい...

中国とインドの隆盛が引き起こす東西覇権の交代2(BRICSの台頭)

前回記事  中国とインドの隆盛が引き起こす東西覇権の交代(世界の潮流) https://investment-v3.blogspot.com/2024/06/blog-post.html#google_vignette (BRICSの台頭)  BRICSに関しては、近ごろ拡大の動きが顕著になってきた。 ・インドネシア、BRICSに正式加盟 11カ国に拡大(1月7日 日経) BRICSの加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国に加え、サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプト、そしてインドネシアの11カ国にまで膨れ上がった。さらにパートナー国には13カ国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、キューバ)に及んでいる。 BRICS加盟国の人口は合計35億人と世界の約45%を占め、経済規模は合計28兆ドル以上となり、世界経済の約28%に相当する。(JETRO 2024年10月31日) (西欧諸国のピエロ化) これら加盟国には、明らかに西欧諸国から制裁や敵視されている国も含まれている。ロシアに至っては、日本を含めた西側諸国から見ればウクライナ戦争で悪の枢軸国との扱いだが、BRICSからのいわば新興国からの世界から見れば、全く異なる世界が見えてくる。西欧の正義が必ずしも、これらBRICS加盟国の正義ではないことは明らかだ。そして、西側がいくらロシアを非難しようとしても新興国の多くはそれに追随すらしない。 なぜこのような西欧諸国のピエロ化が起きっているのであろう。それは、本当の意味での西欧列挙による世界統治の終焉と言えなくもない。ほんの20年前までは、イギリスもフランスもかつての植民国家に対し影響力を保持していた。しかし、中国やインドが台頭するにつれ、これら国々の影響力は年々小さくなっている。香港においては、イギリスとの2047年までの1国2制度の約束すら中国にいとも簡単に反故されてしまった。今となっては西欧は小さな国の集まりに過ぎず、新興国は長年にわたって続いていた米国や西欧諸国の利権からの脱却という側面からBRICSに参加を希望している国も多いのも事実だ。世界が多極化しており、この流れは加速する一方で20世紀初頭の勢力図に戻ることはない。 (米国政...

江戸時代から今後の日本をスクリーニング

今後の日本経済を占う上で、江戸時代の経済を調べてみた。 (江戸幕府の経済状況)  江戸時代初期は、新田開発などが盛んに行われ高度成長期を迎えていた。しかし家光は家康が蓄財した多額の財産を日光東照宮などに投じた結果、幕府の財政はひっ迫するようになった。五代将軍綱吉は貨幣改鋳により貨幣を多量に供給したことから元禄バブルを引き起こしたが、インフレなどの副作用が生じた、こうしたことから幕府は幾度にわたる財政改革を行うも好転せず財政赤字は膨らんでいった。結局のところ、ペリー来航の黒船により鎖国を解かれることで欧米列強の国力を目のあたりにし、新しい日本を建てるべく明治維新という革命で江戸時代は幕をひくことになる。 (主な経済推移) ①元禄バブル  江戸初期の高度成長期は、新田開発が限界を迎えたこと。金銀鉱山の産出量が減少したことで幕府の収入は頭打ちになるが、綱吉は貨幣改鋳を行うことで貨幣を大量に供給し「元禄バブル」を引き起こした。  これ以降、幕府の財政悪化は深刻な事となり、幕府は②~⑦の緊縮と緩和財政を繰り返すことになる。 ②正徳の治(緊縮財政) 新井白石 (1711~1717)は、綱吉時代の放漫財政を立て直すべく、生類憐みの令の廃止、貨幣改鋳を改め、貿易量制限による銀の過剰な流出の阻止などをする。 ③享保の改革 徳川吉宗 (1716~1745)が、幕閣に倹約を強いて、新田開拓、商品作物を推奨することで、税収を増加させることで幕府の財政を立て直そうとする。 ④田沼時代 幕府財政の立直しを、米中心の経済から重商主義の貨幣経済への転換を図るが、商人の風紀を乱すなどで不評を買って失敗する。  ⑤寛政の改革 松平定信 (1787~1793)は。田沼時代を金権政治と見なし、緩みきった風紀を引き締め、質素倹約を強いることで幕府の財政を立て直そうとした。 ⑥徳川家斉になると幕府の支出の拡大することで江戸は好景気になり、化政文化が花咲く。 ⑦天保の改革(緊縮財政) 水野忠邦 (1830~1843)は、倹約令を施行し、風俗取締り。農民の農村への人返し。さらに江戸や大阪周辺を上知令で幕府直轄地使用したが失敗 (人口推移)  人口推移をみる限り、高度成長期の終焉の綱吉時代を契機に人口が横ばいになる。日本もバブル崩壊し、その後形は違えど少子高齢化が起きて、人口減少社会をひた走っている。江戸時...

