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ビルゲイツの珠玉の名言から学ぶこと

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 (初版 2021/06/17) 1.名言に万人向けはない  ビルゲイツといえば、マイクロソフトの創業者として、世界有数のソフトウエア会社に導き上げた世界有数の経営者であり、世界有数の資産家でもあります。  しかし、彼のこういった成功は彼の天賦の才能だけによるものではありません。ここまでに至るには彼のけたたましい努力と苦闘の連続がありました。ビルゲイツは世の中の理不尽さを示唆するように、「人生は公平ではない。そのことに慣れよう」という名言を放っております。 これは高校生のスピーチの一節であり、人生における様々な理不尽に自分の意思で打ち勝っていけと説いています。 2.名言のそれぞれ  ビルゲイツの名言と言われるものとして以下があります。 〇「毎日毎日「勝ちたい」という気持ちで出社しなければならない。切羽詰まったときにこそ、最高の能力を発揮できる」 「一心不乱に働くこと、ベストを尽くすことが嫌だというなら、ここは君のいるべき職場ではない」 これは、マイクロソフトという事業を成功させるためにはこれだけのパワーは必要という裏返しです。 〇「しばしば、直観が頼みの綱になる。」 コンピュータを大家であるビルゲイツでもそう思うことがあるのですか。テレパシーとか以心伝心などは、ビルゲイツでさえ信じている。でも、ビルゲイツ以外の成功者も同じように、努力や戦略の上に直感があるという事を述べていることが結構あります。 〇「人生は、誰も助けてくれない」  自分の人生は自分で切り開きなさいといいたいのでしょうが、うがった見方をすれば、ビルさんも孤独なのかもしれません。結構寂しい人なのかもしれません。 4. ビルゲイツが事業の成功について話す珠玉の名言 「成功するまでやるのだから、失敗などありえない」( 失敗や負けは短期的な結果にすぎないということ。それが本当の意味で確定するのは本人が諦めたときだけである。あきらめずに前に進んで、その後に成功を勝ち取れば、これら短期的な敗北や失敗はすべてその後の成功の向けたプロセスに過ぎなくなる。}  正直、この前向きな思考こそ成功者に求められる事だろう。成功の過程で他人から見たら想像を絶する苦しみ、他人からの罵倒、そして信じている者の裏切りなど、、まともに考えたら自分自身がぶっ壊れてしまうほどのつらい経験をものともしない精神力。そして常にある前進する...

情報社会の代償 隣の芝生という厄介な存在 

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  初版 2023.3.11 (旧名:隣の芝生に振り回されない生き方こそ最良の生き方) 1.隣の芝生は人間の本能 人はなぜか、隣の芝生が青く見えるようである。どうもこれは人間の本能のようである。人は常にどこかで桃源郷があると信じて疑わない。だから他人に対して勝手というべき様々な妄想を抱いて喜怒哀楽を繰り返している。ドラマや週刊誌、映画,そしてインフルエンサーが煽り立てるような装飾され、誇張されたカッコ良い生活をしている人が常にどこかにいると信じて疑わず、そういった人たちへの憧れや羨望を抱こうとするように出来ている。        2.隣の芝生の幻想例  ①政治家  政治家は社会的には上流階級に位置する職業で、まさに隣の芝生である。しかし、そんな隣の芝生も今となっては、はっきりいえば苦労の割には見返りが少ない。一昔前なら、貴族の位を得られ、豪邸に住み様々な利権から得る膨大な富を得ることができたが、今では億ションにすら住めない、逆に豪華な生活をしていると賄賂を疑われお縄!となってしまう。仕事面では、4方から様々な意見を集約し意見調整を図りながら一つの指針を作り上げるという相当な労力と精神的な負荷を強いている。もはや、政治家という職業が好きでないとやってられない。 ②旧来型のエリート 大企業社員、医者、官僚、外資系金融や大手弁護士事務所の幹部等などのエリート職業もアッパーミドルの代表的な職業で庶民とは一線を画している。一昔前まではエリートとして大企業に入れば、それなりに出世し、それなりの報酬も得て、さらには子会社で役員級の役職に就いて会社人生の余生をおくる。まさにアッパーミドルの典型例のような人生であるが、今はこのような天下りが出来なく、給与面でも、天下りが減った分、人生後半の高給生活が遮断され、年を追って旨味が享受できなくなった。 ③セレブと言われる成功者  セレブと言われる超高所得者(芸能人やスポーツ選手、ベンチャー企業の創業者)なども隣の芝生の典型例である。これら人たちの共通点は実力主義の環境下で自分の力量を頼りに成功者と言われる地位まで上り詰めた事である。私たちは、雑誌やテレビで芸能人やスポーツ選手、事業の成功者などのセレブ生活や豪邸報道に対し羨望のまなざしを抱いてしまう。しかし、そこには成功者ならではの魑魅魍魎とし...

富裕層分析  サイレント富裕層の増殖

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  1.資産格差の度合  日本は格差社会に入って久しいと言われるが、世界的に見れば平等社会である。今世界では、上位1%の資産総額が全体の4割弱を占めている。逆に下位50%の資産は全体の2%と言われている。これは貧富の差が激しい発展途上国を含めての数値だが、先進国だけに絞ったOECD資料では、上位1%の国内の富に占める比率は、 米国42%、ドイツ24%、英国20%、フランス19%、日本11% 上位10%の比率は、 米国79%、ドイツ52%、英国52%、フランス51%、日本41%  となる。  この数字を見る限り、米国の資産格差が際立っている。それは、4月の米国相場の暴落時にベンセント財務官が言った言葉に表れている。「米国民の上位数%が米国株式を88%保有し、残りの50%までが12%を保有している。下位50%は負債だけしか保有していない。このため、株価が下がっても一般庶民への財布に影響しない。」まさに、米国の格差社会を象徴する発言であり、 国の分断化についてもあながち誇張したものでもない。とは言え、米国の場合、下位50%でも他国から見ると十分に良い生活をしているというオチはつくので、その辺は相殺して考えていくべきではあるが。。。。。 2. 社会的勝組=富裕層という誤解  マスコミは一般的な富裕層像をビジネスエリートに焦点を当てることが多い。挙句には大企業社員や公務員を上級国民としてこき下ろしている記事もある。この構図の原型は、受験戦争の勝者→一流大学⇒一流企業→幹部社員→上級国民であり、庶民を犠牲にわが世の春を謳歌しているプロパガンダ像である。こういったプロパガンダの変遷は、ドラマや小説などで垣間見ることができる。  昭和初期までの富裕層像は華族等の有閑階級を題材にした優雅な生活の描写であった。戦後は、財閥解体や華族制度の廃止などもあり、超一流企業幹部や官僚、医者などのエリートを題材にアッパーミドル層を描写していた。特に、医師は高所得者ランキングの常連であり、それが大学受験にまで波及し、偏差値では医学部がダントツの難易度を誇っている。人々は医学部入学を上級国民入りの登竜門と信じているからだ。  そして、最近は外資系金融やコンサルティング、そしてベンチャー企業のIPO創業者などが浮上してきた。  これらに共通するのは「高学歴=社会的勝組=富裕層」というステレオタイ...

