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21世紀的幸福論(地方生活、3世帯家族)

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日本では。より収入の高い職業についてより良い生活が叶えられるように、馬車馬のように競争社会で闘い続ける人生を多くの人が強いられている。その結果、医師や総合商社マンのような高収入な職業に就いた者が人生の勝ち組として憧れの的になる。一方、大多数の人たちは、十分な収入が得られず、日々お金と格闘し老後不安を抱える人生を強いられている。しかし、そういった現状の価値基準を少し発想を変えれば、違う世界が表れてくる。例えば、両親のリソースを借りられるならそれを最大限に利用すればお金に対する束縛から逃れられる。都会に未練がないなら地方で豊かに暮らす。21世紀にはそんな発想転換も必要なのである 1 地方過疎化の裏側にある豊かさ  少子高齢化による地方過疎化は、産業衰退や街のゴーストタウン化など深刻な問題を生じさせている。しかし、下記は総務省のデータである。これを見る限り、地方都市の世帯当たりの平均収入はそれほど低くない。信憑性の高い統計から読み取れる事として、過疎化は進んでいるものの、物価面などを考慮すればば都会と地方間での収入格差はそれほど著しいものではない。一部の県においては都心より明らかに裕福であるという実態すら浮かび上がってくる。 これの意味する事は、地方では製造業中心に海外移転が進み市街地が衰退している。とはいえ、地元でそれなりの仕事に就いている人たちの生活水準はそれなりに高いということだ。 2 地方の知られざる現実   これら統計値において特筆すべきは富山県であり、都道府県の世帯当たりの所得ランキングで4位という順位を記録している。日本海側の北陸という過疎地にも関わらず、首都圏と同等の所得を得ているのだ。富山県のホームページには、これら理由として富山県は地元を地盤とする中小製造業が多い事。3世帯同居し、嫁、両親(祖父、祖母)も一緒に働くことで世帯収入を膨らましている。地方は都会に比べて不動産や生活費が安い。それなりの収入が得られれば、高い生活水準を得られることも可能だ。 3 地方での生活を逆手に取る  核家族世帯では、これまでは夫が働いて、妻がパートや専業主婦のスタイルで家計は夫の収入の一本足打法のようなものであった。このため、夫の会社へのしがみ付きは相当なものとなる。都会では、一生かけて購入したマンションも2世帯が住むには狭すぎて、子供はゼロベースで人生を歩むことを延々と...

米国株投資の選定戦略

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前回更新日:2024/05/25 1.米国市場の弱肉強食の非情さ ここ40年間、ダウは右肩上がりを続けている。このため、米国株に投資をすれば無条件に儲かりそうなイメージを持たれやすいが、米国株は日本以上に企業業績と株価が連動している。このため、たとえ米国市場が上昇相場でも、企業業績が振るわなければ非情なまでにその銘柄の株価を奈落その底に突き落とす。このように甘えの許さない米国市場では、長期間に渡って インデックスと連携している銘柄など殆どない。 2.銘柄分析 ①ファンダメンタル分析の無意味さ 株価が上昇しやすい銘柄は未来に輝くような期待値のある企業であり、投資家は無意識に企業における現在および数年後の企業業績を逆算している。こういった期待値は、①企業が販売する商品の将来性 ②増収増益を繰り返すことでの投資家からの安心感 などにより投資家からの高い評価の蓄積から始まる。そういった期待を獲得した銘柄には投資家から多くの資金が流れ込んでくる。たとえ、決算が一時的に振るわなくても株価は下がらない。一方、現状の業績が良くても未来の業績が尻すぼみになると判断される場合は低PERで放置される。このように株価は投資家の期待値という非定量的な信用具合の評価基準で上下に変動し、そのブレ幅は、PERは10倍以下から30倍後半まで約4倍近くに及ぶ。これだけの開きがあれば収益や財務分析などのファンダメンタル分析で株価を予想しても期待通りの結果など得られない。 ②IT業界の超高収益モデルが時価総額を天空にした 2010年中頃から、GAFAM等がIT分野で独占的なシェアを獲得したことで、製造業が到底太刀打ちできない高収益率ビジネスが可能になり、時価総額を天空の領域に導いた。さらに、コカ・コーラやマクドナルドなどの国際優良企業はフランチャイズのような形式を取り入れて、低収益の事業分野を最大限に切り離して高収益を実現している。昨今の時価総額上位銘柄はこういった高収益ビジネスでかつ独占的な地位を築いた企業に集中している。 ③「成長性」が株価上昇の根源  株価は常に現況におけるすべての材料を織り込んでいる。現状のPERや高収益ビジネスだけで上昇軌道を描けるものではない。市場が嫌うのは飽和であり成熟であり、いつでも市場は、企業側にさらなる好材料か更なる成長期待を求めてくる。 こういう要求に応えて成功した例...

遺伝子が人間の未来を支配

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 1.人は常時面白可笑しく、そして楽天的に生活できない  人は、常に不安に駆られることで未来に対する不確実性や周辺から身を守るようにできている。これは人というより生命が地球上で40億年に渡って絶滅しないように培ってきた知恵であり、1万年程度の進化しかない人間の遺伝子にはどうしようもできない本能(機能)でもある。この本能の厄介なところは、科学技術が著しく向上し、安全に生活できるようになった現代人にとって、不安が日常生活におけるリスクテイクと重なり、不必要な事に対して異常なくらい振り回されている。しかし、この機能を取り外したら人間は間違いなく絶滅に向かう。それだけ細菌などのウイルスや地球上の森羅万象は人の叡智を遥かに超えたところにあり、不安というものに駆られなければ人は適切な防御ができないからだ。こういった事情を垣間見れば、遺伝子は不安を煽る機能を取除くことは決してしない。人間は常時面白可笑しく、そして楽天的に生活することは不可能であることを理解しなくてはいけない。 2.オスとメスのそれぞれの生存戦略 ①オスによる弱肉強食戦略  政治家の縄張り争いは、猿山のボスザル争いと大きく変わりない。動物のオスは優れた遺伝子を誇示しようと争いをし、それに勝ったものだけは遺伝子を残すことができる。つまり、メスと交尾をすることができる。そうでない遺伝子を持つオスは、子孫を残すことができない。オスにはそういった弱肉強食がオスの行動原理であり、つい最近まで、争いに勝ったオスの一族は王族などの支配者になり、その周辺の貴族などの既得権益層と共に酒池肉林の贅沢な生活をする一方、圧倒的多数の民衆は過酷な労働を余儀なくされるだけでなく、ろくな食べ物を得ることも出来なかった。 ②メスの戦略による能力平準化作用  一方、メスは優秀なオスを誘惑するフェロモンをどれだけ出せるかで勝負する。オスはメスの能力よりもそのフェロモンに騙されるといって良い。このフェロモンと動物的な優秀さは比例しない。例えたら、超高収入のビジネスマンや医者を目当てにモデル並みの超美人が近づいて結婚することは多い。その場合、母親の遺伝子を継いだ子供は総じて優秀ではなくドラ息子になってしまう。逆に容姿は劣るが頭の良い女性は競争社会で優位性を獲得していない男と結婚することが多いが、母親の血を引き継いで子供がとてつもなく優秀になること...