「一極集中」相場とインデックス投資の黄昏

イメージ
 私は株式投資歴が長く、バブル崩壊真っ只中の 90年代後半から株式投資をしている。  90年代の日本経済はバブル崩壊による景気低迷に見舞われていたが、世界第二位という周辺国から見れば圧倒的な経済大国であった。ほとんどの日本人はバブル処理が解決したら、かつての高度成長期の日本に戻ると信じて疑わなかった。 ( 90年代後半のITバブル )  90年代後半のITバブルをけん引したのは、NTT3兄弟、富士通、NEC,ソニー、ソフトバンクであり、重厚長大銘柄には資金が向かわなかった一一方、その頃の米国株は、マイクソフト、インテル、シスコシステムズが時価総額上位に躍り出たが、オールドエコノミーと言われる優良銘柄も堅調に推移していた。 (2010年以降の一極集中トレンド)  2010年以降の市場の変調、それはGAFAの台頭であり、時を経るにつれてGAFAに資金が一極集中して行く。これにマイクソフト、エヌペディア、テスラが加わってマグ二セントセブン時代を形成していく。   私自身は、長い間、投資資金の一極集中の意味を理解しかねていたが 、ロイターの珠玉記事で、少し回答が得られたような気がする。 米国株、一部銘柄に投資集中 空前のレベルは危険な兆候か  https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/ME2ALQGNH5PL5PHMAB3HNYWRHQ-2024-06-13/ この「一極集中」相場は米国だけなく、世界の至る所で起きており、米国より一極集中していないのは、日本、中国、インドだけとの事。一極集中していない国の共通点は、「どの国も大国であり、国の経済が特定のトレンドに左右されていないほど広範に渡っている。」ことである (世界経済成熟化の証し)  この一極集中が示すことは、世界は想像以上に成熟化しているという事。だからこそ、未来に向けて成長が見込まれる一部のハイテク銘柄にしか過剰なマネーが向かわない。 どうも、この流れは、世界中の投資環境において後戻りできないようだ。 妄信すると痛い目見る「S&P500」超不都合な真実       https://toyokeizai.net/articles/photo/664329?pn=3   (インデックス投資の長期停滞のシナリオ...

今後20年後を見据えた大学(辛口)戦略 その1

イメージ
  少子高齢化による18歳人口の減少から、大学受験者の減少が危惧されているが、現在のところ女性の四大進学が大幅に上昇したことから何とか体裁を保っている。しかし、一定以上の学力を保持している層が大きく減少していることから、大学側は一般入試での偏差値低下を防ぐべく推薦入試に力を入れるようになった。その結果、上智や関学のように一般入試率が50%を切る大学が現れ、さらには、私立最高峰の一角である早稲田が推薦率を60%まで引き上げる公言をするに至っている。  一方、中堅以下の私立大学に至っては、推薦入学を大学の定員確保に利用し、いわゆるBF大学を増殖させている。 (軽量すぎる私立の一般入試)  受験業界では、国立大学が圧倒的に優位である。まず、試験問題のボリュームが全く異なり、難関と言われる国立大学に合格するためには、6教科9科目の難しい共通テストで7割以上の点数をとり、二次試験においても比較的難しい論述問題を解かされる。一方、私大の科目数は多くて3教科、今となっては、2教科や1教科すら常態化している。総合的な学力という点では、私立は国立に太刀打ちできない。そういう点では、難関国立大学からみたら、多くの私立大学は大学と呼べるものではない。 (私立の3教科入試こそ総合選抜)  国は、欧米に見習って受験者の能力の多角的に評価するという観点から総合選抜などの推薦入学を推進している。しかし、国立大学からすると、私立大学の入試自体が特定の科目に特化した推薦入試とも言えなくない。5教科でみるのではなく、得意とする1~3教科で勝負する選抜入試とも言える。とは言え、早慶はもとより、MARCHなどの上位私立大学は上位国立とそん色ない活躍をしている人も少なくない。平たくいえば、国語的な論述能力と社会科目全般に強ければ、社会の至るところで活躍できるという証明に他ならない。5教科全てに対して長けている必要はないということだ。 (早慶の少子化戦略)  今となっては、早慶ともに一般入試率が50%台である。約半数を推薦の対象にするとなると当然であるが、学生の人的リソースの低下を招くのは必須である。しかし、マンモス大学である早稲田は、たとえ6千人の非一般試験の学生を確保しても、残り4千人に対し学力の高い学生を集めれば、1学年あたりほんの1~2%の成功者を生み出せることに自信を持っているのであろう。1...

NYダウ1123ドル安 10日続落、「タカ派的利下げ」に失望の記事について

「トランプ相場」帳消し、楽観冷ますFRBショック  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN18EUI0Y4A211C2000000/ 記事の内容は、 ダウ平均は12月4日に終値で初の4万5000ドル台を付けた後に下げ続け、1974年10月以来の10日続落を記録した。この間に計2687ドル(6%)下落した。前日までは構成銘柄の1つの医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの株価急落というやや特殊な事情が下げの主因だったが、この日はより広範囲な銘柄に売りが広がった。 その理由をFRBのこの日の利下げ実施と今後のペース鈍化の組み合わせを「タカ派的な利下げだ」と指摘し、市場では次回の25年1月の会合でFRBが利下げを見送るとの観測が強まっている。同氏は次の利下げ実施までの一時停止の期間が長引くほど「政策の不透明感が増し、25年の金融市場をより不安定にするだろう」としている。 私から見ると、PERを許容範囲を超えていたのでその訂正に過ぎないと感じている。株式は企業業績にリンクするという逃れられない事実から鑑みると、米国の相場のPERは、トランプ大統領のご祝儀相場もあって30を超えるなど過熱気味であった。相場は、その訂正をするタイミングをうかがっており、それが単にFRBの利下げ政策と重なっただけにすぎない。売りが一巡すれば、今度は12月期の決算を見定める動きに代わり、増収増益が確保されれば相場の回復は早く、場合によっては最高値を更新することになる。さらにトランプの花火政策が実行されれば新たなる期待感を誘うことになる。  しかし、こういった書き方も月並な評論家的な意見にすぎない。決算において、この10年間はGAFAMを中心としたマグ二セントセブンが予想を上回るほどの決算を四半期毎に発表することで、このような憂いを潰し続けてきた。今回も高確率で同じような動きになると感じている。 当ウェブサイトの情報は、個人的な私見を述べたものにすぎません。このため、当ウェブサイトに掲載された情報によりなされた判断及び一切の行為は、閲覧者の自己責任においてなされるものとします。