今後20年後を見据えた大学(辛口)戦略 その2

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 (都心一極集中が学生にもたらしたもの)  東京一極集中が1世紀に渡って続いている。これは地方の秀才を東京に呼び寄せて定住させる政策を100年に渡って行ってきたことにほかならない。それら人々の子供は都心の中高等学校に通い、都心の大学に通い、都心の企業に就職する。このサイクルを雪だるまのように100年近く続けてきた。優秀な子供は年を追って都心に集中することになり、これは大学偏差値の長期推移にも表れている。戦前、戦後に渡って名門かつ高偏差値であった地方大学の中には、過疎化とともに没落し、過去の栄光を忘れ去られている。 (都心に立地する大学の高偏差値化)  これは長年における偏差値分布の推移を見れば一目瞭然である。都心への一極集中の最大の恩恵を被った大学は早慶、そして次に続くのがたいした格を有していない中堅国公立(千葉大学や東京都立大学など)、そしてMARCHクラスの有名私立大学であろう。早慶などは高度成長期前までの中堅クラスの難易度から東大や一橋をあと一歩に迫るくらいに偏差値が上昇した。早慶おこぼれの受け皿になるMARCHも驚異的に上昇した。戦後において地方の金持ちが通うFランとも見間違える程度の大学のはずが、時が経つにつれ地方国立を追い越し、難関国立一歩手前の位置までの地位を確立した。千葉大や東京都立なども同じように、単に都心に大学を構えているから地方旧帝大と拮抗する偏差値を有している。 (「旧帝大」の横綱級の格式) 地方の過疎化により、地方国立大学の地盤地下は目に余るものがある。しかし、旧帝国大学はその影響を受けにくい。地方旧帝大は、東北なら東北6県の盟主(東大)であり、それは九州地方の九州大学、中部地方の名古屋大学においても同様である。これら大学の偏差値は旧帝大という冠に守られて難関大学の一角を維持し続けている。首都圏の国立である横浜国立大学、千葉大学などは偏差値では地方旧帝大と同ランクであるが、首都圏の進学校では、東京科学大学に届かなく、これら国立大学を合格できそうな学生に対しては地方旧帝大を進めるケースもある。格式という点では「旧帝大ブランド」はエバーグリーンであり、この先の少子化が深刻化しても、首都圏一極集中がこれ以上に進んでもMARCHクラスや都心部の中堅国公立が格式において地方旧帝大を切り崩すことは難しい。「 (社会人から見た大学序列)  高校卒...

2040年頃に迎えるであろう日本における二極化社会

(日本経済黄金期(1985-2005年)が二極化の認識を歪ませる。)  最近感じてきたこと。それは現40代~70代前半が歴史上稀に見る日本の黄金期を体現した世代ということだ。海外旅行を例にとれば、最も安価で豪華なツアーを体験できたのはこの世代だ。実際、日本での生活に余裕はなくても、10万円あれば東南アジアで比較的裕福な旅行を満喫できた。西欧旅行も20万円あればそれなりに楽しめた。こういった比較的裕福な海外旅行もコロナ以降のインフレ・円安により困難になった。さらに深刻なのは若い世代が海外旅行に行かなくなったことである。これは興味がないという事ではなくお金がない若者にとっては海外旅行が贅沢品にグレードアップしたからにほかならない。  Louis Vuittonなどの高級品も1985-2005年まではお金を持っていない層まで購入できた。海外の高級品が簡単に手に入るほど日本円は海外通貨に対して強含んでいた。車においても、新卒の新入社員が彼女とのデート等を目的にプリウス並みの高級車を躊躇なくローンで購入し、長時間労働による多額の残業代で返済をしていた。さらにデフレが進行し、あらゆる商品が安く購入できた。この時期はバブル崩壊という経済的な負の側面による社会的な不安が蔓延し「失われxx年」と呼ばれる暗黒時代で表現されるが、安定的な収入を得られている層は、相当裕福な生活を享受できた。歴史的に見れば日本経済力の黄金期であったのは間違いなく、この認識ギャップこそが、日本における格差問題の本質を歪ませている。 (1憶総中流の幻) 間違いなく、日本は一時的に1億総中流を体現できた。しかし、その裏で日本経済はステルス格差を拡げることになり、2010年代後半から表面化し始めた。このころになると、女性の高学歴化と社会進出が定着し、パワーカップルが登場する。さらにネット経済が台頭し、有能な人たちは起業や投資で一定の財産を獲得できるようになった。これら層が新たなる消費を誘発し、タワマンなどの億近い案件すら購入している。今の日本は高度成長期のように真面目に生きていれば報われるのではなく、才能のある人たちが恩恵を被る社会に変貌した。 もう一つは世代間の格差である。団塊世代と現在の若者では同じ能力(スペック)でも、人生における恩恵の享受具合が全く異なってしまった。団塊世代は、難なく大企業や優良企業に入社し...

インデックス投資の黄昏も近い?(「FANG+信託の低迷」日経記事)

 日経に面白い投信記事がアップされていたので、それについての感想を書いてみた。 (FANG+保有継続は是か 類似投信へ乗り換えも選択肢) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26BVR0W5A320C2000000/ 投信商品「FANG+」はなんと、米国大型テック株たった10銘柄で運用する投信らしい。この投信は、構成銘柄をここ10年近くに渡って米国の上昇相場を牽引してきた銘柄群に絞ることで、投資家により直接的な恩恵を被れるようにした商品である。   (GAFAMの怪物的な企業経営力)   GAFAM、そして広義にはマグ二セントセブンは長期にわたって成長の限界を裏切り続け、「現在においても投資家に対して更なる夢や期待を与え続けている。」。一生懸命に投資を勉強し続けている投資家に対しては、まさに過去の経験則を裏切り続けていることになる。あのウオーレン・バフェットも過去の経験則に当てはまらないIT革命の本質について、優良テックを中心に研究し続け、IBM、ORACLE等に投資する等の試行錯誤をしてきたが、事業という側面から見たGAFAM銘柄の歴史的革命性、そして時代の変化を見抜いて最終的にはアップルに巨額投資することでこの巨大な果実をもぎ取った。  このため、今の米国相場は、マグニセントセブンと周辺の超一流優良企業にさえ投資すれば何も考えなくても相当な利益を得られる仕組みが出来上がり、これがなんと10年近く続いている。まさにこれら銘柄の絶頂期に違いない。これの言わんとすることはS&P500などの堅調な上昇とは裏腹に、投資対象としての分析に値する銘柄は1割未満いやその半分にも満たないということである。今の米国では、それくらい利益創出力が一部の企業に集中しすぎてしまった。 (歴史的な割高感?) 記事では、「こういった投信の構成銘柄は今、非常に割高でリスク大」と指摘。とあるが、テック株は大抵において将来性が期待されるので概ね割高で推移する。その割高の評価範囲は今後の成長性に依存し、成長性が高ければPER100でも容認されることになる。成長性が鈍化すれば投資家は収益力から株価を測ろうとし、大抵の場合、PER10~20のレンジまで株価が調整することになる。こういった記事については、企業がどのような成長を辿っていけるのかの両刃の...