ヒューマノイドとの恋愛の現実味(近未来予想)

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  1 . 結婚が遠くなり果てた SNSの普及によって、若い層になればなるほど、コミュニケーション能力も低下し、男女の恋愛がそもそも困難になった。会社や公の場所での求愛行動も一歩間違えばセクハラになってしまう。昭和と違い私生活において男女の交際のチャンスは激減している。  そもそも男女の恋愛はロマンチックとは程遠く、お互いの見栄と社会的な拘束の側面が強い。恋愛における「付き合う」という行為は、双方がとにかく異性と付き合いたいという衝動にすぎず、いわば恋愛をしていることに対する他人へのマウンティングや自己陶酔の側面が強い。ところが今の時代は、 ただひたすら 自分本位な気持ちが先行し恋愛がスムーズに出来なくなった。結婚相手に対しては、スペック偏差値、容姿、自分の性格の合う人などの要求を臆面もなくしてくる。これでは、相手側も疲れ果てて、途中で頓挫する。 そういった点では、スポーツやなんかで成功した者や総合商社などの超一流企業に勤めている人は、相手側からみた基礎的なスペック条件が満たされるので、純な気持ちでの交際に発展し、結婚までスムーズに進む可能性が高い。 2.「一生独身」という選択肢  ほんの50年前なら30歳前の女性が独身でいると、それだけで世間的に非常に肩身の狭い生活をおくったものだ。このため、適当な人をみつけてとにかく結婚しなければいけない社会的圧力が強かった。男の方は、40歳近くなって独身でいるとどこかに問題や欠陥があるのではと勘繰られたりした。結婚するということは、適齢期になったら当たり前にしなければならない儀式に近かった。ところが今の時代、女性が社会進出化したことで結婚が社会通念上の義務ではなくなり、選択肢の一つに変化した。このため、男女とも自分の理想の相手を求め続けてしまい、かつてのような妥協を忘れてしまった。そのようなミスマッチのまま年齢を重ねていくうちに結婚を半分あきらめ、一生独身でも良いという気持ちに変化し、独身が増え続けている。 3 . ヒューマノイドによる恋愛革命  男女とも本当はいつの年齢になっても恋愛や結婚はしたいのである。ただし、それは自分自身に都合の良い条件つきだが。そんな事が近未来では現実のものになってしまうかもしれない。それはヒューマノイドロボットの誕生である。自分好みの顔、スタイル、そして性格にカスタマイズする。そうなると、...

家系消滅の時代と「Die with Zero」

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 (家系消滅の深刻さ) 由緒ある家系とそうでない家系。かつて人々はそんなことでマウンティングをしていたが、今の少子高齢化によって家系の良悪に関わらず子供がいない事で自分の代で家系が途切れる危機にさらされている。どんなに社会的に優越的な立場にいても自分の血を引き継ぐ子孫がいないのは深刻な問題である。これは人生後半になればなるほど当事者に重くのしかかって、「土から土に戻る」境地に苛まれてしまう。そういった意味ではすさまじい勢いでの少子化の進行により、あと10年、遅くても20年もすれば、次世代に子孫を残せない老人が大半を占める現状を踏まえ、次世代に向けて子孫を残せている人達が本当の意味での勝ち組であると称される日もそう遠くもない。 (「Die with Zero」時代の到来)  生物である限り、永遠はなく、全ては線香花火のように寿命の制限下で踊らされている。人生の後半になれば自分自身の残してきた財産の後始末が必要になってくる。自分自身のお金を引き継ぐ子孫がいないなら、お金だって残しても意味がない。自分自身の貯めた資産は命が尽きるまでに使い切ろうという事になり、瞬間風速で億越えの富裕層に到達しても、しまいには有名な「Die with Zero」で人生の終焉を迎えることになる。そういった人たちが徐々に増え始め、多数派になることも否定できない。 逆に、子供や孫がいれば、自分の家系が末永く繫栄するための頑張りができる。だからこそ、子孫のために資産を残さなければならない気持ちにもかられる。そういった点では資産の残し方という点でも二極化された社会に突入する。 (「金持ち3代、貧乏5代」も消滅)  中国には「金持ち3代、貧乏5代」の諺がある。科学的にもこの循環説はまちがっていないと想定されるが、これだけ少子化が深刻化した昨今においては、この過程の中で家系が消滅することを心配しなくてはいけない。 「一代目が財をなし金持ちになると、その子ども(二代目)は親の姿を見て育つので努力の価値を知っている。しかし、自分の子(三代目)にはそんな苦労をさせたくないと過保護に育てるし、また、三代目は生まれながら金持ちの子どもでスタートするので努力することを知らない。それが災いして家を潰す。その子どもは家が没落しているので貧乏で育つ(貧乏初代)、次の子は生まれながらの貧乏(貧乏2代目)。その子どもも...

日本に漂う閉塞感の正体(その2) 不安遺伝子の呪縛

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 日本に漂う閉塞感の正体 ( https://investment-v3.blogspot.com/2022/04/blog-post_16.html )を書いているうちに、日本人のこのような行動を促しているのは別の要因があるのではないかと感じた。日本人の行動はあくまでも結果であり、原因ではないという事である。 (遺伝子学からの考察)  不安感を直接抑制する物質はセロトニンであり、人はセロトニンを多く持つ(L(ロング)型楽観遺伝子)と、少なく持つ人(S(ショート)型不安遺伝子)に分かれる。 「S」型遺伝子保有は、日本人80%、韓国79%、中国人75%、台湾人70%、スペイン人47%、アメリカ人45%、南アフリカ人28%という調査報告があり、人種で不安の許容度が大きく異なる。さらに、不安遺伝子「SS」型を日本人は68%で、アメリカ人は5人に1人、逆に、アメリカ人は楽観遺伝子「LL」型遺伝子を3人に1人が保有し、日本人は2%弱に留まっている。日本人は遺伝子学的にも不安を抱えやすい民族であることが言える。この事は同じ出来事に遭遇した場合、日本人は「深刻」に考え、米国人が「偶然の出来事に過ぎない」と考え、アフリカ人は「これが悪い出来事なの?」程度の開きがある事を示唆している。 (単一民族の島国であるがゆえに強制される空気感) 日本人は、とかく空気感を重視する。それは、単一民族国家であることに要因があるのであろう。つまり、国全体は村社会でどこに逃げても同じ考えの人達しかいない。海外と異なり逃げ場に苦慮するのだ。さらに、諸外国のように自分達と全く異なる言語や習慣を持つ民族と常に争いごとを繰り返し、他民族の支配下におかれたこともないので自分たちの意見をはっきりいう事の大切さを奥のほうに追いやった。しかしながら、日本人のような単一民族が、これまで他国に攻められることが殆どなく、国の統治者が同一民族であることを踏まえると、本来ならおおらかな性格になるべきであるがそうなっていない。村社会の掟が他国と比べて想像以上に酷であったことの証であろう。 (不安遺伝子の多い理由) 日本人が不安感を強く抱くのは、遺伝子学から見れば古代の日本人の祖先のつらい記憶であり、それが現代人に引き継がれていると言える。では、このつらい記憶はいつの時代のものだろうか。今の人類の原型はアフリカで生まれ、そこ...