金持ちほど無益なトラブルを上手に避けるものだ

(お金のない人の特徴)  お金のあるなしの判断は収入に比例するのではなく、資産規模に比例する。お金のない人は、言い方を変えると資産を蓄積できない人から始まり、計画通りにお金を使う事が出来ない人、浪費癖のある人とグレードが上がっていく。こういった人は、大抵の場合、どんなに高収入であったとしても、お金の量に併せて自分たちの生活をグレードアップさせてしまうように頭が出来ている。だから、手元にお金は残りにくい。  このタイプの人が他人なら冷静に見ることもできるが、親族にいたら要注意である。お金のある時は気前よく他人に奢ってくれるなどの優しい面もあったりするが、反対に、その人がお金のない時には親族に何かと頼り始め、非常に厄介な人に変貌していしまう 。 (辛抱強くないとお金持ちになれない)  「金持ち喧嘩せず」という諺がある。そもそも多くの金持ちは、人間関係において、自分の意見を通したり、感情を表に出すことで不要なトラブルを起こすような事を好まない。それがどれだけ自分自身にとって無益な行為であるかを知っているからだ。  社会生活における強い人は、腕っぷしが強いとか声が大きいという人ではなく、どんな局面に対しても冷静に物事を進めていけるタイプに他ならない。つまるところ「辛抱強く。打たれ強い」人を指す。どんな仕打ちをされても、その人の悪口などを一切しないクールさを持ち合わせている人でもある。  お金持ちがこういう人だけとは限らないが、お金持ちは金をたくさん持つことで、社会的な不安や社会生活に横たわっている様々なしがらみ(束縛)は少なく出来る。また、心に余裕を持つことで、社会に横たわる様々な不条理への免疫力も高くなる。それがトラブルなどの不運につながる事柄への退避能力を高めており、結果として幸運をつかみやすくなってしまう。 (お金のない人ほど心の逃げ場に窮する)  お金のない人は、社会的な不安や社会生活に横たわっている様々なしがらみに対しての逃げ場が乏しく、不安や抑圧にさらされやすい。それは年収の大小では測れない。なぜなら年収が1000万円、2000万円でも、業績悪化などの理由で会社からリストラされたりすることで年収ダウンすれば、一挙に生活水準が下がってしまうからだ。このため、常に漠然とした不安に慄いたり、満たされない環境下での生活をおくることになる。その不安や不平不満を覆すように、...

高齢者就業促進が新たな富の勝組を創出

   高齢者が受取る一人当たりの年金平均額は16万弱である、その手取りは14万弱。最近のインフレによる物価高でこの額だと生活が厳しいと感じる人も増えている。それでも、政府は年金の給付負担を和らげるため、65歳以上の高齢者の就業を促進している。しかし、そうした流れによって新たな勝ち組が出現しようとしている。 (65歳以上の就労数の増加)  高齢者(65歳以上)の就業状況は、政府資料によると、550万人超(正社員:130万人程度)。65~74歳人口」は1,740万人(男性831万人、女性908万人)であり、3人に1人は何らかの仕事についている。これが65~70歳だと半数以上が職に就いている。この試算から言えることは、今の日本には高齢者といっても働く場所に事をかいていないことを示している。 (悠々自適な高齢者) 年金を受け取れる年齢になっても未受給の高齢者が250万人もいる。この中には、大企業役員や団体理事など1000万円を軽く超える社会的成功者だけでなく、そのほとんどは職種状態によらず労働収入と企業や個人年金、株式や不動産収入などで満足な生活ができる層である。 一方、仕事をしながらの年金受給者は300万人いて、その中で、いわば年金の壁(仕事+年金で50万以上の収入)に該当する人が50万人いる。これら層は現役並みの月30万円以上の労働収入を得ていることになる。  つまるところ、双方合わせて少なくとも300万人はお金に困らない高齢者であり、65歳~70歳の人口が800万程度を踏まえれば30%半ばが該当することになる。  (したたかな高齢者) これの示す事は、 バブル崩壊後から現在まで、多くの企業で人件費の高い50代をリストラし、一見不安を煽る話となっているが、その多くは多額の割増退職金を得るだけでなく、再就職などで賢く生きている。 特に、プライドの高くない現場側の技術者は非常に強い。これら高齢者は、その分野において基幹的な仕事をしてきた人で、その高度なノウハウを会社側も手放せず、定年後も有利な条件で雇用を延長し、70歳になっても現役を続けるケースが続出している。また、高度なスキルを保有しているがゆえに、再就職においても有利な条件で働くことが可能になる。高齢者の収入格差は現役世代と異なり、これまで築き上げたスキルやキャリアに依存され、収入額の逆転は非常に困難である。 ...

金持ちに国境や国家間のいがみ合いは関係ない

  (イデオロギーは民衆を煽るためのツールに過ぎない。) 日々流れてくるニュースは、世の中の矛盾、不正、腐敗、そしてイデオロギーを煽りまくっている。  テレビやネットの様々なニュースを見ながら、政治家、対立する国や民族に怒りを煽られて興奮している人も少なくない。それでも、マスコミ側からすると単に真実を報道しているにすぎないというスタンスを押し通す。 民衆は長屋みたいな粗末な家の中で、マスコミやネットが報道する政治ニュースやカリスマ指導者の演説に興奮し、挙句には、それが高じてデモすら起こしている。 (アラファト議長の膨大な資産) これら対立を煽っている指導者ほど莫大な財産を保有し、その言動とは大きく乖離するように豪勢な生活をおくっている。  例として、パレスチナ紛争において、パレスチナ人の多くがスラムのような貧しい生活をしている一方で、アラファト議長は数千億円の財産を残した。奥さんは孫のような年齢のモデルのようなスタイルの良い美女。そんな酒池肉林のような生活をおくっている指導者が発するイデオロギーの強いカリスマ的な演説を粗末な家で涙を流しながら聞いている多くの民衆がいる。アラファト議長の実像がどうであれ、多くの民衆は神として彼を崇めきっているように見えてならない。 (金持ちに国境や国家間のいがみ合いは関係ない)  さらには、イデオロギーの違うもの同士が裏では仲が良い。例えば、イデオロギーで西欧と対立している国の指導者の一族が、欧米の一流大学に留学し、そこで対立する国の学生と仲良くして、卒業後は欧米の一流企業に就職する。当然であるが、生活レベルはまさしく豪邸に住んで欧米のセレブ仲間との交流もする。その一方で、同国の民衆は、西欧人に何かしらの差別を受けたり、やすい賃金での労働に従事し下層の生活を送っている。そういった事に対し、 国の指導者の一族 なんら救済行動は起こさない。  こうなると、イデオロギーに振り回されて興奮しているのは民衆だけで、上流階級になればなるほど、ダブルスタンダードというか二股をかけた生活をおくっている。 (国を追い出されても亡命というセレブ生活) こういった指導者が民衆に正体がばれて、国内追放の憂き目にあっても、西欧諸国は亡命という位置づけで彼らの身柄を守ってくれる。彼らはもともと何かあった時のために、西欧の銀行に数百億とか、数千億円の多額の...