金利のある世界の投資行動

 私は、「元本保証商品の運用利回りは壊滅状態」 https://investment-v3.blogspot.com/2021/07/blog-post_15.html でゼロ金利のトホホな利息事情を書いた。しかし、その後3年で日本の金利事情は大きく変化した。私は2021年時点では、金利の上昇は膨大な政府債務への悪影響から実現性に乏しいと思っていたが、日本にインフレ基調が根付き始めた事でその流れが変わった。日銀はインフレ率と符合するように政策金利を調整する姿勢に方向転換した。僅か数年で日本の金利トレンドがこれだけ変わってしまう事に驚嘆するばかりである。 (デフレの再来はない)  コロナ禍により世界中で深刻なインフレを経験する一方、日本は長らく続くデフレの余波からインフレは軽微であった。しかし、海外輸入の材料高と円安が重なったことでインフレ基調に転換した。さらにインバウンドの外国人はラーメン1杯2000円など価格の上限を気にせずに消費してくれることから、企業側はかつてのデフレ圧力に悩まされなくなった。日本のデフレは日本経済が世界的に見て圧倒的に強かったからであり、その時は日本円も強かった。そして、今のようなインバウンド消費をできる外国人は少数だった。今日の日本の国際競争力は中国に大きく突き放され、特定分野では韓国や台湾に追い越されている。こういった要素を勘案すれば、日本にはデフレになるだけの強い経済力は持ち合わせていない。日本がいまだに世界一の債権国であるものの、産業競争力の著しい低下というという点の側面を見過ごすべきではない。 (日銀の政策金利引き上げ状況) 日銀は、インフレ率と国内景気を勘案しながら政策金利を引き上げている。2024/3(0.1%)⇒2024/7(0.25%)⇒2025/01(0.5%)。これに付随して国債金利も上昇し、3月には1.5%を記録するまでになった。大手銀行の普通預金の金利が0.2%、1年物定期預金が0.275%まで引き上がった。欧米諸国と比較すると政策金利はまだ低いままだが、長期10年もの国債で比較すると、もはやスイス(0.7%)を大きく引き離し、韓国(1.7%)、中国(1.8%)とは射程圏に到達し、西欧諸国2%台まで近づき始めている。このままだと西欧諸国とは長期金利で肩をならべ、その後政策金利で近づいていくという方向に流れてい...

トランプ政権が目論む新たな世界スキーム

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 トランプ政策については、オールドメディアなどが非常に偏った報道をしているため、トランプ政策の本質を理解しづらい。しかし、これを放置すると、今後の米国株投資を大きく見誤ってしまう。  私は、トランプ二期期政権に関して、以下の投稿をしているが、 トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること(2025/01)   https://investment-v3.blogspot.com/2025/01/1988.html トランプ政権後の金融市場を占う(2024/11)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/11/blog-post_23.html トランプ政権誕生による世界経済への影響(2024/07)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/07/blog-post_20.html  トランプ政策については、今後も試行錯誤を繰り返しながら考察をしていきたい。 ①第二次世界大戦後のスキームからの脱却  トランプの主張は、「アメリカを世界一の大国として維持をさせるが、世界の警察官からは脱退する。」という第二次世界大戦後のスキームからの脱却である。これまでのスキームは、第二次世界大戦後の東西冷戦を念頭に、世界の過半の経済力を持つ西側陣営のリーダーとしての米国の立ち位置があった。それは東側陣営のリーダーであるソ連についても同様である。日本においては、日本の再軍備阻止等の観点から日米安保を締結している。しかし、今の米国の世界GDP比率は20数%程度にすぎず、中国に肩を並べられるまでに低下した。このため、米国が世界の警察官を維持できなくなっているのは明白である。  まさに、自国の領土は自国の資金で、かつ自国の軍隊で守る時代に突入しなくてはいけなくなったのである。日本においても、第二次世界大戦のトラウマを払しょくし、新たな防衛政策を打ち立てる必要性が出てきたのだ。 ②米国の再構築の試み  トランプは、MAGA( Make America Great Again)を掲げている、トランプ政策で誤解されているのは、米国は再び強力な覇権国家を取り戻すということであり、これの意味する事は、中国との覇権国家争いにほかならない。このまま自由貿易を続けたら、いつかは中国に国力を追い抜かれ、覇権...

富裕層分析 新富裕層分析?

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 (世界有数の平等国家)  日本の税制は世界でも類を見ない社会主義的な性質を持っており、日本政府はそれをさらに強く推し進めている。そのおかげで日本には、他国のような一部の大富豪が国の大部分の富を占めるようなことにはなっていない。しかしながら、富の格差というのは雑草と同じように想像以上に強い。日本においても現実問題として格差はそれなりに拡がっている。例えば、東京都心部で一軒家を持つことはサラリーマンである限り不可能に近いと言えるが、実際にはそれなりのサラリーマンが一軒家を購入している。国の平等政策にも関わらず、そのズレはどこから出てくるのだろうか。 (旧富裕層の没落)  富裕層のイメージとして、古くからの資産家や名家を思い浮かべる人も多い。しかし、今の日本では代替わりにおいて膨大な相続税を課せられるので、次世代まで富は続かない。これは戦前から続く名家だけでなく、一般人であるが高度成長期に成功してそれなりに贅沢な生活をしてきた層でも言える事であるが、高級住宅地において代々に渡って住み続けている例はそれほど多くない。著名人をみても、かつては超一等地に豪邸を構えていた森繁久彌、加山雄三、そして梅宮達夫、石原慎太郎etcなどそうそうたる面々の屋敷は今や売払われている。さらに、多額の金銭面での相続は意外と少なく、残された立派な屋敷や骨董品は売却しても大した額にならないのが実情である。社会的成功者はその人の活躍に応じてセレブな生活を体現しても、その人の没後は過酷な相続税などの要因で子供や孫の代まで引き継がれるということは今の日本においては非常に困難である。 (新富裕層の出現) 旧名家や社会的成功者が没落する一方、賢い一般人から富裕層が生まれている。その実態として、バブル崩壊以降は賃金水準の高い大企業ほど頻繁に早期退職者制度を実施し、社会に不安を与えているにも関わらず、超多額とも言える割増し退職金(一時金)が得られ、かつ賃金水準をそれほど下げずに転職できた人。それ以外に、IPOによる持ち株の成金。勤務先株価の暴騰による莫大なストックオプション。高賃金の外資系企業を渡り歩くビジネスマン。最後は、企業の大小関係なくアベノミクス相場で資産を増やせた層の中から、自らの不安解消のために大きな支出を控えながら蓄財し、不動産や株式などの投資に積極的な一部の人達が該当する。 (高度成長期の...