ビルゲイツの珠玉の名言から学ぶこと

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 (初版 2021/06/17) 1.名言に万人向けはない  ビルゲイツといえば、マイクロソフトの創業者として、世界有数のソフトウエア会社に導き上げた世界有数の経営者であり、世界有数の資産家でもあります。  しかし、彼のこういった成功は彼の天賦の才能だけによるものではありません。ここまでに至るには彼のけたたましい努力と苦闘の連続がありました。ビルゲイツは世の中の理不尽さを示唆するように、「人生は公平ではない。そのことに慣れよう」という名言を放っております。 これは高校生のスピーチの一節であり、人生における様々な理不尽に自分の意思で打ち勝っていけと説いています。 2.名言のそれぞれ  ビルゲイツの名言と言われるものとして以下があります。 〇「毎日毎日「勝ちたい」という気持ちで出社しなければならない。切羽詰まったときにこそ、最高の能力を発揮できる」 「一心不乱に働くこと、ベストを尽くすことが嫌だというなら、ここは君のいるべき職場ではない」 これは、マイクロソフトという事業を成功させるためにはこれだけのパワーは必要という裏返しです。 〇「しばしば、直観が頼みの綱になる。」 コンピュータを大家であるビルゲイツでもそう思うことがあるのですか。テレパシーとか以心伝心などは、ビルゲイツでさえ信じている。でも、ビルゲイツ以外の成功者も同じように、努力や戦略の上に直感があるという事を述べていることが結構あります。 〇「人生は、誰も助けてくれない」  自分の人生は自分で切り開きなさいといいたいのでしょうが、うがった見方をすれば、ビルさんも孤独なのかもしれません。結構寂しい人なのかもしれません。 4. ビルゲイツが事業の成功について話す珠玉の名言 「成功するまでやるのだから、失敗などありえない」( 失敗や負けは短期的な結果にすぎないということ。それが本当の意味で確定するのは本人が諦めたときだけである。あきらめずに前に進んで、その後に成功を勝ち取れば、これら短期的な敗北や失敗はすべてその後の成功の向けたプロセスに過ぎなくなる。}  正直、この前向きな思考こそ成功者に求められる事だろう。成功の過程で他人から見たら想像を絶する苦しみ、他人からの罵倒、そして信じている者の裏切りなど、、まともに考えたら自分自身がぶっ壊れてしまうほどのつらい経験をものともしない精神力。そして常にある前進する...

情報社会の代償 隣の芝生という厄介な存在 

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  初版 2023.3.11 (旧名:隣の芝生に振り回されない生き方こそ最良の生き方) 1.隣の芝生は人間の本能 人はなぜか、隣の芝生が青く見えるようである。どうもこれは人間の本能のようである。人は常にどこかで桃源郷があると信じて疑わない。だから他人に対して勝手というべき様々な妄想を抱いて喜怒哀楽を繰り返している。ドラマや週刊誌、映画,そしてインフルエンサーが煽り立てるような装飾され、誇張されたカッコ良い生活をしている人が常にどこかにいると信じて疑わず、そういった人たちへの憧れや羨望を抱こうとするように出来ている。        2.隣の芝生の幻想例  ①政治家  政治家は社会的には上流階級に位置する職業で、まさに隣の芝生である。しかし、そんな隣の芝生も今となっては、はっきりいえば苦労の割には見返りが少ない。一昔前なら、貴族の位を得られ、豪邸に住み様々な利権から得る膨大な富を得ることができたが、今では億ションにすら住めない、逆に豪華な生活をしていると賄賂を疑われお縄!となってしまう。仕事面では、4方から様々な意見を集約し意見調整を図りながら一つの指針を作り上げるという相当な労力と精神的な負荷を強いている。もはや、政治家という職業が好きでないとやってられない。 ②旧来型のエリート 大企業社員、医者、官僚、外資系金融や大手弁護士事務所の幹部等などのエリート職業もアッパーミドルの代表的な職業で庶民とは一線を画している。一昔前まではエリートとして大企業に入れば、それなりに出世し、それなりの報酬も得て、さらには子会社で役員級の役職に就いて会社人生の余生をおくる。まさにアッパーミドルの典型例のような人生であるが、今はこのような天下りが出来なく、給与面でも、天下りが減った分、人生後半の高給生活が遮断され、年を追って旨味が享受できなくなった。 ③セレブと言われる成功者  セレブと言われる超高所得者(芸能人やスポーツ選手、ベンチャー企業の創業者)なども隣の芝生の典型例である。これら人たちの共通点は実力主義の環境下で自分の力量を頼りに成功者と言われる地位まで上り詰めた事である。私たちは、雑誌やテレビで芸能人やスポーツ選手、事業の成功者などのセレブ生活や豪邸報道に対し羨望のまなざしを抱いてしまう。しかし、そこには成功者ならではの魑魅魍魎とし...

富裕層分析  サイレント富裕層の増殖

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  1.資産格差の度合  日本は格差社会に入って久しいと言われるが、世界的に見れば平等社会である。今世界では、上位1%の資産総額が全体の4割弱を占めている。逆に下位50%の資産は全体の2%と言われている。これは貧富の差が激しい発展途上国を含めての数値だが、先進国だけに絞ったOECD資料では、上位1%の国内の富に占める比率は、 米国42%、ドイツ24%、英国20%、フランス19%、日本11% 上位10%の比率は、 米国79%、ドイツ52%、英国52%、フランス51%、日本41%  となる。  この数字を見る限り、米国の資産格差が際立っている。それは、4月の米国相場の暴落時にベンセント財務官が言った言葉に表れている。「米国民の上位数%が米国株式を88%保有し、残りの50%までが12%を保有している。下位50%は負債だけしか保有していない。このため、株価が下がっても一般庶民への財布に影響しない。」まさに、米国の格差社会を象徴する発言であり、 国の分断化についてもあながち誇張したものでもない。とは言え、米国の場合、下位50%でも他国から見ると十分に良い生活をしているというオチはつくので、その辺は相殺して考えていくべきではあるが。。。。。 2. 社会的勝組=富裕層という誤解  マスコミは一般的な富裕層像をビジネスエリートに焦点を当てることが多い。挙句には大企業社員や公務員を上級国民としてこき下ろしている記事もある。この構図の原型は、受験戦争の勝者→一流大学⇒一流企業→幹部社員→上級国民であり、庶民を犠牲にわが世の春を謳歌しているプロパガンダ像である。こういったプロパガンダの変遷は、ドラマや小説などで垣間見ることができる。  昭和初期までの富裕層像は華族等の有閑階級を題材にした優雅な生活の描写であった。戦後は、財閥解体や華族制度の廃止などもあり、超一流企業幹部や官僚、医者などのエリートを題材にアッパーミドル層を描写していた。特に、医師は高所得者ランキングの常連であり、それが大学受験にまで波及し、偏差値では医学部がダントツの難易度を誇っている。人々は医学部入学を上級国民入りの登竜門と信じているからだ。  そして、最近は外資系金融やコンサルティング、そしてベンチャー企業のIPO創業者などが浮上してきた。  これらに共通するのは「高学歴=社会的勝組=富裕層」というステレオタイ...