期待外れの石破政権と今後の動向

  ○期待外れ  岸田総理が辞職し、多くの国民が次なる総理として石破茂を望んだ。私自身も石破政権はアベノミクスの負の側面を改善してくれると期待をしていた。 私は、石破政権について   前回「石破ショックにみる総裁選と株式市場」 https://investment-v3.blogspot.com/2024/09/blog-post_28.html を寄稿した。さらに、選挙結果を受けて   「「日本貧困化」への国民の怒りが自民党大敗北を招いた」で追記した。 https://investment-v3.blogspot.com/2024/11/blog-post.html#google_vignette  」 を書いた。それでも足りずに、今回に至っている。その理由は、石破政権に落胆したからである。石破茂は想定以上に深みに欠けていて、単なる正論を語るだけの評論家の域を超えていなかったということである。正論を語っていくと、その行き着く先はどうしても左寄りになってしまう。しかし、ソ連や東欧の共産党崩壊のように社会というのは正論だけでは成り立てない。政治家には正論と現実を考慮しながら最適な方向に舵を切ることが求められてしまうのである。 最近は政治番組を見ることはないが、かつては評論家が政治家にもっともな正論をはいたりすると、熟練した大物政治家はズーズー弁で、「そんな評論レベルの理論を政治に持ってきちゃいけないよ!君らの言っている事を簡単に実行できるほど政治というのは生易しいものではない。机上の理想論ばかり並べても日本には様々な人々がいることを忘れてはいけない。様々な利害関係者に目配りしながら慎重に物事を進めて行くのが政治だ。政治というのはそういうもんだ。だから君らみたいな一面だけクローズアップした意見を簡単に政策に落とせないんだよ。政治化は評論家ではないんだ。」と言っていたのを覚えている。 石破茂は自民党の要職に就いたこともある大物政治家だ。評論家のように上辺だけの机上に近いような正論をはいても、実効性のある政策に落とし込んでくれるだけの知見と能力があると多くの国民が思ったのではないだろうか。しかし、結果としては、弁の立つ野党議員が総理になったのと変わらず、これでは2009年の民主党政権と同じようなものである。 ○総理としての資質に疑問符 そういった点では、石破政権の運...

仮想通貨の今後の動向

イメージ
 世界初の暗号資産(仮想通貨)ビットコインは、各国の政治家の恣意にまみれた中央集権的な金融行政の不信から、国も銀行も関係ない自由な決済社会を目指す反権力的な思想でスタートした。 ①政府によるビットコイン保有  米国は世界一のビットコイン保有国であるが、これはシルクロード事件で摘発したビットコインにすぎない。ただ、国別の保有動向では、ブータンは積極的にマイニングなどを通じてビットコイン獲得に動いている。エルサルバドルは法定通貨としてビットコインを採用した。先進国ではイギリスなども異なるアプローチで多量のビットコインを保有している。個人ベースになるとベトナムやナイジェリアなどの新興諸国では、給与支払いにビットコインを採用するなど、通貨価値が不安定な国の人々には、ドル、ユーロと並ぶ通貨として仮想通貨を貯めこむ動きがみられる。仮想通貨の保有人口が5億人を超えている現状においては、米国政府でさえ制御することが困難になり、各国政府は仮想通貨と上手に付き合う必要が生じてきた。トランプ大統領が米国政府の仮想通貨保有を明言したのもこの流れからであろう。 ②仮想通貨の今後の展望 結論つければ、仮想通貨は、新興国の通貨以上、先進国の通貨未満という立ち位置まで昇華したように見え、自国通貨の価値が安定しない国にはドルの代替として有益な通貨になりえるようにすら見えてきた。これらは、銀行間を挟まない低コストの国際送金などからはじまり、さらには国をまたがったビジネス上の取引などに発展していくことが予想される。ただ、これが米国ドルの信任と銀行間取引swiftの存在を脅かすほどには至らない。なぜなら、仮想通貨の価値の変動が激しいため日々のレートによって商品の購入量が変動し、安定的な取引への影響が懸念されるからだ。このため、反米勢力や破産国家やアングラな人々など正規取引が困難な案件程度しか用途は見当たらない。  ドイツはマネーロンダリングの不正防止の観点として大量のビットコインを売却した。 そもそも仮想通貨は、株や不動産などでは賄いきれない余剰マネーのガス抜き的な役割を担っている。このため、米国の金融政策次第では、その価格が大きく変動してしまい、通貨が必要とすると安定性という点での脆弱性を拭えきることは難しい。 ③デジタル通貨として黎明期  仮想通貨は、各国政府が検討している電子通貨との関連性も...