「メキシコの漁師」に見る人生と労働の皮肉

 (ファーストリテイリングの入社式)  ファーストリテイリングの入社式に関する日経記事があった。柳井正会長兼社長は「新しい報酬体系で初の新卒社員になる。世界中で活躍してもらい、付加価値のある高い利益を生むビジネスを作り出す。そのフロントランナーになっていただきたい」とエールを送った。この会社は2025年より新卒社員の初任給を33万円にした。全体の新入社員数は約1300人を予定しており、新入社員の代表は、「プレッシャーもあるが、その分期待をしてくれているということだと思う。その期待をモチベーションにして頑張っていきたい」と意気込みを話した。  この会社に勤めるということは、会社の好業績を支えるための歯車になることを意味している。この激務な会社で働いている間は、この会社に全てを捧げるような生活になるのは間違いない。つまるところ、社員は柳井指揮官が率いる軍隊と相違ない。  こういったものを見ていると、リベラルが平等平等と叫んでも、こういった会社への奉仕は、厳しいビジネス競争の打ち勝つためというお題目の合法的な奴隷制度なのかもしれない。  しかし、こういった企業があるから日本の国富は先進国に留まれるのだ。だから、日本に取っては、一定数以上、このような企業は存在しなくてはいけない。 (「メキシコの漁師」にみるビジネス社会への皮肉) 「とても魚釣りが好きな漁師がいた。漁師は好きな時間に起き釣りをし、子供や友達と楽しく遊ぶ毎日を過ごしていた。そこに、アメリカの観光客を運ぶ小さな漁船がメキシコの小さな島に着いた。船から下りると、旅行者人の一人がメキシコ人漁師に尋ねた。「すごいね、どれくらい漁をするとこれだけ大量に釣れるの?」「いや、昼のちょっとした時間、海に出て漁をしただけだよ」  それを聞いた旅行者はビジネスの好機ととらえ「漁をする時間をもっと増やして、もっと多くの金を稼いだらどうだい」というと、漁師は「なんでそんなことしなくちゃいけないの?。これで十分生活が成り立っているよ」と言った。すると旅行者は、「それなら、余った時間は何しているんだい?」と聞いた。漁師は「朝はゆっくり起きて漁に出る。その後は子どもと遊んで、女房とシエスタする。 夜になったらバーで友達とギターを弾きながら歌をうたって。これで一日は終わる」と説明した。 今度は旅行者がビジネスマンの立場から漁師に言った...

AI革命は両刃の剣

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 (目まぐるしい科学技術の進歩)  科学技術の飛躍的な発展により、人々の生活はより高度にそして快適になった。しかし、これらの発展は人間の作業を簡便化する役割が大半だ。例をあげれば、車や飛行機、テレビ、ラジオ、コンピュータなどで、さらにこれら製品を作るための画期的な大量生産方法や生産設備、農業においては食糧増産の化学肥料となどである。これらは、大衆化の均一性に対し生産性を高めるものであり、更なる発展を促すためには、人のもつ闘争本能や感情などの多様性制御を促すツールが必要になる。 (競争がない社会は発展しない)  人間社会は、ちょっと前までは王政を強いている国が多く、ほんの一部の支配者層と既得権益層が国富を独占し、圧倒的多数の国民は貧困生活を余儀なくされる封建社会が一般的であった。その後、産業革命により資本主義が台頭するが違った意味での壮絶な格差社会が引き起こされ、これに反するように貧富のない社会を目標とした共産主義思想の国家が台頭する。しかし、競争がない平等下の社会では、人は自堕落になりやすく、良悪はあるが過酷な競争でしか富や科学的進化が生まれない事が判明した。現在においては、西欧諸国では資本主義でありながら格差をできるだ少なくする社会性民主主義国家が一般的になっているが、科学技術や産業の発展という点では、資本主義国家である米国と圧倒的な開きが生じている。 (科学技術は人類の感情コントールにまで踏み込んでいない)  そもそも人の才能は均一ではない。例として、教育において40人クラス全員に東大目指した学力をつけさせる。スパルタな練習でプロ野球選手やサッカー選手を目指させる。こういった取組のもとで、どんなに頑張ったとしても東大合格、プロ野球選手になれるわけではなく達成率は極めて低い。そもそも才能格差に対する社会の答えは曖昧なままである。  さらに能力が均等であっても、組織内においてはパーレートの2:8法則に従って活躍できる人と出来ない人に分かれてしまう。組織内では上り詰めるためには、大抵の場合、実力ではなく、特定の人に気に入られる裁量の側面が大きい。さらに、国家間においてもその国のメンツが正義より重きをおかれ、マスコミの報道も真実というより当事者が信じる正義感というフィルターでの報道に終始している。 (AIによる人の管理という革命)  AIの発展は著しい。2030...

米国以外に株式市場を牽引できる国はない

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 ( 西欧諸国の相対的地位の低下)  株式市場においては、30年近くの間、米国1強が続いている。実際、世界市場の時価総額では、米国はその大半を占める。しかし、経済規模という点では、30年の間に中国が世界2位の大国になり、BRICSやその周辺新興国も台頭したことで欧米諸国の相対的地位は大きく低下し、東西間の経済規模逆転も視野に入っている。これらを踏まえ、10年後に世界をけん引する相場は何処かを考えてみた。 (国別の産業進展度をカテゴライズ)  専門家から見れば厳密な定義ではないが、各国の産業の進展度を下記に分類してみた。  ①発展途上国型(Ⅰ):先進国企業の工場進出があまりされておらず発展が遅れている地域で、一人当たりGDPは極めて低い(アフリカ、中南米etc)  ②発展途上国型(Ⅱ):資源や農産物等で一定の外貨を得ているが、富める者とそうでない者の格差が著しい(中東、ロシア、南アフリカ、ブラジルetc)  ③発展途上国型(Ⅲ):先進国企業の工場進出が盛んな地域。①②の発展型であるがグローバル企業の工場進出により中間層が拡大(メキシコ、東南アジア、インドetc)  ④準先進国:先進国からの下請けを脱し、先進国を凌駕する企業や産業が登場。(中国、台湾、韓国etc)  ⑤先進国:西欧諸国。日本。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドetc  ⑥超先進国:米国  これら区分は①⇒②⇒③⇒④⇒⑤⇒⑥の順で産業が高度化していく。しかし、区分間において上位に移動するには、産業構造の大きな変革や新陳代謝を起こし既存産業の既得権益層の特権をもぎ取る必要がある。それにより非既得権益層に富が流入し、中間層の厚みを持たせることで、その国が大きく成長して株価も長期上昇トレンドを形成する。逆に、こういった革新がない限り大きな上昇相場は見込めない。 (相場上昇と経済成長の非相関) 日本は、戦後のGHQによる既得権益層へのドラスチック解体により、その後の高度成長期と株式上昇が見事までにリンクした。1949年の日経指数150円程度が1989年には38915円の250倍強まで上昇した。これは戦前の超格差社会から一億総中流社会への切り替えに成功したからと言える。その一方、多くの新興国では先進国以上の経済成長をしているが、成長の果実を一部の既得権益層が独占しているため、株価指数の上昇という点では...