今後20年後を見据えた大学(辛口)戦略 その2

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 (都心一極集中が学生にもたらしたもの)  東京一極集中が1世紀に渡って続いている。これは地方の秀才を東京に呼び寄せて定住させる政策を100年に渡って行ってきたことにほかならない。それら人々の子供は都心の中高等学校に通い、都心の大学に通い、都心の企業に就職する。このサイクルを雪だるまのように100年近く続けてきた。優秀な子供は年を追って都心に集中することになり、これは大学偏差値の長期推移にも表れている。戦前、戦後に渡って名門かつ高偏差値であった地方大学の中には、過疎化とともに没落し、過去の栄光を忘れ去られている。 (都心に立地する大学の高偏差値化)  これは長年における偏差値分布の推移を見れば一目瞭然である。都心への一極集中の最大の恩恵を被った大学は早慶、そして次に続くのがたいした格を有していない中堅国公立(千葉大学や東京都立大学など)、そしてMARCHクラスの有名私立大学であろう。早慶などは高度成長期前までの中堅クラスの難易度から東大や一橋をあと一歩に迫るくらいに偏差値が上昇した。早慶おこぼれの受け皿になるMARCHも驚異的に上昇した。戦後において地方の金持ちが通うFランとも見間違える程度の大学のはずが、時が経つにつれ地方国立を追い越し、難関国立一歩手前の位置までの地位を確立した。千葉大や東京都立なども同じように、単に都心に大学を構えているから地方旧帝大と拮抗する偏差値を有している。 (「旧帝大」の横綱級の格式) 地方の過疎化により、地方国立大学の地盤地下は目に余るものがある。しかし、旧帝国大学はその影響を受けにくい。地方旧帝大は、東北なら東北6県の盟主(東大)であり、それは九州地方の九州大学、中部地方の名古屋大学においても同様である。これら大学の偏差値は旧帝大という冠に守られて難関大学の一角を維持し続けている。首都圏の国立である横浜国立大学、千葉大学などは偏差値では地方旧帝大と同ランクであるが、首都圏の進学校では、東京科学大学に届かなく、これら国立大学を合格できそうな学生に対しては地方旧帝大を進めるケースもある。格式という点では「旧帝大ブランド」はエバーグリーンであり、この先の少子化が深刻化しても、首都圏一極集中がこれ以上に進んでもMARCHクラスや都心部の中堅国公立が格式において地方旧帝大を切り崩すことは難しい。「 (社会人から見た大学序列)  高校卒...

2040年頃に迎えるであろう日本における二極化社会

(日本経済黄金期(1985-2005年)が二極化の認識を歪ませる。)  最近感じてきたこと。それは現40代~70代前半が歴史上稀に見る日本の黄金期を体現した世代ということだ。海外旅行を例にとれば、最も安価で豪華なツアーを体験できたのはこの世代だ。実際、日本での生活に余裕はなくても、10万円あれば東南アジアで比較的裕福な旅行を満喫できた。西欧旅行も20万円あればそれなりに楽しめた。こういった比較的裕福な海外旅行もコロナ以降のインフレ・円安により困難になった。さらに深刻なのは若い世代が海外旅行に行かなくなったことである。これは興味がないという事ではなくお金がない若者にとっては海外旅行が贅沢品にグレードアップしたからにほかならない。  Louis Vuittonなどの高級品も1985-2005年まではお金を持っていない層まで購入できた。海外の高級品が簡単に手に入るほど日本円は海外通貨に対して強含んでいた。車においても、新卒の新入社員が彼女とのデート等を目的にプリウス並みの高級車を躊躇なくローンで購入し、長時間労働による多額の残業代で返済をしていた。さらにデフレが進行し、あらゆる商品が安く購入できた。この時期はバブル崩壊という経済的な負の側面による社会的な不安が蔓延し「失われxx年」と呼ばれる暗黒時代で表現されるが、安定的な収入を得られている層は、相当裕福な生活を享受できた。歴史的に見れば日本経済力の黄金期であったのは間違いなく、この認識ギャップこそが、日本における格差問題の本質を歪ませている。 (1憶総中流の幻) 間違いなく、日本は一時的に1億総中流を体現できた。しかし、その裏で日本経済はステルス格差を拡げることになり、2010年代後半から表面化し始めた。このころになると、女性の高学歴化と社会進出が定着し、パワーカップルが登場する。さらにネット経済が台頭し、有能な人たちは起業や投資で一定の財産を獲得できるようになった。これら層が新たなる消費を誘発し、タワマンなどの億近い案件すら購入している。今の日本は高度成長期のように真面目に生きていれば報われるのではなく、才能のある人たちが恩恵を被る社会に変貌した。 もう一つは世代間の格差である。団塊世代と現在の若者では同じ能力(スペック)でも、人生における恩恵の享受具合が全く異なってしまった。団塊世代は、難なく大企業や優良企業に入社し...

インデックス投資の黄昏も近い?(「FANG+信託の低迷」日経記事)

 日経に面白い投信記事がアップされていたので、それについての感想を書いてみた。 (FANG+保有継続は是か 類似投信へ乗り換えも選択肢) https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB26BVR0W5A320C2000000/ 投信商品「FANG+」はなんと、米国大型テック株たった10銘柄で運用する投信らしい。この投信は、構成銘柄をここ10年近くに渡って米国の上昇相場を牽引してきた銘柄群に絞ることで、投資家により直接的な恩恵を被れるようにした商品である。   (GAFAMの怪物的な企業経営力)   GAFAM、そして広義にはマグ二セントセブンは長期にわたって成長の限界を裏切り続け、「現在においても投資家に対して更なる夢や期待を与え続けている。」。一生懸命に投資を勉強し続けている投資家に対しては、まさに過去の経験則を裏切り続けていることになる。あのウオーレン・バフェットも過去の経験則に当てはまらないIT革命の本質について、優良テックを中心に研究し続け、IBM、ORACLE等に投資する等の試行錯誤をしてきたが、事業という側面から見たGAFAM銘柄の歴史的革命性、そして時代の変化を見抜いて最終的にはアップルに巨額投資することでこの巨大な果実をもぎ取った。  このため、今の米国相場は、マグニセントセブンと周辺の超一流優良企業にさえ投資すれば何も考えなくても相当な利益を得られる仕組みが出来上がり、これがなんと10年近く続いている。まさにこれら銘柄の絶頂期に違いない。これの言わんとすることはS&P500などの堅調な上昇とは裏腹に、投資対象としての分析に値する銘柄は1割未満いやその半分にも満たないということである。今の米国では、それくらい利益創出力が一部の企業に集中しすぎてしまった。 (歴史的な割高感?) 記事では、「こういった投信の構成銘柄は今、非常に割高でリスク大」と指摘。とあるが、テック株は大抵において将来性が期待されるので概ね割高で推移する。その割高の評価範囲は今後の成長性に依存し、成長性が高ければPER100でも容認されることになる。成長性が鈍化すれば投資家は収益力から株価を測ろうとし、大抵の場合、PER10~20のレンジまで株価が調整することになる。こういった記事については、企業がどのような成長を辿っていけるのかの両刃の...