トランプ政権後の金融市場を占う

イメージ
   11月の大統領選でトランプが圧勝し、第47代米国大統領に選ばれた。今回は、トランプ政権の施策から見た金融市場の動向を予想してみよう。 (既存勢力との闘い)  今回の選挙で圧勝という民衆の支持を得ても、トランプ政権は多くの敵と対峙しなくてはいけない。構図としては、トランプ政権vs米国官僚、民主党、民主党を支持する主要メディア、そして西欧の主要メディア  ワシントンで働く官僚の多くは民主党支持だ。トランプの政策に対し、否定的な内容をメディアに流して、民主党が世論に訴えかける。外交においても、西欧メディアがトランプに対し否定的な報道する。米国内でのメディアでは、FOX SNS(X) vs ABC、CNNなどの構図でこれら論争を戦っていく。Facebookやgoogleはトランプ政権からの報復を恐れ中立を崩さない。  さらに悪いケースでは、トランプの過激な政策に対し共和党内の反発が予想される。そういった構図を読みとれば、主要閣僚はトランプと思想の近い、比較的狂犬のような人物を配置するのは当然と言えば当然である。 (スーザン・ワイルドの役割)  トランプは第一期政権で多くの閣僚が反旗を翻して、ボロボロの運営を余儀なくされた。民主党に近い民間の有能な政策者や官僚がスパイのような役割でトランプ政権に入り込んで内側から政権に打撃を与えていたからだ。スーザン・ワイルドはホワイトハウスに出入りする人物をチェックする門番のような役割で、トランプ政権内の適正運営を統制するという点で非常に重要な役割を任せられている。 (改革の実現性)  このような敵の多い戦いにおいて、4年後に米国が大きく変貌するのかはわからないが、米国国民はこれ以上の資産格差を容認していないのだけは間違いない。この辺の見通しは、中間選挙での共和党の勝ち具合にかかっている。圧勝するようなことがあれば、多くの抵抗勢力が意見を言えなくなりトランプは国民からの信任という大義名分で残り2年で大胆な改革を強行するであろう。中間選挙までの2年間はトランプ政権と抵抗勢力との押し問答が続く構図が予想される。トランプ陣営もそれを意識して政策を打ってくるのは間違いなく、国民受けの良い減税やインフレの鎮圧を急いでくるだろう。 (金融相場)  相場という点では、基本的には右肩上がりである。投資家は政治ニュースに肩入れして振り...

空き家増加とREITの逆相関関係

  株株式会社野村総合研究所のリポート https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2024/cc/0613_1 では、日本における空き家事情の今後の深刻性が報告されている。 1.新設住宅着工戸数(2024~2040年度の予測) 「新設住宅着工戸数は、2023年度の80万戸から、2030年度には77万戸、2040年度には58万戸と減少していく見込み」  これは不動産だけでなく、住宅メーカーや建築資材業者にも影響する予測であり、当然であるがその分を単価の上昇で補っていくのは十分に予想できる。 2.空き家数と空き家率(2028~2043年の予測) 「空家数は2023年:352万戸、2028年:473万戸、2033年:616万戸、2028年:768万戸、2043年:917万戸と指数的に増えていく見込み」  新築住宅が減って空き家もへる。双方が大きくダウンすることが考えられないので、新築住宅の着工件数は野村総研の予想より幾分多めに推移していくことであろう。それは、そもそも日本の住宅は安く作っているので、欧米のように長期にわたって利用できるものになっていない。なので、空き家ではなく、住めない又は住みたくない家が空き家として膨張するというのが正しいのであろう。それに引きずられて優良な中古住宅も安く手放すケースも十分に想定できる。 商業ベースでの過剰な不動産供給  これだけ空き家が増える現状でRIETに少なからずの影響を与えるのは間違いないだろう。つまるところ、RIET投資はそれほどの旨味は享受できない可能性は高い。REITは都市開発案件とリンクしていることが多いが、地方の場合、その都市開発が10年や20年に渡って安定的な家賃収入を継続できるとは思えない。テナントは多くの人々が行き交う場所であることが前提で不動産の価値が成り立つからだ。 都心部においては、一見、人口減少の影響は受けないように感じられるが、街ごとに似たような都市開発を行ない過ぎている。明らかに供給過多である。さらには、そこに林立するマンション群も一般のサラリーマンが購入できないほどの値段が高騰している。つまるところ、富裕外国人の力を借りなければ供給>>>需要であり、それに相応しておしゃれなモールも商売が成り立たなくなる。都市開発をしてもそれに見合った需要...

(MAG7研究2)トランプ政権誕生がもたらすGAFAMへの影響

イメージ
 1. 圧倒的な経営力 24年度7-9月のGAFAMの決算は ①アルファベット(GOOGL)AIが検索広告・クラウドの成長を促進  売上 883億ドル 前年同期比  15.1%増  EPS 2.12 ドル 前年同期比 36.8%増 ②アマゾン00・ドットコム(AMZN): ネット小売やAWSの双方が順調  売上 1589億ドル 前年同期比  11.0%増  EPS 1.48 ドル 前年同期比 52.1%増 ③マイクロソフト(MSFT): 全体期に堅調だがクラウドの成長が一時的に鈍化 売上 656億ドル 前年同期比  16.0%増  EPS 3.3 ドル 前年同期比 10.4%増 ④アップル(AAPL):iPhone販売は堅J調だが今後の見通しは控えめ 売上 949億ドル 前年同期比  6.1%増  EPS 1.64 ドル 前年同期比 12.3%増 ⑤メタ・プラットフォームズ(META):SNSの好調がけん引へ 売上 406億ドル 前年同期比  18.9%増  EPS 6.03 ドル 前年同期比 37.4%増 この決算をみるだけで、GAFAM+(テスラとNVIDIA)のマグニセントセブンが米国相場を引っ張ているのは一目瞭然だ。これら企業が長期にわたって市場平均以上の増収増益をくりかえしているのに驚かされる。成長性に陰りがでてこないのだ。これは彼らの経営能力の超というべき優秀性によるものである。正直、私もこの辺の彼らが行っている仕組みについてはいまだに理解できていないのが実情だ。 しかしながら、GAFAM+(テスラとNVIDIA)のマグニセントセブンと他の優良企業の経営力には、野球でいったら大リーグと日本のプロ野球のレベルの差があると言っても過言ではない。SP500の凡庸な企業となら、大リーグと高校野球ほどのレベルの差があるといってよい。   2. 著名投資家ウォーレン・バフェットの不穏な動き  バークシャー・ハザウェイはアップル株売却を4四半期連続行っている。4〜6月期にはアップル株の保有株を49%減らし、7〜9月期に25%程度減らした。23年9月末対比でみると保有株式数は3分の1にまで減っているが、それでもバークシャーの株式投資保有額の3割弱をアップルが占める。  バフェット氏は「良い球が来た時しかバットを振らない」と述べているが、マグ二セントセブ...