ジレンマを抱える超優良企業SMC

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 SMCは空気圧制御機器を軸とした自動制御機器のメーカーであり、自動制御機器は、基本型約12,000種、カスタマイズ品を含めると約700,000品目という膨大な製品群を誇っている。 (SMCの概略) 1959年4月に焼結金属工業株式会社を東京都千代田区にて設立。創業者は東京タングステン株式会社に勤務していた技術者大村進氏であった。創業翌年の1960年には空気圧機器の製造に参入し、部品から完成品へと事業領域を拡大した。これは、工場内のオートメーションの進行とともに引き合いが増大し、導入コストも安いことが他の自動化機器(機械制御・油圧制御)と比較されたときの優位性であった。1988年の株式上場の時には、売上高の90%が空気圧関連製品になっていた。 SMSの創業期から専務として社の成長を支えた髙田芳行氏が、1989年に社長就任から約30年超にわたりトップダウンでSMCの経営に従事する。その間に、空気圧機器の国内シェアが7割弱で世界シェアも3割強でトップシェアを獲得し、この分野においてはドイツのフェスト社 (Festo) との世界2強を構成するまでに躍進した。2019年には、ご子息の高田芳樹が二代目社長に就任し現在に至る。 (無双状態の経営力)  SMCはまさに無双状態の堅牢なビジネスモデルを有しており、誰がやっても優良企業を維持できてしまうほどである。  これらは、前社長が新製品の開発や生産技術の研究に没頭しながら、徹底的なコストダウンの追求を極限まで成し遂げた結果であり、メーカーでありながら営業利益率は25%を維持し、自己資本比率に至っては90%まで高い。製造業に必要な開発・研究においても単年の利益で十分に吸収できてしまっている。さらに株式発行数も抑えているため極限に近いような高値で株価も推移している。まさに、日本の製造業においてトップレベルを競う優良企業である。 それだけでなく、空気圧機器業界の世界市場動向は、2022年に約697.3億ドルとなり、予測期間中に年平均成長率7.13%で拡大し、2029年には1,129.2億ドルに達すると予測されている。これをそのままトレースすれば、SMCは苦労することなく増収増益を達成やすい環境下にあるということである。 (創業2代目のボトルネック)  この会社の次なる成長へのボトルネックは2代目髙田芳樹社長の経営力であろう。結...

フジHD㈱暴騰に見る株式投資の非科学的要素

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  電車の中で隣に座っているおじさんがスポーツ新聞を真剣に読みながら馬券の購入を検討している。記事には馬の健康状態(コンディション)、馬の性格、過去レースの実績、そして馬を乗りこなす騎手の実績、最後に評論家の総合的なコメント、雑誌側の独自の順位予想 (株価は未来のファンダメンタルまで織り込む) 投資家は四季報などを読みながら。会社の直近の経営状況、提供している商品や技術の強み、景気又は産業動向、そして会社の社風と経営陣の評価、最後に評論家のコメント、想定される株価のレンジ。投資家はそんな情報をくみしながら投資判断する。  この二つに何が相違があるのか?形は違へど構図に大きな相違はない。 「競馬新聞に書かれている内容」と「経済誌に書かれている内容」は形は違えど著者の恣意的な表現や判断が入っており、客観的な情報とは限らない。伝えるものにフィルターが入っている。 (どこまでの未来業績を織り込んでいるかは銘柄毎に異なる)  さらに株式投資で最も難しい所は、各々銘柄の価値(株価)が、どの程度先までの情報や見通しを織り込んでいるかであり、残念ながら誰にも分からない。さらに銘柄ごとに織り込み具合は異なっている。だからこそ、最高益の決算を出しても株価が下がったり、大きな赤字を出しても株価が上がるという現象が生じる。 この事実は投資家にとって、ネットや書店からの情報など役に立たないことを示唆している。これら情報は株式市場ではすでに織り込み済みだからだ。そのため、勉強熱心で素晴らしい会計知識を持っている投資家ほど投資成績が振るわないことが当たり前のように起きてしまう。エコノミストが有能な投資家になれない理由もそこにある。  (フジメディアHDに株価の非科学性)   フジメディアHDは、フジテレビの不祥事でフジテレビ自体が壊滅的な打撃を受けている。親会社である ジメディアHDにしても、決算という点では数年間は劣勢を強いられるのは間違いない。そういった状況下なら普通なら フジメディアHDの株価は大きく値を下げるのだが、 フジメディアHDの株価は逆に暴騰している。投資家は何を目的に買い込んでいるのかは私にはわからないが、この暴騰で大儲けする投資家がいるという事だ。そこには、高尚な財務理論などない。あるのは投資家それぞれの思惑と仕手戦のような株価変動に群がる...

TSMCの日本進出から垣間見える日本人の西欧人化

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 (日本企業の相対的な地位の低下)  つい最近まで、日本企業における日本人従業員の給与は東アジアでダントツに高かった。成熟した高所得国である国が経済発展を続けるためには、新陳代謝を繰り返しながら新技術で世界を席巻し続けるか、生産性の向上に活路を求めざるかのどちらかしかない。それは官僚化するオールドエコノミーに依存せず、アントレプレナーを育てて新たな産業を作り続けることにある。日本はこういった循環が停滞している間に、中国や韓国、台湾は日本の得意とする分野に猛追し、そして追い越すまでになった。 (TSMCの日本誘致)  そのような現状を打開する手がかりとして、TSMCの熊本工場進出が出てきた。日本国民の性格上、韓国、台湾、中国の大企業が自らの戦略で日本に工場を建設して一大製造拠点にするとしたら、マスコミを含め多くの日本国民は拒否感を抱くであろう。この案件は米国主導の安全保障問題から始まったサプライチェーンの再構築の一部であるが、日本政府側も約1兆円以上の巨額の補助金を付けるなど、TSMCに対し強烈なアプローチをして熊本誘致したことには違いない。  日本政府から見ると、日本には優秀な技術者がたくさんいる。没落しかかっている日本の製造業に対し、世界一の半導体メーカーから成功の手ほどきを学んでもらう。TSMCから見ると日本の潜在的に優秀な技術者を発掘し、企業競争力をさらに高めていく。そんな思惑が見え隠れする。 (日本とは異なる労働文化)  実際に工場を建ち半導体製造がスタートすると、そこには日本とは全く異なるドラスチックな世界があった。賃金は欧米企業水準の高給であるが、労働体系は、ブラックどころではない労働環境+米国流の実力主義がハイブリットされていた。スキル有無に関わらず根回し文化で年功序列の社員を大切にする日本の企業文化などは存在しない。  このように勤勉と言われた日本でさえも、TSMCからは日本人は思ったより能力が低く働きも悪い。という声も聞こえてくる。この違いこそ、中国や台湾などの企業が日本を押しのけて世界を制覇してきた源泉であり、日本においても西欧に追いつき追い越せと寝る間を惜しんで働いた高度成長期の残像を垣間見ているようだ。  (米国政府のしたたかさ)   米国政府は、そんなTSMCに最先端の半導体工場を強制的に作らせている。しかし、T...

投資家から見たフジメディアHDの今後

   (フジテレビの隆盛)  フジテレビの隆盛は、1980年代に鹿内社長がこれまでの昭和的な硬派な番組作りから、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだナンパな路線への転換をきっかけに、民放テレビ局の地位を上げていった。番組制作においては、比較的スマートなお笑いタレントを積極的に起用し、女子アナをアイドル路線に変更させ、ドラマなどでは高級マンションを舞台に人々の憧れを誘うトレンディドラマを切り開くことでフジテレビの地位を確立していった。 こういった取り組みは、バブル景気に向けて日本人が世界一の金持ち国に差し掛かっていくのに合わせて、人々が求めるより洗練された生活スタイルに適合していき、フジテレビは絶頂期を迎えることになる。その基礎を確立させたのが紛れもなく現相談役の日枝久となる (停滞) バブルが崩壊して就職氷河期が訪れると若者は社会の厳しい現実に直面することになる。 2000年頃になるとバブル世代も中年に差し掛かっていく。 その数年後にはインターネットの普及で若者のコミュニケーション場がネットに移行するようになり、人々の趣向の多様化が顕著になる。人々は、テレビからの均一化された情報を求めるのではなく、ネットから自分の好きな情報だけを得ようとしている。 フジテレビの経営陣はこういったトレンドの変化を真正面から受け取れずに過去の成功体験に執着した番組制作を続けている。もう、子供、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になってお茶の間で同じ番組を楽しむ時代ではなくなったことを意識していないように。こういった時代錯誤こそ、 日枝久の院政による弊害であることは紛れもない事実である。 (コングロマリットによる経営の分散化) とはいえ、 日枝久 はインターネットの台頭に備えて、フジメディアHDとしてコングロマリット経営に軸を移すようになった。テレビ業界の収益低下を補填するような事業体制を着実に構築していた。今回の不祥事の顛末においてもフジテレビ自体は大きな打撃を受けるが、親会社であるフジメディアHDが経営危機に陥るまでのレベルにならない。このように分散化は図っているものの、 フジメディアHDの役員は、フジテレビの有能な番組制作プロデューサーに占められている。日枝氏には、 フジテレビこそ フジメディアHDの中核から外したくないのであろう。 (今...

トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること

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 ドナルド・トランプが1月20日にアメリカ第47代大統領に就任した。これから様々な破天荒な政策が打ち出されることが予想されるが、超貴重ともいえる1988年のインタビューから、その源流を読み取っていきたい。 トランプとの会見 Interview with Donald Trump by Shu Ueyama 1988 (要旨) ・ 1988年頃のトランプは新鋭の企業家であった。そして、有能な若手経営者としてマスコミに取り上げられていた。この時代は今ほどグローバル化が進んでいない状況を踏まえると、日本の経済番組で取り上げられている自体、世界的に見て相当有名なビジネスマンである事が伺える。 ・まさにハリウッドのスーパースターのように派手な生活や行動が好きな事が伺える。 ・成功の要因は「相当な努力とやる気、そして才能、さらに運も大切な要素だ。才能は万人に与えられていない。成功も同じだ。だから私と同じことをしても成功するとは限らない。」 ・政治に対しもビジネスマンの視点で論じている。特にこの頃の日本はバブル景気で「ジャパンアズNo1」と言われていた時代であり、なぜ米国が軍事的に多額の費用を使って、日本の多大な貿易黒字を支えなければいけないのかと述べている。その一方で、日本が米国に多額の投資をしていることに対し歓迎している。 ・取引においては、双方で利益を得るべきであるが、現状は米国だけが損を被っている状況、それが許せない。 ・今はその気はないが。米国の政治家が、国益を損なうような事を続けていくなら、選挙に出て大統領を目指すかもしれない。 (インタビューの個人的感想)  トランプのビジネスには、ハリウッドのセレブリティ世界の具現化が見られる。その源流はトランプが青年期を過ごした1950-1960年代の華やかな米国であり、それは「MAGA」思想に現れているようだ。これは日本で言えば、高度成長期の日本を追い求めているのと似ているのかもしれない。  トランプは一匹オオカミ的な経営者との表現もあり、自分の才能と努力と運を味方にして、のし上がってきた自負があり、その結果すべてをDeal視点で考えるようになっているようだ。 (インタビューから垣間見る今後の米国の政策の行方)  ①トランプは、一方的な取引を望んでいるのでない。米国に不利にならないような取引を望んでいる。つまるところ、「米...

韓国の報道に対する一方的な論調について

 私は中国の報道の矛盾について書いたが、韓国についても同様に偏向とも言える記事が目立つ。 まず、日本と韓国の立ち位置を冷静に見つめていくと、一人当たりのGDPで日本は韓国に追い抜かれている紛れもない事実がある。内情はどうであれ。日本と韓国はほぼ同一の生活水準に到達してしまった。  考えてみれば、中国もそうであるが、ここ20年から30年で日本は中国や韓国に圧倒的な経済的大差をつけていたにも関わらず同等又はそれ以上いたるまで猛追されてしまった。これは当時20歳の頃の感触と50歳の頃の感触では、コペルニクスの地動説のような大きな転換が起こったことに等しい。こういった事を冷静に分析している識者がほとんど皆無で、どちらかというとその人の立場や感情論で物事を論じているように思えてならない。  マスコミなどの情報を追いかけすぎると何が真実であるかが不明瞭にあり、投資家にとって、情報収集をしようとしても、そのほとんどが投資材料になっていないのが現状である。 そんな代表例を下記事から述べてみたい。 忍び寄る低成長、韓国を労若男女の「生きづらさ」 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/010800457/010800003/ ①「サムスン電子の苦境」はなんなのか サムスンの問題を指摘しているという点では優れた記事かもしれない。しかし、他と比べてどうなのかということである。正直って、サムスンの問題より日本の企業の問題の方が深刻で手に負えない。例えば、日本のパナソニック、東芝、日産などの日本株式会社の製造業の凋落のほうがもっと酷い。この記事はサムスンが自国の企業なら更なる発展を期待し、辛めの記事もよいのだが、韓国でもっともすぐれた企業の記事なら単なる反韓記事の何者でもない。 ②「先進国で最悪水準に苦しむ高齢者」  これについても、記事自体は間違いではないが、そういった記事を上目目線で書くほど日本の高齢者福祉は素晴らしいものなのかということである。年金においても、日本の年金給付水準はかつて世界でもトップクラスであったが、今となっては給付額がここ数十年横ばいにもかかわらず、社会保障費や税金を課せられることで驚くほど手取りが目減りしている。それに加えて、ここ最近のインフレにより、日本人の平均年金受給者は年金だけでの生活が困難になりつつある。どこの国も底辺...

テルモ 経営のプロが担うグローバルニッチ経営

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テルモは、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で多様な医療現場、製薬企業などに製品やサービスを提供する医療機器メーカーである。当社の飛躍は、1990年代ごろから技術力の高いカテーテルが大きく伸長したのと海外企業のM&Aを繰り返すことで事業を拡大してきたことである。  テルモは、株価については浮き沈みを繰り返しているが、医療機器分野のグローバルニッチ市場で優位性を保つことで、着実な売上成長、かつ高財務を維持し、長期的に上値を切り上げてきた優良企業である。 (参入障壁の高いビジネスモデル) テルモの医療機器メーカー世界ランキングは15位(約0.69%)、最大手のメドトロニック(2兆円弱)。ボストンサイエンティフィック(1兆円強)と比べると規模面での小粒感は否めないが、カテーテル治療に使うガイドワイヤーのグローバル市場シェアは60%、血管に入り口をつくるシースイントロデューサーは45%などで世界シェアトップを獲得している。  一般に、医療機器は承認取得が難しく、新規参入からその業界内に大きく食い込んでいくハードルは高い。さらにニッチ分野という大手企業が参入をためらう領域で優位性を発揮しているため、テルモの事業には堅牢性がある。今後は高齢化社会の進展による手術数の増加も見込まれ、テルモにとってのビジネス環境は良好なものとなっている。 (巧みな事業拡大戦略) テルモは、1999年以降、以下に代表される買収で、急速にグローバルニッチ化を進めてきた。 1999年 米国3M社から人工心肺事業を譲受 2002年 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社 2006年 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社 2011年 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社 2016年 シークエントメディカル(脳動脈瘤用塞栓デバイスの開発・製造・販売) 2017年セント・ジュード・メディカル(大腿動脈穿刺部止血デバイスの開発・製造・販売) これらを通じて、テルモの連結子会社は9割以上が海外法人となり、売上海外比率は70%に及び、その内訳としてアメリカがトップで、欧州の比率が高いなど事業エリアの分散化が程よく図られている。  (プロ経営者による統治)  佐藤慎次郎元社長そして鮫島光社長は、ともに東亜燃料工業出身で、米国流の経営が...