金利のある世界の投資行動

 私は、「元本保証商品の運用利回りは壊滅状態」 https://investment-v3.blogspot.com/2021/07/blog-post_15.html でゼロ金利のトホホな利息事情を書いた。しかし、その後3年で日本の金利事情は大きく変化した。私は2021年時点では、金利の上昇は膨大な政府債務への悪影響から実現性に乏しいと思っていたが、日本にインフレ基調が根付き始めた事でその流れが変わった。日銀はインフレ率と符合するように政策金利を調整する姿勢に方向転換した。僅か数年で日本の金利トレンドがこれだけ変わってしまう事に驚嘆するばかりである。 (デフレの再来はない)  コロナ禍により世界中で深刻なインフレを経験する一方、日本は長らく続くデフレの余波からインフレは軽微であった。しかし、海外輸入の材料高と円安が重なったことでインフレ基調に転換した。さらにインバウンドの外国人はラーメン1杯2000円など価格の上限を気にせずに消費してくれることから、企業側はかつてのデフレ圧力に悩まされなくなった。日本のデフレは日本経済が世界的に見て圧倒的に強かったからであり、その時は日本円も強かった。そして、今のようなインバウンド消費をできる外国人は少数だった。今日の日本の国際競争力は中国に大きく突き放され、特定分野では韓国や台湾に追い越されている。こういった要素を勘案すれば、日本にはデフレになるだけの強い経済力は持ち合わせていない。日本がいまだに世界一の債権国であるものの、産業競争力の著しい低下というという点の側面を見過ごすべきではない。 (日銀の政策金利引き上げ状況) 日銀は、インフレ率と国内景気を勘案しながら政策金利を引き上げている。2024/3(0.1%)⇒2024/7(0.25%)⇒2025/01(0.5%)。これに付随して国債金利も上昇し、3月には1.5%を記録するまでになった。大手銀行の普通預金の金利が0.2%、1年物定期預金が0.275%まで引き上がった。欧米諸国と比較すると政策金利はまだ低いままだが、長期10年もの国債で比較すると、もはやスイス(0.7%)を大きく引き離し、韓国(1.7%)、中国(1.8%)とは射程圏に到達し、西欧諸国2%台まで近づき始めている。このままだと西欧諸国とは長期金利で肩をならべ、その後政策金利で近づいていくという方向に流れてい...

トランプ政権が目論む新たな世界スキーム

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 トランプ政策については、オールドメディアなどが非常に偏った報道をしているため、トランプ政策の本質を理解しづらい。しかし、これを放置すると、今後の米国株投資を大きく見誤ってしまう。  私は、トランプ二期期政権に関して、以下の投稿をしているが、 トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること(2025/01)   https://investment-v3.blogspot.com/2025/01/1988.html トランプ政権後の金融市場を占う(2024/11)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/11/blog-post_23.html トランプ政権誕生による世界経済への影響(2024/07)   https://investment-v3.blogspot.com/2024/07/blog-post_20.html  トランプ政策については、今後も試行錯誤を繰り返しながら考察をしていきたい。 ①第二次世界大戦後のスキームからの脱却  トランプの主張は、「アメリカを世界一の大国として維持をさせるが、世界の警察官からは脱退する。」という第二次世界大戦後のスキームからの脱却である。これまでのスキームは、第二次世界大戦後の東西冷戦を念頭に、世界の過半の経済力を持つ西側陣営のリーダーとしての米国の立ち位置があった。それは東側陣営のリーダーであるソ連についても同様である。日本においては、日本の再軍備阻止等の観点から日米安保を締結している。しかし、今の米国の世界GDP比率は20数%程度にすぎず、中国に肩を並べられるまでに低下した。このため、米国が世界の警察官を維持できなくなっているのは明白である。  まさに、自国の領土は自国の資金で、かつ自国の軍隊で守る時代に突入しなくてはいけなくなったのである。日本においても、第二次世界大戦のトラウマを払しょくし、新たな防衛政策を打ち立てる必要性が出てきたのだ。 ②米国の再構築の試み  トランプは、MAGA( Make America Great Again)を掲げている、トランプ政策で誤解されているのは、米国は再び強力な覇権国家を取り戻すということであり、これの意味する事は、中国との覇権国家争いにほかならない。このまま自由貿易を続けたら、いつかは中国に国力を追い抜かれ、覇権...

富裕層分析 新富裕層分析?

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 (世界有数の平等国家)  日本の税制は世界でも類を見ない社会主義的な性質を持っており、日本政府はそれをさらに強く推し進めている。そのおかげで日本には、他国のような一部の大富豪が国の大部分の富を占めるようなことにはなっていない。しかしながら、富の格差というのは雑草と同じように想像以上に強い。日本においても現実問題として格差はそれなりに拡がっている。例えば、東京都心部で一軒家を持つことはサラリーマンである限り不可能に近いと言えるが、実際にはそれなりのサラリーマンが一軒家を購入している。国の平等政策にも関わらず、そのズレはどこから出てくるのだろうか。 (旧富裕層の没落)  富裕層のイメージとして、古くからの資産家や名家を思い浮かべる人も多い。しかし、今の日本では代替わりにおいて膨大な相続税を課せられるので、次世代まで富は続かない。これは戦前から続く名家だけでなく、一般人であるが高度成長期に成功してそれなりに贅沢な生活をしてきた層でも言える事であるが、高級住宅地において代々に渡って住み続けている例はそれほど多くない。著名人をみても、かつては超一等地に豪邸を構えていた森繁久彌、加山雄三、そして梅宮達夫、石原慎太郎etcなどそうそうたる面々の屋敷は今や売払われている。さらに、多額の金銭面での相続は意外と少なく、残された立派な屋敷や骨董品は売却しても大した額にならないのが実情である。社会的成功者はその人の活躍に応じてセレブな生活を体現しても、その人の没後は過酷な相続税などの要因で子供や孫の代まで引き継がれるということは今の日本においては非常に困難である。 (新富裕層の出現) 旧名家や社会的成功者が没落する一方、賢い一般人から富裕層が生まれている。その実態として、バブル崩壊以降は賃金水準の高い大企業ほど頻繁に早期退職者制度を実施し、社会に不安を与えているにも関わらず、超多額とも言える割増し退職金(一時金)が得られ、かつ賃金水準をそれほど下げずに転職できた人。それ以外に、IPOによる持ち株の成金。勤務先株価の暴騰による莫大なストックオプション。高賃金の外資系企業を渡り歩くビジネスマン。最後は、企業の大小関係なくアベノミクス相場で資産を増やせた層の中から、自らの不安解消のために大きな支出を控えながら蓄財し、不動産や株式などの投資に積極的な一部の人達が該当する。 (高度成長期の...

「メキシコの漁師」に見る人生と労働の皮肉

 (ファーストリテイリングの入社式)  ファーストリテイリングの入社式に関する日経記事があった。柳井正会長兼社長は「新しい報酬体系で初の新卒社員になる。世界中で活躍してもらい、付加価値のある高い利益を生むビジネスを作り出す。そのフロントランナーになっていただきたい」とエールを送った。この会社は2025年より新卒社員の初任給を33万円にした。全体の新入社員数は約1300人を予定しており、新入社員の代表は、「プレッシャーもあるが、その分期待をしてくれているということだと思う。その期待をモチベーションにして頑張っていきたい」と意気込みを話した。  この会社に勤めるということは、会社の好業績を支えるための歯車になることを意味している。この激務な会社で働いている間は、この会社に全てを捧げるような生活になるのは間違いない。つまるところ、社員は柳井指揮官が率いる軍隊と相違ない。  こういったものを見ていると、リベラルが平等平等と叫んでも、こういった会社への奉仕は、厳しいビジネス競争の打ち勝つためというお題目の合法的な奴隷制度なのかもしれない。  しかし、こういった企業があるから日本の国富は先進国に留まれるのだ。だから、日本に取っては、一定数以上、このような企業は存在しなくてはいけない。 (「メキシコの漁師」にみるビジネス社会への皮肉) 「とても魚釣りが好きな漁師がいた。漁師は好きな時間に起き釣りをし、子供や友達と楽しく遊ぶ毎日を過ごしていた。そこに、アメリカの観光客を運ぶ小さな漁船がメキシコの小さな島に着いた。船から下りると、旅行者人の一人がメキシコ人漁師に尋ねた。「すごいね、どれくらい漁をするとこれだけ大量に釣れるの?」「いや、昼のちょっとした時間、海に出て漁をしただけだよ」  それを聞いた旅行者はビジネスの好機ととらえ「漁をする時間をもっと増やして、もっと多くの金を稼いだらどうだい」というと、漁師は「なんでそんなことしなくちゃいけないの?。これで十分生活が成り立っているよ」と言った。すると旅行者は、「それなら、余った時間は何しているんだい?」と聞いた。漁師は「朝はゆっくり起きて漁に出る。その後は子どもと遊んで、女房とシエスタする。 夜になったらバーで友達とギターを弾きながら歌をうたって。これで一日は終わる」と説明した。 今度は旅行者がビジネスマンの立場から漁師に言った...