「日本貧困化」への国民の怒りが自民党大敗北を導いた

イメージ
   1.変化の兆し  2024年10月27日の選挙結果で自民党が惨敗し、立憲民主党が躍進した。これと同じ事は2009年に起こり、その時は民主党政権に交代した。国民は政権運営機能の低下した自民党政治に嫌気をさして、次なる希望を民主党に託した。しかし、民主党には政権運営能力が乏しかった。というより、政権運営の要になるはずの小沢一郎が政治と金のスキャンダルで身動きが取れなくなったことが一番の要因であると私自身は感じている。その後は、鳩山由紀夫、菅直人等が引き継いだが、政権運営能力が自民党以下であることが露呈された。結局のところ、国民が民主党政治に嫌気のさしたところにアベノミクスを打ち出す安倍晋三が登場して、現在に至っている。  その10年続いたアベノミクス政治にも陰りが見え始め、政権も自民党内のリベラル派である石破茂が政権をとり、今回の惨敗にいたる。  この惨敗理由を、「政治とカネ」と片付けるのは簡略的であるように私には見えてならない。この、根本的な原因は、日本経済の相対的低下が国民の許せる範囲を超えてしまったことにあると私は思っている。 2.日本経済没落のすさまじさ  ①欧米列強からの脱落  日本人の賃金水準は世界一の債権国とは思えないほどに低下し、明らかに先進国水準から脱落してしまった。日本人は中韓などの近隣諸国に生活レベルを追い抜かれてしまうほどの低迷を余儀なくされてしまった。それでも、いまだに感情的というべき日本人優位性をアピールしている識者が少なくないという絶望的な状況に陥っている。バブル崩壊の超不況の真中と言えども、98年の長野オリンピックでは日本にお金を落とせる外人は少数であった。国内景気はどん底でも日本経済は世界一流であり、中韓からみても圧倒的な差が横たわっていた。 ②インフレによる生活水準の低下  アベノミクスの失敗は、物価上昇前に賃金上昇のサイクルを作れなかったことである。経済構造上の問題で賃金を上げることが難しいなら、緩やかな円高政策をとるべきであった。極論かもしれないが、2024年段階で1ドル50円なら、今起きているインフレの問題は十分に対処できたはずである。さらに、海外勢が発展途上国程度に安くなった日本の物価を安い安いといって買いあさる屈辱的なインバウンド消費も発生せず、海外に出稼ぎまがいの労働に出かけるという現象も起きなかっ...

新興国のアッパーミドルは一般の日本人より金持ちな時代!

イメージ
 今の日本は、この20年にかけてジャパンプレミアムが剝げ落ちてしまった。これの意味するところは、庶民にとっては日本国内だけでなく、海外にも逃げ場所がなくなってしまったことである。これからは、上手で賢い生き方をしないと世の中を楽しめなくなったということだ。一方、アッパーミドルは国籍を問わず、かつてのジャパンプレミアムのような生活を楽しめるようになった。世界が均一化するにつれて、人々の生活レベルも国を超えたところで均一化され始まっている。 ①  物価水準の瓦解  20年前は日本が景気が悪くても、アジア諸国にいけば贅沢な生活ができたものである。端的に言えば、月10万円あれば東南アジアでは日本の30万円~50万円相当の生活ができ、竜宮城を思わせるような生活も夢ではなかった。しかし、日本円はどんどん弱くなり、今となっては、アジア諸国でも10万円程度の価値になり果て、南国の酒場やレストランで外食を楽しむということすら贅沢となってしまった。 私などは、屋台で食べることはできない。さらに汚いとこに住めないので、このレートだと日本以上に出費がかさむので南国移住など到底不可能である。日本円の強い時期をしっている者にとっては、本当に寂しい限りである。 ②  高級品に対するプレミアムも瓦解  とはいえ、日本人はデフレの最中でも、ディズニーは活況で、飛行機もANAやJALのプレミアムカードを多くの人が取得し、そして高級ホテルの会員にも手をだしている人も少なくない。コロナ前には、豪華クルーズ旅行も流行りだしていた。このように並べると、デフレと言いながら多くの人はピンポイントではあるもののそれなりに贅沢を楽しんでいた。   これらの価格はジャパンプレミアムというべきか比較的手ごろな値段での取得や楽しむことが可能であったためである。しかし、コロナ後のインフレ加速でこういった分野の値上げも著しくなり、庶民には次第に遠くのものになりつつある。  つまり、バブル崩壊後の円安政策で日本円の価値が長期にわたって下落し、結果として、バブル期までに日本という国家が獲得したプレミアムの大部分が剥げ落ちてしまった。これを一言でいえば、衰退である。 ③ 国単位で豊かさを図ることが出来ない時代  金融緩和とIT技術の進歩によって、先進国、新興国を問わず、実労働収入や金融資産運用などで深刻な格...