ダイフク 総合マテハンの今後

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 ダイフクは、マテハンの大手である。当企業は、工場内の運搬の自動化では世界トップレベルの技術を有している。新型コロナウイルス禍で電子商取引(EC)向けが伸長したことから、市場の成長期待が膨らみ一時期はPER50倍以上で推移した。これら事業はこれから更なる発展が見込まれることから、ダイフクへの恩恵も期待される。 (直近の状況待) コロナ禍も静まり、人々は街でショッピングをするようになり同社の株価もPERは20~25倍前後で推移している。  主力の搬送機器は小売り向けなどの需要が旺盛で、空港施設向けは低採算であるが、航空需要が回復する中で人手不足解消による需要が見込まれている。自動車施設向けは、ハイブリッド車(HV)の混流生産など更新需要が見込め、半導体施設関連は、AI関連の後工程向け搬送システムの需要拡大が見込まれる。技術開発で先行するダイフクにとっては当面の安定成長が期待できる見込みだ。 出典 「マテハン(マテリアルハンドリング)業界の世界市場シェアの分析」 https://deallab.info/material-handling/ (規模拡大の課題)  売上高全体に占める海外の比率が7割近くあるが、海外の認知度は高くない。シェアは5%前後だ。収益率は、国内は10%強に対し、海外はその半分に甘んじている。 これ以降の発展は、現地企業との連携や買収による受注高の拡大をテコにダイフクの強みとなる技術力を発揮することが理想的だ、その際、現地企業の従業員をダイフクの従業員レベルまで教育し、スキルを引き上げていく必要がある。現地法人社員に惜しみなく特殊ノウハウを移管することは、ダイフクが得意とするマテハンの特殊技術を一般に公開するのと同じであり、特にチャイナ系の優秀な人材は、その後自ら起業し、ダイフク以上の巧妙な利益管理をすることで、ダイフクより安く技術力も高い企業が現れてくるのは自明だ。  このため、はじめは業績好調をけん引する要因になるが、10年もすれば類似の企業が特に中国系に関して現れ、ほかの産業と同じようにその企業が世界を席巻しています。中国は14億人の国家であり、日本と比べ物にならなく多くの優秀な人材がいることを忘れてはなたない。 日本の製造業において、中国や韓国に猛追されたのは総合製品であり、部品や材料分野は両国とも追いついていない。マテハンについても...

ユニ・チャーム 欧米ブランドとの勝算

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 ユニ・チャームは、生理用品、紙おむつ(乳児用、大人用)などの衛生用品の国内トップメーカーである。この分野は赤ちゃんから高齢者まで様々な年齢層だけでなく、果てはペットまで広範な領域にまたがっており、日用品に近いがゆえにブランド力の構築が経営上の重要なファクターになる。ユニ・チャームは、アジアやアフリカなどの発展途上国を中心に、これら国の黎明期にブランド力を確立させ、発展期に移行する過程での需要拡大を享受する戦略を打ち立てている。 (ユニ・チャームの市場動向)  おむつ市場における大まかなシェアは   1位 P&G 16.6% 2位 キンバリークラーク14.1% 3位 エシティ 11.0% 4位 ユニ・チャーム 7.5% 5位 オンテックス 3.1%  である。ユニ・チャームのシェアはアジアでの強みを発揮することで世界シェアの上位に食い込んでいる。同社の海外売上比率は、総売上の7割弱で、さらにその7割をアジア諸国で占めているが、巨大市場である中国に大きく依存することなく、様々なアジア諸国でのビジネス展開に成功している。  この企業の重要な戦略として、アジア地域などの発展途上国に対して、衛生教育を施すことでユニ・チャーム製品への愛着を促す戦略をとっている。こういった草の根ベースでの取組は商品の信頼性を強固にするものであり、そういった点では、ヤクルト同様に欧米型のマーケティングに引けを取らない独自戦略を打ち出している。 (ユニ・チャームの決算状況)  ユニ・チャームの決算は常に増収増益を成し遂げている。この企業は、海外事業に対して順調に売り上げを伸ばしていることから、日本における最優良企業の一つとして扱っても差し支えない。この会社は創業家である高原氏の優れた経営力に支えられており、今後も増収増益の決算を続けておける可能性は非常に高いことから、長期的には綺麗な右上がりが予想される。 (ユニ・チャームの今後)  ユニ・チャームの事業分野にブランド力の強化は必要不可欠であるが、欧米メーカーと同じ立ち位置でのマーケティング戦略をしたら、やがては敗北を強いられ欧米メーカーに飲み込まれてしまう。ブランド戦略においては欧米以外の企業が優位性を保てた例はほとんどない。ユニ・チャームは、当面の間、新興国でブランドを高めながらそれら国の所得上昇に連動するように業績を上向けてい...

中国とインドの隆盛が引き起こす東西覇権の交代2(BRICSの台頭)

前回記事  中国とインドの隆盛が引き起こす東西覇権の交代(世界の潮流) https://investment-v3.blogspot.com/2024/06/blog-post.html#google_vignette (BRICSの台頭)  BRICSに関しては、近ごろ拡大の動きが顕著になってきた。 ・インドネシア、BRICSに正式加盟 11カ国に拡大(1月7日 日経) BRICSの加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国に加え、サウジアラビア、イラン、エチオピア、エジプト、そしてインドネシアの11カ国にまで膨れ上がった。さらにパートナー国には13カ国(インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、ウズベキスタン、カザフスタン、ベラルーシ、トルコ、アルジェリア、ナイジェリア、ウガンダ、ボリビア、キューバ)に及んでいる。 BRICS加盟国の人口は合計35億人と世界の約45%を占め、経済規模は合計28兆ドル以上となり、世界経済の約28%に相当する。(JETRO 2024年10月31日) (西欧諸国のピエロ化) これら加盟国には、明らかに西欧諸国から制裁や敵視されている国も含まれている。ロシアに至っては、日本を含めた西側諸国から見ればウクライナ戦争で悪の枢軸国との扱いだが、BRICSからのいわば新興国からの世界から見れば、全く異なる世界が見えてくる。西欧の正義が必ずしも、これらBRICS加盟国の正義ではないことは明らかだ。そして、西側がいくらロシアを非難しようとしても新興国の多くはそれに追随すらしない。 なぜこのような西欧諸国のピエロ化が起きっているのであろう。それは、本当の意味での西欧列挙による世界統治の終焉と言えなくもない。ほんの20年前までは、イギリスもフランスもかつての植民国家に対し影響力を保持していた。しかし、中国やインドが台頭するにつれ、これら国々の影響力は年々小さくなっている。香港においては、イギリスとの2047年までの1国2制度の約束すら中国にいとも簡単に反故されてしまった。今となっては西欧は小さな国の集まりに過ぎず、新興国は長年にわたって続いていた米国や西欧諸国の利権からの脱却という側面からBRICSに参加を希望している国も多いのも事実だ。世界が多極化しており、この流れは加速する一方で20世紀初頭の勢力図に戻ることはない。 (米国政...