AI革命は両刃の剣

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 (目まぐるしい科学技術の進歩)  科学技術の飛躍的な発展により、人々の生活はより高度にそして快適になった。しかし、これらの発展は人間の作業を簡便化する役割が大半だ。例をあげれば、車や飛行機、テレビ、ラジオ、コンピュータなどで、さらにこれら製品を作るための画期的な大量生産方法や生産設備、農業においては食糧増産の化学肥料となどである。これらは、大衆化の均一性に対し生産性を高めるものであり、更なる発展を促すためには、人のもつ闘争本能や感情などの多様性制御を促すツールが必要になる。 (競争がない社会は発展しない)  人間社会は、ちょっと前までは王政を強いている国が多く、ほんの一部の支配者層と既得権益層が国富を独占し、圧倒的多数の国民は貧困生活を余儀なくされる封建社会が一般的であった。その後、産業革命により資本主義が台頭するが違った意味での壮絶な格差社会が引き起こされ、これに反するように貧富のない社会を目標とした共産主義思想の国家が台頭する。しかし、競争がない平等下の社会では、人は自堕落になりやすく、良悪はあるが過酷な競争でしか富や科学的進化が生まれない事が判明した。現在においては、西欧諸国では資本主義でありながら格差をできるだ少なくする社会性民主主義国家が一般的になっているが、科学技術や産業の発展という点では、資本主義国家である米国と圧倒的な開きが生じている。 (科学技術は人類の感情コントールにまで踏み込んでいない)  そもそも人の才能は均一ではない。例として、教育において40人クラス全員に東大目指した学力をつけさせる。スパルタな練習でプロ野球選手やサッカー選手を目指させる。こういった取組のもとで、どんなに頑張ったとしても東大合格、プロ野球選手になれるわけではなく達成率は極めて低い。そもそも才能格差に対する社会の答えは曖昧なままである。  さらに能力が均等であっても、組織内においてはパーレートの2:8法則に従って活躍できる人と出来ない人に分かれてしまう。組織内では上り詰めるためには、大抵の場合、実力ではなく、特定の人に気に入られる裁量の側面が大きい。さらに、国家間においてもその国のメンツが正義より重きをおかれ、マスコミの報道も真実というより当事者が信じる正義感というフィルターでの報道に終始している。 (AIによる人の管理という革命)  AIの発展は著しい。2030...

米国以外に株式市場を牽引できる国はない

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 ( 西欧諸国の相対的地位の低下)  株式市場においては、30年近くの間、米国1強が続いている。実際、世界市場の時価総額では、米国はその大半を占める。しかし、経済規模という点では、30年の間に中国が世界2位の大国になり、BRICSやその周辺新興国も台頭したことで欧米諸国の相対的地位は大きく低下し、東西間の経済規模逆転も視野に入っている。これらを踏まえ、10年後に世界をけん引する相場は何処かを考えてみた。 (国別の産業進展度をカテゴライズ)  専門家から見れば厳密な定義ではないが、各国の産業の進展度を下記に分類してみた。  ①発展途上国型(Ⅰ):先進国企業の工場進出があまりされておらず発展が遅れている地域で、一人当たりGDPは極めて低い(アフリカ、中南米etc)  ②発展途上国型(Ⅱ):資源や農産物等で一定の外貨を得ているが、富める者とそうでない者の格差が著しい(中東、ロシア、南アフリカ、ブラジルetc)  ③発展途上国型(Ⅲ):先進国企業の工場進出が盛んな地域。①②の発展型であるがグローバル企業の工場進出により中間層が拡大(メキシコ、東南アジア、インドetc)  ④準先進国:先進国からの下請けを脱し、先進国を凌駕する企業や産業が登場。(中国、台湾、韓国etc)  ⑤先進国:西欧諸国。日本。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドetc  ⑥超先進国:米国  これら区分は①⇒②⇒③⇒④⇒⑤⇒⑥の順で産業が高度化していく。しかし、区分間において上位に移動するには、産業構造の大きな変革や新陳代謝を起こし既存産業の既得権益層の特権をもぎ取る必要がある。それにより非既得権益層に富が流入し、中間層の厚みを持たせることで、その国が大きく成長して株価も長期上昇トレンドを形成する。逆に、こういった革新がない限り大きな上昇相場は見込めない。 (相場上昇と経済成長の非相関) 日本は、戦後のGHQによる既得権益層へのドラスチック解体により、その後の高度成長期と株式上昇が見事までにリンクした。1949年の日経指数150円程度が1989年には38915円の250倍強まで上昇した。これは戦前の超格差社会から一億総中流社会への切り替えに成功したからと言える。その一方、多くの新興国では先進国以上の経済成長をしているが、成長の果実を一部の既得権益層が独占しているため、株価指数の上昇という点では...

ジレンマを抱える超優良企業SMC

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 SMCは空気圧制御機器を軸とした自動制御機器のメーカーであり、自動制御機器は、基本型約12,000種、カスタマイズ品を含めると約700,000品目という膨大な製品群を誇っている。 (SMCの概略) 1959年4月に焼結金属工業株式会社を東京都千代田区にて設立。創業者は東京タングステン株式会社に勤務していた技術者大村進氏であった。創業翌年の1960年には空気圧機器の製造に参入し、部品から完成品へと事業領域を拡大した。これは、工場内のオートメーションの進行とともに引き合いが増大し、導入コストも安いことが他の自動化機器(機械制御・油圧制御)と比較されたときの優位性であった。1988年の株式上場の時には、売上高の90%が空気圧関連製品になっていた。 SMSの創業期から専務として社の成長を支えた髙田芳行氏が、1989年に社長就任から約30年超にわたりトップダウンでSMCの経営に従事する。その間に、空気圧機器の国内シェアが7割弱で世界シェアも3割強でトップシェアを獲得し、この分野においてはドイツのフェスト社 (Festo) との世界2強を構成するまでに躍進した。2019年には、ご子息の高田芳樹が二代目社長に就任し現在に至る。 (無双状態の経営力)  SMCはまさに無双状態の堅牢なビジネスモデルを有しており、誰がやっても優良企業を維持できてしまうほどである。  これらは、前社長が新製品の開発や生産技術の研究に没頭しながら、徹底的なコストダウンの追求を極限まで成し遂げた結果であり、メーカーでありながら営業利益率は25%を維持し、自己資本比率に至っては90%まで高い。製造業に必要な開発・研究においても単年の利益で十分に吸収できてしまっている。さらに株式発行数も抑えているため極限に近いような高値で株価も推移している。まさに、日本の製造業においてトップレベルを競う優良企業である。 それだけでなく、空気圧機器業界の世界市場動向は、2022年に約697.3億ドルとなり、予測期間中に年平均成長率7.13%で拡大し、2029年には1,129.2億ドルに達すると予測されている。これをそのままトレースすれば、SMCは苦労することなく増収増益を達成やすい環境下にあるということである。 (創業2代目のボトルネック)  この会社の次なる成長へのボトルネックは2代目髙田芳樹社長の経営力であろう。結...