トマ・ピケティの資本論(資本収益の爆発力)の盲点

イメージ
 トマ・ピケティは、『21世紀の資本』で「資本主義は、どのようにしても富の不均衡は解決できずに格差は広がる。これを解消するには政府などの干渉が必要」と述べている。 そして、「r>g」という不等式を提示した。(r:資本収益率、g:経済成長率)。  この主張は、世界で騒がれている格差社会に突き刺さった。金融資本主義とは放置すれば格差を助長させてしまうことを投げかけた名著である。 ○資本主義のからくり  お金の発行元である政府は、景気が悪くなると市場にお金を供給し、景気が過熱すると市場からお金を引き上げる。この理論は誰もが知っていることだが、この理論の盲点は、政治の圧力で供給量>>引上げ量となってしまい、市中にお金が溢れることでインフレを引き起こしてしまう。それと同時に政府債務も返済不能の状況まで悪化する。その一方、市中に溢れるお金の分配は一部の人に集中し、貧富の差は容認できないほど拡がるシナリオを起こす。歴史では、これを訂正するために革命や反乱が起こる 。 又は海外からの侵略で国自体をリセットすることを繰り返してきた。しかし、先進国においては、日本、西欧、米国がリセットして、新たな国になることはない。政権や政策が変わるだけだ。  そういったおきまり格差社会の過程で強みとなる資産が、不動産と金である。なぜなら、インフレに併せて価格を調整してくれるからだ。現物のお金はインフレによる目減りをするが、不動産や金は半永遠にその価値が担保される。そして現代においては株式も加わった。 「神の見えざる手」の創出  実際、富の創出は、不動産と株などに顕著に表れ、実労働では追いつくことができないほどの差を生じさせてしまう。それはアベノミクス以降の日本も同様に、その恩恵を最大限に受けたのは投資家にほかならない。このからくりの厄介なところは、偽善者による作為でそうなるのではなく、まさに「神の見えざる手」の構造下に人間の行動原理が踊らされているにすぎないということだ。 ○資本収益の爆発力 資産も億を超えるころから徐々に労働を追い越す収益を獲得できるようになる。平均株価が1年間で10%上昇したと仮定すると、1億円なら1000万円の含み益と200万程度の配当を享受できる。  実労働での年収1200万円は、ほんのひと握りの勝組みだけが享受できる。これを資本収益では何もしなくても手に入れて...

「物価高騰の潮時も近い?」ニュース記事から読み取れること

○物価に関するNHKと日経のネット記事を並べてみた。 ①8月の実質賃金 3か月ぶりマイナス 物価上昇に賃金追いつかず  8月の働く人1人当たりの所定内給与は、前年同月比3.0%増加して31年10か月ぶりの高い伸び率となった一方、物価上昇に賃金が追いつかず、実質賃金は3か月ぶりにマイナスとなった。 ②8月家計調査 2か月ぶりの減少 前年同月比1.9%減 総務省が発表した家計調査によると、今年8月に2人以上の世帯が消費金額は29万7487円で、前年同月比で実質1.9%減った。 ③大手牛丼チェーン 客つなぎとめへ 価格引き下げの動き相次ぐ  大手牛丼チェーンは、物価上昇で牛肉などの仕入価格が上昇することから4年連続で牛丼の価格を引き上げたが、今度は来店客をつなぎとめようと一時的に価格を引き下げる施策に打って出た。吉野家HDは、「牛丼は日常食であり、消費者の生活防衛意識の影響を直接受けてしまう。お値打ち感を出して客数を底上げたい」と述べた。 ④イオン 8月中間決算 最終的な利益76%減 人件費増などで  「イオン」は、今年8月までの半年間の決算について、従業員の賃上げによる人件費増加と消費者の節約志向の受けての値下げで、最終利益が去年同時期比で76%減った。 吉田昭夫社長は「原材料価格の上昇が続く中で、価格競争が激しくなっている。この先もコストの上昇が続くことを前提に、事業構造を変えていかなければならない」と述べた。 ⑤サイゼリアが最高益 貫いた低価格、倹約中国でも稼ぐ  サイゼリアが中国を中心とするアジアで快走している。2024年8月期連結決算は純利益が前期比58%増の81億円となった。けん引役は倹約志向が強まる中国で、物価高では逆張りとも言える強みの低価格戦略を磨き国内外の出店を加速する。 ⑥セブン&アイ2割減益 3〜8月、米国でコンビニ苦戦  セブン&アイ・ホールディングスの2024年3〜8月期の連結営業利益は、前年同期比2割強減となった。米国でインフレを背景に消費者の消費意欲が減退し、現地のコンビニエンスストア事業が振るわなかった。 〇投資家としては、これらの記事を並べられても判断のしようがない。①と②はアベノミクス以前から続いている記事の常連というべきもので、富めるものがいる一方、大多数の国民の生活は苦しくなっているというもので、株価に大きな影をさ...

中国を巡る両極端すぎる報道について

 (中国の報道に対する日経等のマスコミ記事) 〇世界の自動車や電気製品の生産が中国へシフトしたのと同様に風力発電、偏光板、太陽光発電、そして電気自動車においても中国メーカの台頭が際立っている。 〇電池部材、中国勢がシェア8割超え 日韓は上流も細る リチウムイオン電池の部材で中国勢の市場占有率が高まっている。主要4部材の出荷数量シェアで8割超を中国企業が占めた。中国内で電気自動車(EV)販売が拡大して車載電池、さらに上流の電池部材でもシェアが高まる。 〇薬原薬分野における中国の台頭 1990年代半ばまで、欧米と日本で世界の医薬品原薬の9割を生産していた。2017年時点で中国の原薬生産の世界シェアは4割に及んだ。製薬大国のインドでさえ、中国で医薬品を生産するほうが安く済む。 〇中国金融緩和 ついに「バズーカ」市場支援策も 中国当局が24日、追加の金融緩和策を相次いで発表した。追加利下げを示唆し、あわせて不動産や株式市場の支援策も打ち出した。一連の施策で、低迷する国内景気や金融・資本市場を下支えする。「バズーカ」を好感し、中国本土や香港の株式市場では買いが先行している 〇中国、主要商業銀6行の資本増強へ-2008年以来 中国は主要商業銀行の資本増強を行う計画だ。利益率が過去最低を記録し、利益が落ち込むと同時に不良債権が積み上がっている銀行業界を強化することが狙いで、2008年以来となる。 〇中国事業の撤退(一部を含む)企業は、ブラック・アンド・デッカー、ナイキ、ハズブロ、LGエレクトロニクス、シャープ等があり、事業を縮小した米国ハイテク企業は、IBM、アップル、デル、ヒューレット・パッカード、インテル、グーグル、オラクル、クアンタ・コンピュータなど多くの企業が撤退をしている。 ざっと並べてみた。この報道を眺めていると90年代の日本を思い起こさせる。90年代の日本は、不良債権に処理による景気下押し懸念の圧力にさいなまれる一方、日本のハイテク産業は世界を制覇していた。そのため、上記のような記事群に近いものがあった。  撤退に関しては、単にビジネス上の旨味がなくなったにすぎず、旨味が再度出てきたら進出しなおすのは明白だ。儲けが見込める所に進出しない企業などない。 (90年代の日本のバブル崩壊との酷似)  ただ、正当な記事をトレースしている限り、中国は90年代の日本のよう...