江戸時代から今後の日本をスクリーニング

今後の日本経済を占う上で、江戸時代の経済を調べてみた。 (江戸幕府の経済状況)  江戸時代初期は、新田開発などが盛んに行われ高度成長期を迎えていた。しかし家光は家康が蓄財した多額の財産を日光東照宮などに投じた結果、幕府の財政はひっ迫するようになった。五代将軍綱吉は貨幣改鋳により貨幣を多量に供給したことから元禄バブルを引き起こしたが、インフレなどの副作用が生じた、こうしたことから幕府は幾度にわたる財政改革を行うも好転せず財政赤字は膨らんでいった。結局のところ、ペリー来航の黒船により鎖国を解かれることで欧米列強の国力を目のあたりにし、新しい日本を建てるべく明治維新という革命で江戸時代は幕をひくことになる。 (主な経済推移) ①元禄バブル  江戸初期の高度成長期は、新田開発が限界を迎えたこと。金銀鉱山の産出量が減少したことで幕府の収入は頭打ちになるが、綱吉は貨幣改鋳を行うことで貨幣を大量に供給し「元禄バブル」を引き起こした。  これ以降、幕府の財政悪化は深刻な事となり、幕府は②~⑦の緊縮と緩和財政を繰り返すことになる。 ②正徳の治(緊縮財政) 新井白石 (1711~1717)は、綱吉時代の放漫財政を立て直すべく、生類憐みの令の廃止、貨幣改鋳を改め、貿易量制限による銀の過剰な流出の阻止などをする。 ③享保の改革 徳川吉宗 (1716~1745)が、幕閣に倹約を強いて、新田開拓、商品作物を推奨することで、税収を増加させることで幕府の財政を立て直そうとする。 ④田沼時代 幕府財政の立直しを、米中心の経済から重商主義の貨幣経済への転換を図るが、商人の風紀を乱すなどで不評を買って失敗する。  ⑤寛政の改革 松平定信 (1787~1793)は。田沼時代を金権政治と見なし、緩みきった風紀を引き締め、質素倹約を強いることで幕府の財政を立て直そうとした。 ⑥徳川家斉になると幕府の支出の拡大することで江戸は好景気になり、化政文化が花咲く。 ⑦天保の改革(緊縮財政) 水野忠邦 (1830~1843)は、倹約令を施行し、風俗取締り。農民の農村への人返し。さらに江戸や大阪周辺を上知令で幕府直轄地使用したが失敗 (人口推移)  人口推移をみる限り、高度成長期の終焉の綱吉時代を契機に人口が横ばいになる。日本もバブル崩壊し、その後形は違えど少子高齢化が起きて、人口減少社会をひた走っている。江戸時...

「一極集中」相場とインデックス投資の黄昏

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 私は株式投資歴が長く、バブル崩壊真っ只中の 90年代後半から株式投資をしている。  90年代の日本経済はバブル崩壊による景気低迷に見舞われていたが、世界第二位という周辺国から見れば圧倒的な経済大国であった。ほとんどの日本人はバブル処理が解決したら、かつての高度成長期の日本に戻ると信じて疑わなかった。 ( 90年代後半のITバブル )  90年代後半のITバブルをけん引したのは、NTT3兄弟、富士通、NEC,ソニー、ソフトバンクであり、重厚長大銘柄には資金が向かわなかった一一方、その頃の米国株は、マイクソフト、インテル、シスコシステムズが時価総額上位に躍り出たが、オールドエコノミーと言われる優良銘柄も堅調に推移していた。 (2010年以降の一極集中トレンド)  2010年以降の市場の変調、それはGAFAの台頭であり、時を経るにつれてGAFAに資金が一極集中して行く。これにマイクソフト、エヌペディア、テスラが加わってマグ二セントセブン時代を形成していく。   私自身は、長い間、投資資金の一極集中の意味を理解しかねていたが 、ロイターの珠玉記事で、少し回答が得られたような気がする。 米国株、一部銘柄に投資集中 空前のレベルは危険な兆候か  https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/ME2ALQGNH5PL5PHMAB3HNYWRHQ-2024-06-13/ この「一極集中」相場は米国だけなく、世界の至る所で起きており、米国より一極集中していないのは、日本、中国、インドだけとの事。一極集中していない国の共通点は、「どの国も大国であり、国の経済が特定のトレンドに左右されていないほど広範に渡っている。」ことである (世界経済成熟化の証し)  この一極集中が示すことは、世界は想像以上に成熟化しているという事。だからこそ、未来に向けて成長が見込まれる一部のハイテク銘柄にしか過剰なマネーが向かわない。 どうも、この流れは、世界中の投資環境において後戻りできないようだ。 妄信すると痛い目見る「S&P500」超不都合な真実       https://toyokeizai.net/articles/photo/664329?pn=3   (インデックス投資の長期停滞のシナリオ...

今後20年後を見据えた大学(辛口)戦略 その1

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  少子高齢化による18歳人口の減少から、大学受験者の減少が危惧されているが、現在のところ女性の四大進学が大幅に上昇したことから何とか体裁を保っている。しかし、一定以上の学力を保持している層が大きく減少していることから、大学側は一般入試での偏差値低下を防ぐべく推薦入試に力を入れるようになった。その結果、上智や関学のように一般入試率が50%を切る大学が現れ、さらには、私立最高峰の一角である早稲田が推薦率を60%まで引き上げる公言をするに至っている。  一方、中堅以下の私立大学に至っては、推薦入学を大学の定員確保に利用し、いわゆるBF大学を増殖させている。 (軽量すぎる私立の一般入試)  受験業界では、国立大学が圧倒的に優位である。まず、試験問題のボリュームが全く異なり、難関と言われる国立大学に合格するためには、6教科9科目の難しい共通テストで7割以上の点数をとり、二次試験においても比較的難しい論述問題を解かされる。一方、私大の科目数は多くて3教科、今となっては、2教科や1教科すら常態化している。総合的な学力という点では、私立は国立に太刀打ちできない。そういう点では、難関国立大学からみたら、多くの私立大学は大学と呼べるものではない。 (私立の3教科入試こそ総合選抜)  国は、欧米に見習って受験者の能力の多角的に評価するという観点から総合選抜などの推薦入学を推進している。しかし、国立大学からすると、私立大学の入試自体が特定の科目に特化した推薦入試とも言えなくない。5教科でみるのではなく、得意とする1~3教科で勝負する選抜入試とも言える。とは言え、早慶はもとより、MARCHなどの上位私立大学は上位国立とそん色ない活躍をしている人も少なくない。平たくいえば、国語的な論述能力と社会科目全般に強ければ、社会の至るところで活躍できるという証明に他ならない。5教科全てに対して長けている必要はないということだ。 (早慶の少子化戦略)  今となっては、早慶ともに一般入試率が50%台である。約半数を推薦の対象にするとなると当然であるが、学生の人的リソースの低下を招くのは必須である。しかし、マンモス大学である早稲田は、たとえ6千人の非一般試験の学生を確保しても、残り4千人に対し学力の高い学生を集めれば、1学年あたりほんの1~2%の成功者を生み出せることに自信を持っているのであろう。1...