フジHD㈱暴騰に見る株式投資の非科学的要素

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  電車の中で隣に座っているおじさんがスポーツ新聞を真剣に読みながら馬券の購入を検討している。記事には馬の健康状態(コンディション)、馬の性格、過去レースの実績、そして馬を乗りこなす騎手の実績、最後に評論家の総合的なコメント、雑誌側の独自の順位予想 (株価は未来のファンダメンタルまで織り込む) 投資家は四季報などを読みながら。会社の直近の経営状況、提供している商品や技術の強み、景気又は産業動向、そして会社の社風と経営陣の評価、最後に評論家のコメント、想定される株価のレンジ。投資家はそんな情報をくみしながら投資判断する。  この二つに何が相違があるのか?形は違へど構図に大きな相違はない。 「競馬新聞に書かれている内容」と「経済誌に書かれている内容」は形は違えど著者の恣意的な表現や判断が入っており、客観的な情報とは限らない。伝えるものにフィルターが入っている。 (どこまでの未来業績を織り込んでいるかは銘柄毎に異なる)  さらに株式投資で最も難しい所は、各々銘柄の価値(株価)が、どの程度先までの情報や見通しを織り込んでいるかであり、残念ながら誰にも分からない。さらに銘柄ごとに織り込み具合は異なっている。だからこそ、最高益の決算を出しても株価が下がったり、大きな赤字を出しても株価が上がるという現象が生じる。 この事実は投資家にとって、ネットや書店からの情報など役に立たないことを示唆している。これら情報は株式市場ではすでに織り込み済みだからだ。そのため、勉強熱心で素晴らしい会計知識を持っている投資家ほど投資成績が振るわないことが当たり前のように起きてしまう。エコノミストが有能な投資家になれない理由もそこにある。  (フジメディアHDに株価の非科学性)   フジメディアHDは、フジテレビの不祥事でフジテレビ自体が壊滅的な打撃を受けている。親会社である ジメディアHDにしても、決算という点では数年間は劣勢を強いられるのは間違いない。そういった状況下なら普通なら フジメディアHDの株価は大きく値を下げるのだが、 フジメディアHDの株価は逆に暴騰している。投資家は何を目的に買い込んでいるのかは私にはわからないが、この暴騰で大儲けする投資家がいるという事だ。そこには、高尚な財務理論などない。あるのは投資家それぞれの思惑と仕手戦のような株価変動に群がる...

TSMCの日本進出から垣間見える日本人の西欧人化

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 (日本企業の相対的な地位の低下)  つい最近まで、日本企業における日本人従業員の給与は東アジアでダントツに高かった。成熟した高所得国である国が経済発展を続けるためには、新陳代謝を繰り返しながら新技術で世界を席巻し続けるか、生産性の向上に活路を求めざるかのどちらかしかない。それは官僚化するオールドエコノミーに依存せず、アントレプレナーを育てて新たな産業を作り続けることにある。日本はこういった循環が停滞している間に、中国や韓国、台湾は日本の得意とする分野に猛追し、そして追い越すまでになった。 (TSMCの日本誘致)  そのような現状を打開する手がかりとして、TSMCの熊本工場進出が出てきた。日本国民の性格上、韓国、台湾、中国の大企業が自らの戦略で日本に工場を建設して一大製造拠点にするとしたら、マスコミを含め多くの日本国民は拒否感を抱くであろう。この案件は米国主導の安全保障問題から始まったサプライチェーンの再構築の一部であるが、日本政府側も約1兆円以上の巨額の補助金を付けるなど、TSMCに対し強烈なアプローチをして熊本誘致したことには違いない。  日本政府から見ると、日本には優秀な技術者がたくさんいる。没落しかかっている日本の製造業に対し、世界一の半導体メーカーから成功の手ほどきを学んでもらう。TSMCから見ると日本の潜在的に優秀な技術者を発掘し、企業競争力をさらに高めていく。そんな思惑が見え隠れする。 (日本とは異なる労働文化)  実際に工場を建ち半導体製造がスタートすると、そこには日本とは全く異なるドラスチックな世界があった。賃金は欧米企業水準の高給であるが、労働体系は、ブラックどころではない労働環境+米国流の実力主義がハイブリットされていた。スキル有無に関わらず根回し文化で年功序列の社員を大切にする日本の企業文化などは存在しない。  このように勤勉と言われた日本でさえも、TSMCからは日本人は思ったより能力が低く働きも悪い。という声も聞こえてくる。この違いこそ、中国や台湾などの企業が日本を押しのけて世界を制覇してきた源泉であり、日本においても西欧に追いつき追い越せと寝る間を惜しんで働いた高度成長期の残像を垣間見ているようだ。  (米国政府のしたたかさ)   米国政府は、そんなTSMCに最先端の半導体工場を強制的に作らせている。しかし、T...

投資家から見たフジメディアHDの今後

   (フジテレビの隆盛)  フジテレビの隆盛は、1980年代に鹿内社長がこれまでの昭和的な硬派な番組作りから、エンターテイメント要素をふんだんに盛り込んだナンパな路線への転換をきっかけに、民放テレビ局の地位を上げていった。番組制作においては、比較的スマートなお笑いタレントを積極的に起用し、女子アナをアイドル路線に変更させ、ドラマなどでは高級マンションを舞台に人々の憧れを誘うトレンディドラマを切り開くことでフジテレビの地位を確立していった。 こういった取り組みは、バブル景気に向けて日本人が世界一の金持ち国に差し掛かっていくのに合わせて、人々が求めるより洗練された生活スタイルに適合していき、フジテレビは絶頂期を迎えることになる。その基礎を確立させたのが紛れもなく現相談役の日枝久となる (停滞) バブルが崩壊して就職氷河期が訪れると若者は社会の厳しい現実に直面することになる。 2000年頃になるとバブル世代も中年に差し掛かっていく。 その数年後にはインターネットの普及で若者のコミュニケーション場がネットに移行するようになり、人々の趣向の多様化が顕著になる。人々は、テレビからの均一化された情報を求めるのではなく、ネットから自分の好きな情報だけを得ようとしている。 フジテレビの経営陣はこういったトレンドの変化を真正面から受け取れずに過去の成功体験に執着した番組制作を続けている。もう、子供、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが一緒になってお茶の間で同じ番組を楽しむ時代ではなくなったことを意識していないように。こういった時代錯誤こそ、 日枝久の院政による弊害であることは紛れもない事実である。 (コングロマリットによる経営の分散化) とはいえ、 日枝久 はインターネットの台頭に備えて、フジメディアHDとしてコングロマリット経営に軸を移すようになった。テレビ業界の収益低下を補填するような事業体制を着実に構築していた。今回の不祥事の顛末においてもフジテレビ自体は大きな打撃を受けるが、親会社であるフジメディアHDが経営危機に陥るまでのレベルにならない。このように分散化は図っているものの、 フジメディアHDの役員は、フジテレビの有能な番組制作プロデューサーに占められている。日枝氏には、 フジテレビこそ フジメディアHDの中核から外したくないのであろう。 (今...