石破ショックにみる総裁選と株式市場

  前回は岸田総理就任時について書きましたが リンク(相場の事は相場に聞け 岸田内閣の評価 )  今回は石破新総裁について思うところを書いてみます。 (石破総裁誕生)  私は、今回の総裁選について何の興味を持っていませんでした。  でも、小泉は役不足。終盤に向けては高市早苗が追い上げてもしかしたらと思い、石破は自民党員に嫌われすぎるのが問題。でも彼が総裁になれば、旧来型の自民党政治である株式市場より国民の生活に政策の目を向けてくるだろうとぼんやりと考えていました。  今の自民党が、今のように金融市場に気を遣うようになったのは、米国の政治事情を取り入れた安倍政権の時からであ、いわゆる強烈な金融緩和策をすることで富めるものを富ませ、最終的には街角の人たちにトリクルダウンを起こす。そんなシナリオを描いていたが、実際にはトリクルダウンの効果以上に格差のほうが大きく拡がってしまった。 (岸田政策との共通点)  岸田政権は、本来は、石破政権とおなじ方向の政策の舵取りを試みたが麻生氏や安部派が政権運営で主流を握っている中では中途半端な対応しかできなかった。現にその時の私のブログでは、岸田政権になることに株式市場がネガティブな反応を示していると書いた。  石破政権は、岸田政権のもつ自民党の保守本流の政策をさらに推し進めるとみてよい。さらに、麻生氏も安倍派の勢力も弱まったこともあり、あとはマスコミを味方につければ良いだけである。  一方、市場はアベノミクスを継承する高市氏が総理になると思い株価は大きく値を上げた。もし、高市氏が総理になっていたら、日経平均は4万。来年に向けては過去最高値を伺う展開になるであろう、日銀の金融緩和出口戦略も実質的にストップさせられるのは必須だ。  どっちが良いのかはわからないが、感情論としては、石破氏は自分の正義を貫き通したがゆえに安部派に嫌われ、自民党内でも長い間、冷遇され続けた。それを多くの国民はみていた。そしてマスコミも。そういった点ではマスコミは石破氏を叩きにくいであろう。 (経済政策)  経済政策においては、誰をブレインにするのかは今のところ不明であるが、財政健全化と金利がある状態への回帰を堅持しながら、株式市場の動向よりも地方の有権者の声を聞きながら政策を進める可能性が高い。こうなると、これまでのように株式市場が右肩上がりになることの想...

FRB金融政策、0.5%の大幅利下げ局面に突入

イメージ
 9月18日にFRBは、0.5%の大幅利下げ決定をした。これはインフレ率が、21年の10%弱から2.6%と大幅に低下した事と「雇用の最大化を支える」という名目であるが、私自身は大統領選挙において民主党の追い風になることを踏まえた政治的圧力も感じている。なぜなら、トランプは大統領選が終わるまで政策金利を変更するなと叫んでいたのと対照的な行動に出たからである。  このことで、トランプが大統領になったら、この件をトリガーとしてトランプはFRBに相当な圧力をかけてくる可能性は高い。  私は米国の高インフレが70~80年代の米国経済のようなインフレ経済への変換のトリガーになると思っていた。実際、インフレ率10%弱の頃は、1980年代前半のボルカーの高金利政策を取り上げるメディアも少なくなかった。さらにサマーズの下記発言もそれに同調するものだと私は感じていた。  「私(サマーズ)は世界経済がグローバル化することと生産性の改善から世界経済は長らくはデフレ基調で推移すると考えていたが、バイデン大統領が計画する2兆億ドル近い景気刺激策は、世界経済をデフレからインフレ基調に転換させた。あきらかに政策は行き過ぎている。これからは、インフレ率は平均2%に戻ることはなく、4%程度で推移するであろう。」  と述べていた。私もこの意見を信じていた。しかし、米国経済のインフレ率が想定以上に収束し、サマーズもこの持論を撤回し、パウエルの金融政策を称えるまでになった。  つまり、著名な経済学者の経済予測も結局のところ過去の経験則に対する警告の域に過ぎないということだ。これは深くは調べていないが、いつの時代もその当時の最高峰の知性を持った学者などが警告するメッセージは意外と当たっていない。言い方を変えれば、現場の政策担当者はこういった事を踏み台にして高度な政策運営をしているという事に他ならない。今回のサマーズの発言の変遷の理由は、これまでの経済学の研究は、過度な金融緩和が引き起こす未知の経済事象にまで及んでいないということであろう。つまるところ、米国の政府高官の政策担当者は、実際の経済運営は経済学の理論の先を行っており、政策者はこういった警告を踏まえながら様々な経済統計情報をそれぞれのチームの視点で分析したのを政策担当者間で擦り合わせながら、未知の領域で経済運営を行っているということであながち間...