トランプ大統領1988年インタビューから読み取れること

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 ドナルド・トランプが1月20日にアメリカ第47代大統領に就任した。これから様々な破天荒な政策が打ち出されることが予想されるが、超貴重ともいえる1988年のインタビューから、その源流を読み取っていきたい。 トランプとの会見 Interview with Donald Trump by Shu Ueyama 1988 (要旨) ・ 1988年頃のトランプは新鋭の企業家であった。そして、有能な若手経営者としてマスコミに取り上げられていた。この時代は今ほどグローバル化が進んでいない状況を踏まえると、日本の経済番組で取り上げられている自体、世界的に見て相当有名なビジネスマンである事が伺える。 ・まさにハリウッドのスーパースターのように派手な生活や行動が好きな事が伺える。 ・成功の要因は「相当な努力とやる気、そして才能、さらに運も大切な要素だ。才能は万人に与えられていない。成功も同じだ。だから私と同じことをしても成功するとは限らない。」 ・政治に対しもビジネスマンの視点で論じている。特にこの頃の日本はバブル景気で「ジャパンアズNo1」と言われていた時代であり、なぜ米国が軍事的に多額の費用を使って、日本の多大な貿易黒字を支えなければいけないのかと述べている。その一方で、日本が米国に多額の投資をしていることに対し歓迎している。 ・取引においては、双方で利益を得るべきであるが、現状は米国だけが損を被っている状況、それが許せない。 ・今はその気はないが。米国の政治家が、国益を損なうような事を続けていくなら、選挙に出て大統領を目指すかもしれない。 (インタビューの個人的感想)  トランプのビジネスには、ハリウッドのセレブリティ世界の具現化が見られる。その源流はトランプが青年期を過ごした1950-1960年代の華やかな米国であり、それは「MAGA」思想に現れているようだ。これは日本で言えば、高度成長期の日本を追い求めているのと似ているのかもしれない。  トランプは一匹オオカミ的な経営者との表現もあり、自分の才能と努力と運を味方にして、のし上がってきた自負があり、その結果すべてをDeal視点で考えるようになっているようだ。 (インタビューから垣間見る今後の米国の政策の行方)  ①トランプは、一方的な取引を望んでいるのでない。米国に不利にならないような取引を望んでいる。つまるところ、「米...

韓国の報道に対する一方的な論調について

 私は中国の報道の矛盾について書いたが、韓国についても同様に偏向とも言える記事が目立つ。 まず、日本と韓国の立ち位置を冷静に見つめていくと、一人当たりのGDPで日本は韓国に追い抜かれている紛れもない事実がある。内情はどうであれ。日本と韓国はほぼ同一の生活水準に到達してしまった。  考えてみれば、中国もそうであるが、ここ20年から30年で日本は中国や韓国に圧倒的な経済的大差をつけていたにも関わらず同等又はそれ以上いたるまで猛追されてしまった。これは当時20歳の頃の感触と50歳の頃の感触では、コペルニクスの地動説のような大きな転換が起こったことに等しい。こういった事を冷静に分析している識者がほとんど皆無で、どちらかというとその人の立場や感情論で物事を論じているように思えてならない。  マスコミなどの情報を追いかけすぎると何が真実であるかが不明瞭にあり、投資家にとって、情報収集をしようとしても、そのほとんどが投資材料になっていないのが現状である。 そんな代表例を下記事から述べてみたい。 忍び寄る低成長、韓国を労若男女の「生きづらさ」 https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/010800457/010800003/ ①「サムスン電子の苦境」はなんなのか サムスンの問題を指摘しているという点では優れた記事かもしれない。しかし、他と比べてどうなのかということである。正直って、サムスンの問題より日本の企業の問題の方が深刻で手に負えない。例えば、日本のパナソニック、東芝、日産などの日本株式会社の製造業の凋落のほうがもっと酷い。この記事はサムスンが自国の企業なら更なる発展を期待し、辛めの記事もよいのだが、韓国でもっともすぐれた企業の記事なら単なる反韓記事の何者でもない。 ②「先進国で最悪水準に苦しむ高齢者」  これについても、記事自体は間違いではないが、そういった記事を上目目線で書くほど日本の高齢者福祉は素晴らしいものなのかということである。年金においても、日本の年金給付水準はかつて世界でもトップクラスであったが、今となっては給付額がここ数十年横ばいにもかかわらず、社会保障費や税金を課せられることで驚くほど手取りが目減りしている。それに加えて、ここ最近のインフレにより、日本人の平均年金受給者は年金だけでの生活が困難になりつつある。どこの国も底辺...

テルモ 経営のプロが担うグローバルニッチ経営

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テルモは、3つのカンパニーで事業を展開し、160以上の国や地域で多様な医療現場、製薬企業などに製品やサービスを提供する医療機器メーカーである。当社の飛躍は、1990年代ごろから技術力の高いカテーテルが大きく伸長したのと海外企業のM&Aを繰り返すことで事業を拡大してきたことである。  テルモは、株価については浮き沈みを繰り返しているが、医療機器分野のグローバルニッチ市場で優位性を保つことで、着実な売上成長、かつ高財務を維持し、長期的に上値を切り上げてきた優良企業である。 (参入障壁の高いビジネスモデル) テルモの医療機器メーカー世界ランキングは15位(約0.69%)、最大手のメドトロニック(2兆円弱)。ボストンサイエンティフィック(1兆円強)と比べると規模面での小粒感は否めないが、カテーテル治療に使うガイドワイヤーのグローバル市場シェアは60%、血管に入り口をつくるシースイントロデューサーは45%などで世界シェアトップを獲得している。  一般に、医療機器は承認取得が難しく、新規参入からその業界内に大きく食い込んでいくハードルは高い。さらにニッチ分野という大手企業が参入をためらう領域で優位性を発揮しているため、テルモの事業には堅牢性がある。今後は高齢化社会の進展による手術数の増加も見込まれ、テルモにとってのビジネス環境は良好なものとなっている。 (巧みな事業拡大戦略) テルモは、1999年以降、以下に代表される買収で、急速にグローバルニッチ化を進めてきた。 1999年 米国3M社から人工心肺事業を譲受 2002年 人工血管の製造販売会社である英国バスクテック社 2006年 脳血管内治療デバイスの製造販売会社である米国マイクロベンション社 2011年 血液・細胞テクノロジー分野の世界的企業である米国カリディアンBCT社 2016年 シークエントメディカル(脳動脈瘤用塞栓デバイスの開発・製造・販売) 2017年セント・ジュード・メディカル(大腿動脈穿刺部止血デバイスの開発・製造・販売) これらを通じて、テルモの連結子会社は9割以上が海外法人となり、売上海外比率は70%に及び、その内訳としてアメリカがトップで、欧州の比率が高いなど事業エリアの分散化が程よく図られている。  (プロ経営者による統治)  佐藤慎次郎元社長そして鮫島光社長は、ともに東亜燃料工業出身で、米国流の経営が...